12日にお約束した通り、今日は、
旧少年法のあらましについてのご説明の最終回として、
第74条についてご説明します。
Ⅰ 旧法第74条は、以下のような規定でした。
「第七十四條 少年審判所ノ審判ニ付セラレタル事項又ハ少年ニ
對」(たい)スル「刑事事件ニ付豫審」(よしん)「又ハ公判ニ
付セラレタル事項ハ之ヲ新聞紙其ノ他ノ出版物ニ掲載スルコトヲ得ス
前項ノ規定ニ違反シタルトキハ新聞紙ニ在リテハ
編輯」(へんしゅう)「人及發行人、」(はっこうにん)
其ノ他ノ出版物ニ在リテハ著作者及發行者ヲ一年以下ノ禁錮又ハ
千圓以下ノ罰金ニ処ス」
1.第1項、つまり「少年審判所」から「得ス」までの部分の
「豫審」(予審)とは、「検察官の公訴提起を受けて、
予審判事が被告事件を公判に付すべきか否かを決定するために必要な事項を
取り調べる公判前の訴訟手続」のことです。「公判に付するに足りる嫌疑が
あるときは、予審判事は決定をもって、被告事件を公判に付する言渡しを
なすべきものとされて」いました。「この予審の制度は、
フランス法を継受した日本の治罪法(1880年公布)以来、
旧刑事訴訟法(1922年公布)に至るまで採用されていた」のですが、
「この手続は非公開で、被告人の尋問には弁護人の立会いを認めず、
また予審調書は公判期日において無条件で証拠能力を有するなど、
かなり糾問主義的制度であったので、
現行刑事訴訟法(1948年公布)は公判中心主義を強化し、
この制度を廃止し」たのです。https://kotobank.jp/word/%E4%BA%88%E5%AF%A9-65433
2.旧少年法が制定された1922年に比較的近い1926年の1円は、
「今でいう818円程度」であるとされています。
https://magazine.tr.mufg.jp/90326
だとすると、旧法第74条第2項の定める罰金の上限額である「千圓」
(千円)は、今でいう81万8千円に当たります。これはかなりの高額です。
しかも、旧法第74条が処罰するのは、少年審判所の審判または
刑事裁判所の予審又は公判に付された少年が誰であるかだけではなく、
そもそもその少年が、いつ、どこで、何を、どのように、
そしてなぜしたのかを新聞またはその他の出版物に掲載することでした。
これは厳しすぎます。
もっとも、これは、戦前の日本で国民は、
「法律の範囲内」においてでしか「著作印行(いんこう)…の自由」
を認められているに過ぎなかった(大日本帝国憲法第29条)ためでもあります。
https://www.aozora.gr.jp/cards/001528/files/825.html
Ⅱ これに対して、現行少年法には、旧法第74条にぴったり対応する
規定はありません。
なるほど現行法第61条には次のように規定されています。
「(記事等の掲載の禁止)
第六十一条 家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により
公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、
容ぼヽうヽ等によりその者が当該事件の本人であることを推知することが
できるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。」
しかし、現行法第61条によって「新聞紙その他の出版物に掲載」する
ことが禁止されているのは、あくまでも、「氏名、年齢、職業、住居、
容ぼヽうヽ等によりその者が当該事件の本人であることを推知することが
できるような記事又は写真」に過ぎず、その少年または元少年が、
いつ、どこで、何を、どのように、なぜ行ったかを記載することは、
含まれていません。
しかも、現行法第61条には、よくご覧になればお分かりの通り、
罰則はありません。これは「言論出版の自由(憲法21条)を尊重し、
報道機関の自主性に待つ趣旨である」(注1)のです。しかし、
現行法第61条に「反する報道が名誉毀損罪に該当し、不法行為として
損害賠償等を命じられることはもちろんある。その意味で、
本条は刑法230条の2の例外規定である」(注2)と理解されていることに
注意していただきたいものです。
Ⅲ 長くなりました。これで旧法第74条についてのご説明を終わらせて
いただきます。あわせて、旧少年法のあらましについてのご説明も
終わらせていただきます。私の説明が下手なため、かえってわかりづらく
なってしまったかもしれません。その場合には、心からお詫びします。
(注1)田宮裕=廣瀬健二編『注釈少年法(第3版)』(2009年、有斐閣)489頁。
(注2)平場安治『少年法(新版)』(有斐閣法律学全集44-Ⅱ、1987年)78頁。
旧少年法のあらましについてのご説明の最終回として、
第74条についてご説明します。
Ⅰ 旧法第74条は、以下のような規定でした。
「第七十四條 少年審判所ノ審判ニ付セラレタル事項又ハ少年ニ
對」(たい)スル「刑事事件ニ付豫審」(よしん)「又ハ公判ニ
付セラレタル事項ハ之ヲ新聞紙其ノ他ノ出版物ニ掲載スルコトヲ得ス
前項ノ規定ニ違反シタルトキハ新聞紙ニ在リテハ
編輯」(へんしゅう)「人及發行人、」(はっこうにん)
其ノ他ノ出版物ニ在リテハ著作者及發行者ヲ一年以下ノ禁錮又ハ
千圓以下ノ罰金ニ処ス」
1.第1項、つまり「少年審判所」から「得ス」までの部分の
「豫審」(予審)とは、「検察官の公訴提起を受けて、
予審判事が被告事件を公判に付すべきか否かを決定するために必要な事項を
取り調べる公判前の訴訟手続」のことです。「公判に付するに足りる嫌疑が
あるときは、予審判事は決定をもって、被告事件を公判に付する言渡しを
なすべきものとされて」いました。「この予審の制度は、
フランス法を継受した日本の治罪法(1880年公布)以来、
旧刑事訴訟法(1922年公布)に至るまで採用されていた」のですが、
「この手続は非公開で、被告人の尋問には弁護人の立会いを認めず、
また予審調書は公判期日において無条件で証拠能力を有するなど、
かなり糾問主義的制度であったので、
現行刑事訴訟法(1948年公布)は公判中心主義を強化し、
この制度を廃止し」たのです。https://kotobank.jp/word/%E4%BA%88%E5%AF%A9-65433
2.旧少年法が制定された1922年に比較的近い1926年の1円は、
「今でいう818円程度」であるとされています。
https://magazine.tr.mufg.jp/90326
だとすると、旧法第74条第2項の定める罰金の上限額である「千圓」
(千円)は、今でいう81万8千円に当たります。これはかなりの高額です。
しかも、旧法第74条が処罰するのは、少年審判所の審判または
刑事裁判所の予審又は公判に付された少年が誰であるかだけではなく、
そもそもその少年が、いつ、どこで、何を、どのように、
そしてなぜしたのかを新聞またはその他の出版物に掲載することでした。
これは厳しすぎます。
もっとも、これは、戦前の日本で国民は、
「法律の範囲内」においてでしか「著作印行(いんこう)…の自由」
を認められているに過ぎなかった(大日本帝国憲法第29条)ためでもあります。
https://www.aozora.gr.jp/cards/001528/files/825.html
Ⅱ これに対して、現行少年法には、旧法第74条にぴったり対応する
規定はありません。
なるほど現行法第61条には次のように規定されています。
「(記事等の掲載の禁止)
第六十一条 家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により
公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、
容ぼヽうヽ等によりその者が当該事件の本人であることを推知することが
できるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。」
しかし、現行法第61条によって「新聞紙その他の出版物に掲載」する
ことが禁止されているのは、あくまでも、「氏名、年齢、職業、住居、
容ぼヽうヽ等によりその者が当該事件の本人であることを推知することが
できるような記事又は写真」に過ぎず、その少年または元少年が、
いつ、どこで、何を、どのように、なぜ行ったかを記載することは、
含まれていません。
しかも、現行法第61条には、よくご覧になればお分かりの通り、
罰則はありません。これは「言論出版の自由(憲法21条)を尊重し、
報道機関の自主性に待つ趣旨である」(注1)のです。しかし、
現行法第61条に「反する報道が名誉毀損罪に該当し、不法行為として
損害賠償等を命じられることはもちろんある。その意味で、
本条は刑法230条の2の例外規定である」(注2)と理解されていることに
注意していただきたいものです。
Ⅲ 長くなりました。これで旧法第74条についてのご説明を終わらせて
いただきます。あわせて、旧少年法のあらましについてのご説明も
終わらせていただきます。私の説明が下手なため、かえってわかりづらく
なってしまったかもしれません。その場合には、心からお詫びします。
(注1)田宮裕=廣瀬健二編『注釈少年法(第3版)』(2009年、有斐閣)489頁。
(注2)平場安治『少年法(新版)』(有斐閣法律学全集44-Ⅱ、1987年)78頁。
一昨日のブログでお約束した通り、
今日は旧法第10条についてご説明します。
Ⅰ 旧法第10条は以下のような規定でした。
「第十條 少年ニシテ懲役又ハ禁錮ノ言渡」(いいわたし)「ヲ受ケタル者ハ
左」(さ)「ノ期間ヲ経過シタル後假出獄」(かりしゅつごく)「許ス
コトヲ得
一 無期刑ニ付」(つい)「テハ七年
二 第七條第一項ノ規定ニ依リ言渡シタル刑ニ付テハ三年
三 第八条第一項及」(および)「第二項ノ規定ニ依リ言渡シタル刑ニ付テハ
其ノ刑ノ短期ノ三分ノ一」
Ⅱ 「假出獄」、現代的表記では「仮出獄」とは、「懲役または禁固刑に
処せられた者が、刑執行中に改悛したと認められる場合、行政処分により、
刑期の終了前に一定の条件をつけて釈放すること」です。
Ⅲ 旧法第10条第2号、つまり「ニ 第七條」から「三年」までの部分の
「第七條第一項ノ規定ニ依リ言渡シタル刑」とは、
犯罪行為時16歳未満であった者に、死刑または無期刑をもって処断すべき
場合に、これらの刑に替えて言い渡すべき十年以上十五年以下の刑のことです。
ですから、例えば死刑をもって処断すべきであったのに、犯罪行為時
16歳未満であったことを理由に15年の懲役刑に処された者であっても、
3年経過すれば仮出獄が許可される可能性があったのです。
Ⅳ 旧法第10条第3号、つまり「三 第八条第一項」から
「三分ノ一」までの部分の、「第八条第一項及第二項ノ規定ニ依リ
言渡シタル刑」とは、相対的不定期刑のことです。
この相対的不定期刑で最も重いものは「5年以上10年以下の懲役」でした。
ですから、この刑に処された者は、旧法第10条第3号によって、
短期の5年の1/3、つまり1年8か月経過すれば仮出獄が許可される可能性が
あったのです。
Ⅴ 旧少年法が制定された1922年時点で既に、成人受刑者にも
仮出獄は認められていました。この「仮出獄」という用語は、
1995年に刑法が現代用語化された時に「仮釈放」に改められましたが、
要件は変わっていません。その要件とは、受刑者に改悛の状があり、
有期刑については刑期の3分の1、無期刑については10年を経過している
ことです(刑法第28条)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=140AC0000000045
ですから、旧少年法においては、特に無期刑に処された者に対する
仮出獄の要件を、成人と比べて大幅に緩和していました。
Ⅵ 現行少年法にも、仮釈放に関する特別な規定はあります。
それは以下のようなものです。
「(仮釈放)
第五十八条 少年のとき懲役又は禁錮の言渡しを受けた者については、
次の期間を経過した後、仮釈放をすることができる。
一 無期刑については七年
二 第五十一条第二項の規定により言い渡した有期の刑については、
その刑期の三分の一
三 第五十二条第一項又は同条第一項及び第二項の規定により言い渡した刑に
ついては、その刑の短期の三分の一
2 第五十一条第一項の規定により無期刑の言渡しを受けた者については、
前項第一号の規定は適用しない。」
1.無期刑については7年経過すれば仮釈放が可能になる点は、旧法と同じです。
2.現行法第58条第1項第2号、つまり「二」の部分の「第五十一条第二項の
規定により言い渡した有期の刑」とは、無期刑で処断すべき場合に
犯罪行為時18歳未満であったことを理由に言い渡される10年以上20年以下の
刑のことです。ですから、最長でも20年の1/3つまり6年8か月経過すれば
仮釈放が可能になります。
3. 「第五十二条第一項又は同条第一項及び第二項の規定により言い渡した刑」
とは相対的不定期刑のことです。現行少年法の下で最も重い相対的不定期刑は、
「10年以上15年以下の懲役」ですから、これに処された者は短期の10年の
1/3、つまり3年4か月経過すれば仮釈放が可能となります。
4.「第五十一条第一項の規定により無期刑の言渡しを受けた者」とは、
犯罪行為時18歳未満であったため、死刑をもって処断すべきなのに、
無期刑を言い渡された者という意味です。この場合には
少年法第58条第1項第1号の適用が排除され「刑法28年の原則通り10年が
仮釈放期間となる」のです。この点については次のような解説が
なされています。
「この場合には51条1項により既に刑の緩和がなされており、仮釈放期間の
特則をも適用するといわば二重に刑の緩和を認めることとなるが、
死刑相当事案は極めて凶悪重大な犯罪であるから、このような緩和を
認めることは、被害感情、社会一般の正義感情等に照らして相当でない
ことから、平成12年改正により改められたものである。」(注)
Ⅶ 長くなりました。これで旧法第10条についてのご説明を終わらせて
いただきます。それと同時に、旧法の定める少年に対する刑事処分の
特則についてのご説明を終わらせていただきます。次は、旧少年法の
あらましについてのご説明の最終回として、第74条について
ご説明したいのですが、明日・明後日と忙しいので、15日に
ご説明させていただきます。
(注)甲斐行夫=入江猛=飯島泰=加藤俊治=岡健太郎=岡田伸太=本田能久=
安永健次「少年法等の一部を改正する法律及び少年審判規則の一部を改正する
規則の解説」『法曹会新法解説叢書17』(2002年)233頁。
今日は旧法第10条についてご説明します。
Ⅰ 旧法第10条は以下のような規定でした。
「第十條 少年ニシテ懲役又ハ禁錮ノ言渡」(いいわたし)「ヲ受ケタル者ハ
左」(さ)「ノ期間ヲ経過シタル後假出獄」(かりしゅつごく)「許ス
コトヲ得
一 無期刑ニ付」(つい)「テハ七年
二 第七條第一項ノ規定ニ依リ言渡シタル刑ニ付テハ三年
三 第八条第一項及」(および)「第二項ノ規定ニ依リ言渡シタル刑ニ付テハ
其ノ刑ノ短期ノ三分ノ一」
Ⅱ 「假出獄」、現代的表記では「仮出獄」とは、「懲役または禁固刑に
処せられた者が、刑執行中に改悛したと認められる場合、行政処分により、
刑期の終了前に一定の条件をつけて釈放すること」です。
Ⅲ 旧法第10条第2号、つまり「ニ 第七條」から「三年」までの部分の
「第七條第一項ノ規定ニ依リ言渡シタル刑」とは、
犯罪行為時16歳未満であった者に、死刑または無期刑をもって処断すべき
場合に、これらの刑に替えて言い渡すべき十年以上十五年以下の刑のことです。
ですから、例えば死刑をもって処断すべきであったのに、犯罪行為時
16歳未満であったことを理由に15年の懲役刑に処された者であっても、
3年経過すれば仮出獄が許可される可能性があったのです。
Ⅳ 旧法第10条第3号、つまり「三 第八条第一項」から
「三分ノ一」までの部分の、「第八条第一項及第二項ノ規定ニ依リ
言渡シタル刑」とは、相対的不定期刑のことです。
この相対的不定期刑で最も重いものは「5年以上10年以下の懲役」でした。
ですから、この刑に処された者は、旧法第10条第3号によって、
短期の5年の1/3、つまり1年8か月経過すれば仮出獄が許可される可能性が
あったのです。
Ⅴ 旧少年法が制定された1922年時点で既に、成人受刑者にも
仮出獄は認められていました。この「仮出獄」という用語は、
1995年に刑法が現代用語化された時に「仮釈放」に改められましたが、
要件は変わっていません。その要件とは、受刑者に改悛の状があり、
有期刑については刑期の3分の1、無期刑については10年を経過している
ことです(刑法第28条)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=140AC0000000045
ですから、旧少年法においては、特に無期刑に処された者に対する
仮出獄の要件を、成人と比べて大幅に緩和していました。
Ⅵ 現行少年法にも、仮釈放に関する特別な規定はあります。
それは以下のようなものです。
「(仮釈放)
第五十八条 少年のとき懲役又は禁錮の言渡しを受けた者については、
次の期間を経過した後、仮釈放をすることができる。
一 無期刑については七年
二 第五十一条第二項の規定により言い渡した有期の刑については、
その刑期の三分の一
三 第五十二条第一項又は同条第一項及び第二項の規定により言い渡した刑に
ついては、その刑の短期の三分の一
2 第五十一条第一項の規定により無期刑の言渡しを受けた者については、
前項第一号の規定は適用しない。」
1.無期刑については7年経過すれば仮釈放が可能になる点は、旧法と同じです。
2.現行法第58条第1項第2号、つまり「二」の部分の「第五十一条第二項の
規定により言い渡した有期の刑」とは、無期刑で処断すべき場合に
犯罪行為時18歳未満であったことを理由に言い渡される10年以上20年以下の
刑のことです。ですから、最長でも20年の1/3つまり6年8か月経過すれば
仮釈放が可能になります。
3. 「第五十二条第一項又は同条第一項及び第二項の規定により言い渡した刑」
とは相対的不定期刑のことです。現行少年法の下で最も重い相対的不定期刑は、
「10年以上15年以下の懲役」ですから、これに処された者は短期の10年の
1/3、つまり3年4か月経過すれば仮釈放が可能となります。
4.「第五十一条第一項の規定により無期刑の言渡しを受けた者」とは、
犯罪行為時18歳未満であったため、死刑をもって処断すべきなのに、
無期刑を言い渡された者という意味です。この場合には
少年法第58条第1項第1号の適用が排除され「刑法28年の原則通り10年が
仮釈放期間となる」のです。この点については次のような解説が
なされています。
「この場合には51条1項により既に刑の緩和がなされており、仮釈放期間の
特則をも適用するといわば二重に刑の緩和を認めることとなるが、
死刑相当事案は極めて凶悪重大な犯罪であるから、このような緩和を
認めることは、被害感情、社会一般の正義感情等に照らして相当でない
ことから、平成12年改正により改められたものである。」(注)
Ⅶ 長くなりました。これで旧法第10条についてのご説明を終わらせて
いただきます。それと同時に、旧法の定める少年に対する刑事処分の
特則についてのご説明を終わらせていただきます。次は、旧少年法の
あらましについてのご説明の最終回として、第74条について
ご説明したいのですが、明日・明後日と忙しいので、15日に
ご説明させていただきます。
(注)甲斐行夫=入江猛=飯島泰=加藤俊治=岡健太郎=岡田伸太=本田能久=
安永健次「少年法等の一部を改正する法律及び少年審判規則の一部を改正する
規則の解説」『法曹会新法解説叢書17』(2002年)233頁。
昨日のブログでお約束した通り、
今日は旧法第9条についてご説明します。
Ⅰ 旧法第9条は以下のような規定でした。
「第九條 懲役又ハ禁錮ノ言渡シヲ受ケタル少年ニ對」(たい)「シテハ
特ニ設ケタル監獄又ハ監獄内ノ特ニ分界」(ぶんかい)「ヲ設ケタル
場所ニ於」(おい)「テ其ノ刑ヲ執行ス
本人十八歳ニ達シタル後ト雖」(いえど)「満二十三歳ニ至ル迄ハ
其ノ刑ヲ執行スルコトヲ得」
Ⅱ 旧法第9条に似た規定は、現行法第56条にも存在します。
これは以下のような規定です。
「(懲役又は禁錮の執行)
第五十六条 懲役又は禁錮の言渡しを受けた少年(第三項の規定により
少年院において刑の執行を受ける者を除く。)に対しては、特に設けた
刑事施設又は刑事施設若しくは留置施設内の特に分界を設けた場所において、
その刑を執行する。
2 本人が満二十歳に達した後でも、満二十六歳に達するまでは、
前項の規定による執行を継続することができる。
3 懲役又は禁錮の言渡しを受けた十六歳に満たない少年に対しては、
刑法第十二条第二項又は第十三条第二項の規定にかかわらず、
十六歳に達するまでの間、少年院において、その刑を執行することができる。
この場合において、その少年には、矯正教育を授ける。」
Ⅲ 旧法第9条第1項、つまり「懲役又ハ禁錮」から「執行ス」までの部分と、
現行法第56条第1項、つまり「懲役又は禁錮」から
「執行する」までの部分とでは、用語が現代化されている点と、
「監獄又ハ監獄内」が「刑事施設又は刑事施設若しくは留置施設内」
と改められている点を除いては、違いがありません。
この「特ニ設ケタル監獄」または「特に設けた刑事施設」は
「少年刑務所」と呼ばれています(法務省設置法第8条)。ただ、
「少年刑務所には、少年受刑者のほか26歳未満の青年受刑者をも
収容しており、少年受刑者は少ないため、大多数は青年受刑者と
なっている」のです(注1)。
なお、「分界」とは、「境目をつけて分けること。また、その境目。」
という意味です。
https://kotobank.jp/word/%E5%88%86%E7%95%8C-622972
Ⅳ 旧法第9条第2項、つまり「本人」から「執行スルコトヲ得」までの部分と、
現行法第56条第2項、つまり「本人」から「執行することができる」までの
部分とでも、現代用語化されている点と、「十八歳」が「満二十歳」と、
「二十三歳」が「二十六歳」とそれぞれ改められている点を除いては、
違いがありません。
そして、少年刑務所で成人受刑者に対する刑の執行を認めている理由
としては、次のことが指摘されています。
「少年刑務所は、20歳未満の少年を収容すべきことを原則としているが、
入所したときは少年でも収容中に20歳になる場合がある。この場合、少年が
20歳に達したからといって、直ちに普通の成人の刑務所に移すことは、
それまでなされた少年に対する特別の行刑の効果を損なう虞」(おそれ)
「があるので、本(現行法第56)条2項は、満26歳に達するまでは、本条
1項による執行を継続できるとしている。『26歳』は、」第三種少年院の
「収容の最高年齢が26歳とされている」(少年院法第4条第1項第3号)
「こととの対応を考えたものである」(注2)のです。
Ⅴ なお、現行法第56条第3項、つまり「3 懲役又は禁錮の言渡しを受けた
十六歳に満たない少年に対しては、
刑法第十二条第二項又は第十三条第二項の規定にかかわらず、
十六歳に達するまでの間、少年院において、その刑を執行することができる。
この場合において、その少年には、矯正教育を授ける。」という規定は、
旧法にはなかったもので、次のように解説されています。
「本条3項は、平成12年改正により、16歳未満(14・15歳)の少年に
ついても、検送が可能になり、懲役刑・禁錮刑が科され得るようになったが、
その年齢や心身の発達の度合いを考慮し、刑の執行にあたって教育的側面を
重視すべき場合が多いと考えられ、特に、義務教育年齢の者については
教科教育を重視しなければならないことから、このような年少少年
(刑の執行開始時に16歳未満であることを要する)に対する刑の執行の特例
として少年院における矯正教育を受けさせることを認めたものである。」(注3)
Ⅵ 長くなりました。これで旧法第9条についてのご説明を終わらせて
いただきます。次は旧法第10条についてのご説明をしたいのですが、
明日は忙しいので、明後日つまり12日にさせていただきます。
(注1)田宮裕=廣瀬健二編『注釈少年法(第3版)』(2009年、有斐閣)479頁。
(注2)田宮=廣瀬編・前掲(注1)。
(注3)甲斐行夫=入江猛=飯島泰=加藤俊治=岡健太郎=岡田伸太=本田能久=
安永健次「少年法等の一部を改正する法律及び少年審判規則の一部を改正する
規則の解説」『法曹会新法解説叢書17』(2002年)233頁。
今日は旧法第9条についてご説明します。
Ⅰ 旧法第9条は以下のような規定でした。
「第九條 懲役又ハ禁錮ノ言渡シヲ受ケタル少年ニ對」(たい)「シテハ
特ニ設ケタル監獄又ハ監獄内ノ特ニ分界」(ぶんかい)「ヲ設ケタル
場所ニ於」(おい)「テ其ノ刑ヲ執行ス
本人十八歳ニ達シタル後ト雖」(いえど)「満二十三歳ニ至ル迄ハ
其ノ刑ヲ執行スルコトヲ得」
Ⅱ 旧法第9条に似た規定は、現行法第56条にも存在します。
これは以下のような規定です。
「(懲役又は禁錮の執行)
第五十六条 懲役又は禁錮の言渡しを受けた少年(第三項の規定により
少年院において刑の執行を受ける者を除く。)に対しては、特に設けた
刑事施設又は刑事施設若しくは留置施設内の特に分界を設けた場所において、
その刑を執行する。
2 本人が満二十歳に達した後でも、満二十六歳に達するまでは、
前項の規定による執行を継続することができる。
3 懲役又は禁錮の言渡しを受けた十六歳に満たない少年に対しては、
刑法第十二条第二項又は第十三条第二項の規定にかかわらず、
十六歳に達するまでの間、少年院において、その刑を執行することができる。
この場合において、その少年には、矯正教育を授ける。」
Ⅲ 旧法第9条第1項、つまり「懲役又ハ禁錮」から「執行ス」までの部分と、
現行法第56条第1項、つまり「懲役又は禁錮」から
「執行する」までの部分とでは、用語が現代化されている点と、
「監獄又ハ監獄内」が「刑事施設又は刑事施設若しくは留置施設内」
と改められている点を除いては、違いがありません。
この「特ニ設ケタル監獄」または「特に設けた刑事施設」は
「少年刑務所」と呼ばれています(法務省設置法第8条)。ただ、
「少年刑務所には、少年受刑者のほか26歳未満の青年受刑者をも
収容しており、少年受刑者は少ないため、大多数は青年受刑者と
なっている」のです(注1)。
なお、「分界」とは、「境目をつけて分けること。また、その境目。」
という意味です。
https://kotobank.jp/word/%E5%88%86%E7%95%8C-622972
Ⅳ 旧法第9条第2項、つまり「本人」から「執行スルコトヲ得」までの部分と、
現行法第56条第2項、つまり「本人」から「執行することができる」までの
部分とでも、現代用語化されている点と、「十八歳」が「満二十歳」と、
「二十三歳」が「二十六歳」とそれぞれ改められている点を除いては、
違いがありません。
そして、少年刑務所で成人受刑者に対する刑の執行を認めている理由
としては、次のことが指摘されています。
「少年刑務所は、20歳未満の少年を収容すべきことを原則としているが、
入所したときは少年でも収容中に20歳になる場合がある。この場合、少年が
20歳に達したからといって、直ちに普通の成人の刑務所に移すことは、
それまでなされた少年に対する特別の行刑の効果を損なう虞」(おそれ)
「があるので、本(現行法第56)条2項は、満26歳に達するまでは、本条
1項による執行を継続できるとしている。『26歳』は、」第三種少年院の
「収容の最高年齢が26歳とされている」(少年院法第4条第1項第3号)
「こととの対応を考えたものである」(注2)のです。
Ⅴ なお、現行法第56条第3項、つまり「3 懲役又は禁錮の言渡しを受けた
十六歳に満たない少年に対しては、
刑法第十二条第二項又は第十三条第二項の規定にかかわらず、
十六歳に達するまでの間、少年院において、その刑を執行することができる。
この場合において、その少年には、矯正教育を授ける。」という規定は、
旧法にはなかったもので、次のように解説されています。
「本条3項は、平成12年改正により、16歳未満(14・15歳)の少年に
ついても、検送が可能になり、懲役刑・禁錮刑が科され得るようになったが、
その年齢や心身の発達の度合いを考慮し、刑の執行にあたって教育的側面を
重視すべき場合が多いと考えられ、特に、義務教育年齢の者については
教科教育を重視しなければならないことから、このような年少少年
(刑の執行開始時に16歳未満であることを要する)に対する刑の執行の特例
として少年院における矯正教育を受けさせることを認めたものである。」(注3)
Ⅵ 長くなりました。これで旧法第9条についてのご説明を終わらせて
いただきます。次は旧法第10条についてのご説明をしたいのですが、
明日は忙しいので、明後日つまり12日にさせていただきます。
(注1)田宮裕=廣瀬健二編『注釈少年法(第3版)』(2009年、有斐閣)479頁。
(注2)田宮=廣瀬編・前掲(注1)。
(注3)甲斐行夫=入江猛=飯島泰=加藤俊治=岡健太郎=岡田伸太=本田能久=
安永健次「少年法等の一部を改正する法律及び少年審判規則の一部を改正する
規則の解説」『法曹会新法解説叢書17』(2002年)233頁。
昨日のブログでお約束した通り、
今日は旧法第8条についてご説明します。
Ⅰ 第1に、旧法第8条は以下のような規定でした。
「第八條 少年ニ對」(たい)「シ長期三年以上ノ有期ノ懲役又ハ禁錮ヲ
以」(もっ)「テ處斷」(しょだん)「スヘキトキハ其ノ刑ノ
範圍」(はんい)「内ニ於」(おい)「テ短期ト長期トヲ定メテ
之」(これ)「ヲ言渡スヘシ但シ短期五年ヲ超ユル刑ヲ以テ
處斷スヘキトキハ短期ヲ五年ニ短縮ス
前項ノ規定ニ依リ言渡スヘキ刑ノ短期ハ五年長期ハ十年ヲ
超ユルコトヲ得ス
刑ノ執行猶豫」(ゆうよ)「ノ言渡ヲ爲」(な)「スヘキトキハ
前二項ノ規定ヲ適用セス」
Ⅱ 第2に、旧法第8条第1項本文、つまり「少年ニ」から
「言渡スヘシ」の部分についてご説明します。
まず、「少年ニ對シ長期三年以上ノ有期ノ懲役又ハ禁錮ヲ以テ
處斷スヘキトキハ」とは、法定刑に対して再犯加重、法律上の減軽、
併合罪加重、酌量減軽をほどこした結果、一番重い刑が3年以上の
有期の懲役または禁錮になったという意味です。例えば、
傷害致死罪の法定刑は「3年以上の有期懲役」(刑法第205条)で、
累犯加重または併合罪加重のない場合には
最長で20年(刑法第12条第1項)ですから、傷害致死罪は
「少年ニ對シ長期三年以上ノ有期ノ懲役又ハ禁錮ヲ以テ
處斷スヘキトキ」に当たります。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=140AC0000000045
次に、「其ノ刑ノ範圍内ニ於テ短期ト長期トヲ定メテ
之ヲ言渡スヘシ」とは、その罪に対して定められた刑の範囲内で
短期と長期を言い渡すべし、という意味で、
例えば「被告人をX年以上Y年以上の懲役に処す」という判決を
言い渡すべしということです。この制度は「相対的不定期刑」と呼ばれます。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%B8%E5%AF%BE%E7%9A%84%E4%B8%8D%E5%AE%9A%E6%9C%9F%E5%88%91
Ⅲ 第3に、旧法第8条第1項但し書き、つまり「但シ」から
「短縮ス」の部分は、法定刑に対して再犯加重、法律上の減軽、
併合罪加重、酌量減軽をほどこした結果、一番軽い刑が5年を超えた場合、
それを5年に短縮しなければならないという意味です。例えば、
強盗致傷罪の法定刑は「無期又は6年以上の懲役」(刑法第240条)ですから、
自首による減軽または酌量減軽がない場合、「短期五年ヲ超ユル刑ヲ以テ
處斷スヘキトキ」に当たります。ですから、例えばある少年が強盗致傷罪で
有罪を認定された場合、「被告人を5年以上10年以下の懲役に処する」
という判決を言い渡される可能性がありました。
Ⅳ 第4に、旧法第8条第2項、つまり「前項ノ規定」から
「得ス」の部分は、「少年に対して言い渡すことができる不定期刑で
最も重いのは、『被告人を5年以上10年以下の懲役に処す』という判決である」
という意味です。
Ⅴ 第5に、旧法第8条第三項、つまり「刑ノ執行猶豫」から
「適用セス」の部分は、「刑の執行猶予をすべきときは、
不定期刑の規定は適用してはならない」、つまり刑の執行猶予をすべきときは、
例えば「被告人を懲役3年に処す。なお、本判決確定の日から
5年間その刑の執行を猶予する」というように定期刑で言い渡さなければ
ならない、という意味です。
Ⅵ 第6に、現行法もその第52条に不定期刑の規定を置いています。
それは以下のように複雑なものです。
「(不定期刑)
第五十二条 少年に対して有期の懲役又は禁錮をもつて処断すべきときは、
処断すべき刑の範囲内において、長期を定めるとともに、長期の二分の一
(長期が十年を下回るときは、長期から五年を減じた期間。次項において
同じ。)を下回らない範囲内において短期を定めて、これを言い渡す。
この場合において、長期は十五年、短期は十年を超えることはできない。
2 前項の短期については、同項の規定にかかわらず、
少年の改善更生の可能性その他の事情を考慮し特に必要があるときは、
処断すべき刑の短期の二分の一を下回らず、かつ、長期の二分の一を
下回らない範囲内において、これを定めることができる。
この場合においては、刑法第十四条第二項の規定を準用する。
3 刑の執行猶予の言渡をする場合には、前二項の規定は、
これを適用しない。」
このため、現行法において少年に対して言い渡すことのできる
最も重い不定期刑は「被告人を10年以上15年以下の懲役に処する」
というものです。
また、現行法第52条第3項、つまり「3 刑の執行猶予」から
「適用しない。」までの部分をご覧になればお分かりの通り、
現行法の下でも執行猶予を言い渡す場合には不定期刑は適用できず、
定期刑で言い渡さなけばなりません。しかし、このような制度については、
以下のような意見もあります。
「本条(第52条のことです)3項は、不定期刑は行刑上の効果に狙いがある
ところから、執行猶予の場合に不定期刑を言渡すことは意味がないと
考えたものと思われる、しかし、執行猶予が取消された場合には、
定期刑が執行されることになり、不定期刑の利点を受ける余地がない。
立法論としては、執行猶予が取消された場合には、この程度の
不定期刑を受けると警告を与える意味から、不定期刑を言い渡して
執行猶予に付するという方法もあり得るであろう。」(注)
Ⅶ 長くなりました。これで旧法第8条についてのご説明を終わらせて
いただきます。明日は、旧法第9条についてのご説明をします。
(注)田宮裕=廣瀬健二編『注釈少年法(第3版)』(2009年、有斐閣)469頁。
今日は旧法第8条についてご説明します。
Ⅰ 第1に、旧法第8条は以下のような規定でした。
「第八條 少年ニ對」(たい)「シ長期三年以上ノ有期ノ懲役又ハ禁錮ヲ
以」(もっ)「テ處斷」(しょだん)「スヘキトキハ其ノ刑ノ
範圍」(はんい)「内ニ於」(おい)「テ短期ト長期トヲ定メテ
之」(これ)「ヲ言渡スヘシ但シ短期五年ヲ超ユル刑ヲ以テ
處斷スヘキトキハ短期ヲ五年ニ短縮ス
前項ノ規定ニ依リ言渡スヘキ刑ノ短期ハ五年長期ハ十年ヲ
超ユルコトヲ得ス
刑ノ執行猶豫」(ゆうよ)「ノ言渡ヲ爲」(な)「スヘキトキハ
前二項ノ規定ヲ適用セス」
Ⅱ 第2に、旧法第8条第1項本文、つまり「少年ニ」から
「言渡スヘシ」の部分についてご説明します。
まず、「少年ニ對シ長期三年以上ノ有期ノ懲役又ハ禁錮ヲ以テ
處斷スヘキトキハ」とは、法定刑に対して再犯加重、法律上の減軽、
併合罪加重、酌量減軽をほどこした結果、一番重い刑が3年以上の
有期の懲役または禁錮になったという意味です。例えば、
傷害致死罪の法定刑は「3年以上の有期懲役」(刑法第205条)で、
累犯加重または併合罪加重のない場合には
最長で20年(刑法第12条第1項)ですから、傷害致死罪は
「少年ニ對シ長期三年以上ノ有期ノ懲役又ハ禁錮ヲ以テ
處斷スヘキトキ」に当たります。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=140AC0000000045
次に、「其ノ刑ノ範圍内ニ於テ短期ト長期トヲ定メテ
之ヲ言渡スヘシ」とは、その罪に対して定められた刑の範囲内で
短期と長期を言い渡すべし、という意味で、
例えば「被告人をX年以上Y年以上の懲役に処す」という判決を
言い渡すべしということです。この制度は「相対的不定期刑」と呼ばれます。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%B8%E5%AF%BE%E7%9A%84%E4%B8%8D%E5%AE%9A%E6%9C%9F%E5%88%91
Ⅲ 第3に、旧法第8条第1項但し書き、つまり「但シ」から
「短縮ス」の部分は、法定刑に対して再犯加重、法律上の減軽、
併合罪加重、酌量減軽をほどこした結果、一番軽い刑が5年を超えた場合、
それを5年に短縮しなければならないという意味です。例えば、
強盗致傷罪の法定刑は「無期又は6年以上の懲役」(刑法第240条)ですから、
自首による減軽または酌量減軽がない場合、「短期五年ヲ超ユル刑ヲ以テ
處斷スヘキトキ」に当たります。ですから、例えばある少年が強盗致傷罪で
有罪を認定された場合、「被告人を5年以上10年以下の懲役に処する」
という判決を言い渡される可能性がありました。
Ⅳ 第4に、旧法第8条第2項、つまり「前項ノ規定」から
「得ス」の部分は、「少年に対して言い渡すことができる不定期刑で
最も重いのは、『被告人を5年以上10年以下の懲役に処す』という判決である」
という意味です。
Ⅴ 第5に、旧法第8条第三項、つまり「刑ノ執行猶豫」から
「適用セス」の部分は、「刑の執行猶予をすべきときは、
不定期刑の規定は適用してはならない」、つまり刑の執行猶予をすべきときは、
例えば「被告人を懲役3年に処す。なお、本判決確定の日から
5年間その刑の執行を猶予する」というように定期刑で言い渡さなければ
ならない、という意味です。
Ⅵ 第6に、現行法もその第52条に不定期刑の規定を置いています。
それは以下のように複雑なものです。
「(不定期刑)
第五十二条 少年に対して有期の懲役又は禁錮をもつて処断すべきときは、
処断すべき刑の範囲内において、長期を定めるとともに、長期の二分の一
(長期が十年を下回るときは、長期から五年を減じた期間。次項において
同じ。)を下回らない範囲内において短期を定めて、これを言い渡す。
この場合において、長期は十五年、短期は十年を超えることはできない。
2 前項の短期については、同項の規定にかかわらず、
少年の改善更生の可能性その他の事情を考慮し特に必要があるときは、
処断すべき刑の短期の二分の一を下回らず、かつ、長期の二分の一を
下回らない範囲内において、これを定めることができる。
この場合においては、刑法第十四条第二項の規定を準用する。
3 刑の執行猶予の言渡をする場合には、前二項の規定は、
これを適用しない。」
このため、現行法において少年に対して言い渡すことのできる
最も重い不定期刑は「被告人を10年以上15年以下の懲役に処する」
というものです。
また、現行法第52条第3項、つまり「3 刑の執行猶予」から
「適用しない。」までの部分をご覧になればお分かりの通り、
現行法の下でも執行猶予を言い渡す場合には不定期刑は適用できず、
定期刑で言い渡さなけばなりません。しかし、このような制度については、
以下のような意見もあります。
「本条(第52条のことです)3項は、不定期刑は行刑上の効果に狙いがある
ところから、執行猶予の場合に不定期刑を言渡すことは意味がないと
考えたものと思われる、しかし、執行猶予が取消された場合には、
定期刑が執行されることになり、不定期刑の利点を受ける余地がない。
立法論としては、執行猶予が取消された場合には、この程度の
不定期刑を受けると警告を与える意味から、不定期刑を言い渡して
執行猶予に付するという方法もあり得るであろう。」(注)
Ⅶ 長くなりました。これで旧法第8条についてのご説明を終わらせて
いただきます。明日は、旧法第9条についてのご説明をします。
(注)田宮裕=廣瀬健二編『注釈少年法(第3版)』(2009年、有斐閣)469頁。
昨日のブログでお約束した通り、
今日からは旧少年法の定める少年に対する刑事処分の特則のあらましについて
こ解説します。
今日は、旧法第7条についてご解説します。
Ⅰ 第1に、旧法第7条は以下のような規定でした。
「第七條 罪ヲ犯ス時十六歳ニ満タサル者ニハ死刑及無期刑ヲ科セス
死刑又ハ無期刑ヲ以」(もっ)「テ處斷」(しょだん)「スヘキトキハ
十年以上十五年以下ニ於」(おい)「テ懲役又ハ禁錮ヲ科ス
刑法第七十三條、第七十五條又ハ第二百條ノ罪ヲ犯シタル者ニハ
前項ノ規定ヲ適用セス」
Ⅱ 第2に、旧法第7条第1項、つまり「罪ヲ犯ス時」から「科セス」の部分は、
犯罪行為時16歳未満の者に対する死刑と無期刑を禁止したものです。
これに対して現行法の第51条は、以下の通り第1項において
犯罪行為時18歳未満の者に対する死刑を禁止しているものの、
無期刑は認めていますし、無期刑で処断すべき者に対して
10年以上20年以下の有期の懲役または禁錮を科すことを認めていますが、
これは裏を返すと、無期刑を科すことも認めています。
「第五十一条 罪を犯すとき十八歳に満たない者に対しては、
死刑をもつて処断すべきときは、無期刑を科する。
2 罪を犯すとき十八歳に満たない者に対しては、
無期刑をもつて処断すべきときであつても、
有期の懲役又は禁錮を科することができる。この場合において、その刑は、
十年以上二十年以下において言い渡す。」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
(なお、「処断刑」とは、刑罰法規に定められている刑である法定刑
-例えば殺人罪なら死刑または無期もしくは5年以上の懲役-に対して
再犯加重、法律上の減軽、併合罪加重、酌量減軽をほどこした結果
得られたものです。)
https://info.yoneyamatalk.biz/%e5%88%91%e6%b3%95/%e6%b3%95%e5%ae%9a%e5%88%91%e3%83%bb%e5%87%a6%e6%96%ad%e5%88%91%e3%83%bb%e5%ae%a3%e5%91%8a%e5%88%91%e3%81%a8%e3%81%af%ef%bc%9f%e3%82%8f%e3%81%8b%e3%82%8a%e3%82%84%e3%81%99%e3%81%8f%e8%a7%a3%e8%aa%ac/
話がそれましたが、旧法では犯罪行為時16歳以上なら
死刑判決が言い渡せたのに対して、現行法では18歳以上でないと
死刑判決が言い渡せないのです。
これだけを見ると、「旧法の方が正しい」と思われる方も
少なくないでしょう。
しかし、日本国も批准つまり国内法化している
国連「児童の権利に関する条約」第37条では、
以下のように規定されています。
「第37条
締約国は、次のことを確保する。
(a) いかなる児童も、拷問又は他の残虐な、非人道的な若しくは品位を
傷つける取扱い若しくは刑罰を受けないこと。死刑又は釈放の可能性がない
終身刑は、十八歳未満の者が行った犯罪について科さないこと。」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jido/zenbun.html
ですから、日本が再び犯罪行為時18歳未満の者に対して死刑を科したい
のであれば、「児童の権利に関する条約」の批准を撤回しなければ
なりません。しかし、そんなことをすれば、特にEU加盟国から
強い非難を浴びて、ひょっとしたら日本製品を輸入してくれなくなるかも
しれません。それでいいのでしょうか。
それに、16歳以上18歳未満の者による凶悪犯罪は、
現行少年法第51条にもかかわらず、本当にまれです。
ですから、死刑適用年齢を18歳未満に引き下げる必要もありません。
Ⅲ 第3に、話を旧法第7条第2項に戻しますと、これは以下のような規定です。
「死刑又ハ無期刑ヲ以」(もっ)「テ處斷」(しょだん)「スヘキトキハ
十年以上十五年以下ニ於」(おい)「テ懲役又ハ禁錮ヲ科ス」
ここでの「處斷」とは「処断」のことです。ですから、
旧法第7条第2項は、[法定刑に再犯加重、法律上の減軽、併合罪加重、
酌量減軽をほどこしても死刑または無期刑になる場合には、
10年以上15年以下において懲役または禁錮を必ず科さなければならない」
という意味の規定です。
ですから、Ⅰで述べたように、現行法では犯罪行為時18歳未満の
者に対する無期刑を認めているのですから、この点において
現行法の方が旧法よりも厳しいのです。
Ⅳ 第4に、話題を旧法第7条第3項に移しますと、
これは以下のような規定でした。
「刑法第七十三條、第七十五條又ハ第二百條ノ罪ヲ犯シタル者ニハ
前項ノ規定ヲ適用セス」
「第七十三條、第七十五條又ハ第二百條」という刑法の規定が
出てきましたので、それぞれご解説します。
1.刑法第73条は「天皇、太皇太后、皇太后、皇后、皇太子又ハ皇太孫ニ対シ
危害ヲ加ヘ又ハ加ヘントシタル者ハ死刑ニ処ス」という規定でした。この
規定は「大逆罪」(たいぎゃくざい)と呼ばれています。
https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%88%91%E6%B3%95%E7%AC%AC73%E6%9D%A1
ただ、「大逆罪」が適用されたのはわずか4件でしてその中に
少年事件は含まれていません。
そして、「大逆罪」は国民主権の理念に反するとして、
1947年に削除されています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E9%80%86%E7%BD%AA
2. 刑法第75条は「皇族ニ對シ危害ヲ加ヘタル者ハ死刑ニ處シ
危害ヲ加ヘントシタル者ハ無期懲役ニ處ス」という規定でした。
この規定は「皇族危害罪」と呼ばれていますが、「大逆罪」と同様、
1947年に削除されています。
https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%88%91%E6%B3%95%E7%AC%AC75%E6%9D%A1
3.刑法第200条は「自己又ハ配偶者ノ直系尊属ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ
無期懲役ニニ處ス」という規定でした。この規定は「尊属殺」と
呼ばれていますが、1973年4月4日に最高裁大法廷は、
憲法14条(法の下の平等)に反し無効としました。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8A%E5%B1%9E%E6%AE%BA%E9%87%8D%E7%BD%B0%E8%A6%8F%E5%AE%9A%E9%81%95%E6%86%B2%E5%88%A4%E6%B1%BA
その後刑法第200条は事実上死文化していたのですが、1995年に
刑法が口語化・現代用語化された際に削除されました。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8A%E5%B1%9E%E6%AE%BA
4.このように1~3を見ると、旧少年法第7条は、「大逆罪」、
「皇族危害罪」、及び「尊属殺」を犯した者には死刑又は無期懲役の判決が
下される道を開いていました。これは、戦前の日本においては、
天皇が神聖不可侵の存在とされていたことと、親孝行が重要な道徳と
されていことのためでしょう。
しかし、現在の日本は国民主権を建前としていますから、
天皇または皇族に危害を加えたり加えようとする行為を特別扱いすることは
許されないでしょう。また、法の下の平等の理念に照らして、
尊属殺を重く処罰することも許されません。ですから、
旧少年法第7条のような規定を現行法に設けることも、
許されないと考えます。
Ⅴ 長くなりました。以上で旧法第7条についてのご解説を終わらせて
いただきます。明日は旧法第8条についてご解説します。
今日からは旧少年法の定める少年に対する刑事処分の特則のあらましについて
こ解説します。
今日は、旧法第7条についてご解説します。
Ⅰ 第1に、旧法第7条は以下のような規定でした。
「第七條 罪ヲ犯ス時十六歳ニ満タサル者ニハ死刑及無期刑ヲ科セス
死刑又ハ無期刑ヲ以」(もっ)「テ處斷」(しょだん)「スヘキトキハ
十年以上十五年以下ニ於」(おい)「テ懲役又ハ禁錮ヲ科ス
刑法第七十三條、第七十五條又ハ第二百條ノ罪ヲ犯シタル者ニハ
前項ノ規定ヲ適用セス」
Ⅱ 第2に、旧法第7条第1項、つまり「罪ヲ犯ス時」から「科セス」の部分は、
犯罪行為時16歳未満の者に対する死刑と無期刑を禁止したものです。
これに対して現行法の第51条は、以下の通り第1項において
犯罪行為時18歳未満の者に対する死刑を禁止しているものの、
無期刑は認めていますし、無期刑で処断すべき者に対して
10年以上20年以下の有期の懲役または禁錮を科すことを認めていますが、
これは裏を返すと、無期刑を科すことも認めています。
「第五十一条 罪を犯すとき十八歳に満たない者に対しては、
死刑をもつて処断すべきときは、無期刑を科する。
2 罪を犯すとき十八歳に満たない者に対しては、
無期刑をもつて処断すべきときであつても、
有期の懲役又は禁錮を科することができる。この場合において、その刑は、
十年以上二十年以下において言い渡す。」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
(なお、「処断刑」とは、刑罰法規に定められている刑である法定刑
-例えば殺人罪なら死刑または無期もしくは5年以上の懲役-に対して
再犯加重、法律上の減軽、併合罪加重、酌量減軽をほどこした結果
得られたものです。)
https://info.yoneyamatalk.biz/%e5%88%91%e6%b3%95/%e6%b3%95%e5%ae%9a%e5%88%91%e3%83%bb%e5%87%a6%e6%96%ad%e5%88%91%e3%83%bb%e5%ae%a3%e5%91%8a%e5%88%91%e3%81%a8%e3%81%af%ef%bc%9f%e3%82%8f%e3%81%8b%e3%82%8a%e3%82%84%e3%81%99%e3%81%8f%e8%a7%a3%e8%aa%ac/
話がそれましたが、旧法では犯罪行為時16歳以上なら
死刑判決が言い渡せたのに対して、現行法では18歳以上でないと
死刑判決が言い渡せないのです。
これだけを見ると、「旧法の方が正しい」と思われる方も
少なくないでしょう。
しかし、日本国も批准つまり国内法化している
国連「児童の権利に関する条約」第37条では、
以下のように規定されています。
「第37条
締約国は、次のことを確保する。
(a) いかなる児童も、拷問又は他の残虐な、非人道的な若しくは品位を
傷つける取扱い若しくは刑罰を受けないこと。死刑又は釈放の可能性がない
終身刑は、十八歳未満の者が行った犯罪について科さないこと。」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jido/zenbun.html
ですから、日本が再び犯罪行為時18歳未満の者に対して死刑を科したい
のであれば、「児童の権利に関する条約」の批准を撤回しなければ
なりません。しかし、そんなことをすれば、特にEU加盟国から
強い非難を浴びて、ひょっとしたら日本製品を輸入してくれなくなるかも
しれません。それでいいのでしょうか。
それに、16歳以上18歳未満の者による凶悪犯罪は、
現行少年法第51条にもかかわらず、本当にまれです。
ですから、死刑適用年齢を18歳未満に引き下げる必要もありません。
Ⅲ 第3に、話を旧法第7条第2項に戻しますと、これは以下のような規定です。
「死刑又ハ無期刑ヲ以」(もっ)「テ處斷」(しょだん)「スヘキトキハ
十年以上十五年以下ニ於」(おい)「テ懲役又ハ禁錮ヲ科ス」
ここでの「處斷」とは「処断」のことです。ですから、
旧法第7条第2項は、[法定刑に再犯加重、法律上の減軽、併合罪加重、
酌量減軽をほどこしても死刑または無期刑になる場合には、
10年以上15年以下において懲役または禁錮を必ず科さなければならない」
という意味の規定です。
ですから、Ⅰで述べたように、現行法では犯罪行為時18歳未満の
者に対する無期刑を認めているのですから、この点において
現行法の方が旧法よりも厳しいのです。
Ⅳ 第4に、話題を旧法第7条第3項に移しますと、
これは以下のような規定でした。
「刑法第七十三條、第七十五條又ハ第二百條ノ罪ヲ犯シタル者ニハ
前項ノ規定ヲ適用セス」
「第七十三條、第七十五條又ハ第二百條」という刑法の規定が
出てきましたので、それぞれご解説します。
1.刑法第73条は「天皇、太皇太后、皇太后、皇后、皇太子又ハ皇太孫ニ対シ
危害ヲ加ヘ又ハ加ヘントシタル者ハ死刑ニ処ス」という規定でした。この
規定は「大逆罪」(たいぎゃくざい)と呼ばれています。
https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%88%91%E6%B3%95%E7%AC%AC73%E6%9D%A1
ただ、「大逆罪」が適用されたのはわずか4件でしてその中に
少年事件は含まれていません。
そして、「大逆罪」は国民主権の理念に反するとして、
1947年に削除されています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E9%80%86%E7%BD%AA
2. 刑法第75条は「皇族ニ對シ危害ヲ加ヘタル者ハ死刑ニ處シ
危害ヲ加ヘントシタル者ハ無期懲役ニ處ス」という規定でした。
この規定は「皇族危害罪」と呼ばれていますが、「大逆罪」と同様、
1947年に削除されています。
https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%88%91%E6%B3%95%E7%AC%AC75%E6%9D%A1
3.刑法第200条は「自己又ハ配偶者ノ直系尊属ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ
無期懲役ニニ處ス」という規定でした。この規定は「尊属殺」と
呼ばれていますが、1973年4月4日に最高裁大法廷は、
憲法14条(法の下の平等)に反し無効としました。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8A%E5%B1%9E%E6%AE%BA%E9%87%8D%E7%BD%B0%E8%A6%8F%E5%AE%9A%E9%81%95%E6%86%B2%E5%88%A4%E6%B1%BA
その後刑法第200条は事実上死文化していたのですが、1995年に
刑法が口語化・現代用語化された際に削除されました。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8A%E5%B1%9E%E6%AE%BA
4.このように1~3を見ると、旧少年法第7条は、「大逆罪」、
「皇族危害罪」、及び「尊属殺」を犯した者には死刑又は無期懲役の判決が
下される道を開いていました。これは、戦前の日本においては、
天皇が神聖不可侵の存在とされていたことと、親孝行が重要な道徳と
されていことのためでしょう。
しかし、現在の日本は国民主権を建前としていますから、
天皇または皇族に危害を加えたり加えようとする行為を特別扱いすることは
許されないでしょう。また、法の下の平等の理念に照らして、
尊属殺を重く処罰することも許されません。ですから、
旧少年法第7条のような規定を現行法に設けることも、
許されないと考えます。
Ⅴ 長くなりました。以上で旧法第7条についてのご解説を終わらせて
いただきます。明日は旧法第8条についてご解説します。
昨日のブログでお約束した通り、
今日は旧法の第68条と第69条についてご解説します。
そして、第70条についてもご解説します。
Ⅰ 第1に、旧法の第68条は以下のような規定でした。
「第六十八條 少年ノ被告人ハ他ノ被告人ト分離シ其」(そ)「ノ
接觸」(せっしょく)「ヲ避ケシムルヘシ」
これと似た規定は、現行法第49条第1項にあります。それによりますと、
「少年の被疑者又は被告人は、他の被疑者又は被告人と分離して、なるべく、
その接触を避けなければならない。」と規定されています。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
旧法と違い、現行法は被疑者も含んでいますが、
「なるべく」という文言もあります。
Ⅱ 第2に、旧法の第69条は以下のような規定でした。
「第六十九條 少年ニ對」(たい)「スル被告事件ハ他ノ被告事件ト
牽連」(けんれん)「スル場合ト雖」(いえども)「審理ニ妨」(さまたげ)「ナキ
限リ其ノ手續」(てつづき)「ヲ分離スヘシ」
ここでの「牽連」とは「つながりつづくこと。また、ある関係によって
つながること。」という意味です。
https://kotobank.jp/word/%E7%89%BD%E9%80%A3-493322
そして、旧法第69条と似た規定として、現行法第49条第2項があります。
それによりますと、「少年に対する被告事件は、
他の被告事件と関連する場合にも、審理に妨げない限り、
その手続を分離しなければならない。」と規定されています。
Ⅲ 第3に、旧法第70条は以下のような規定です。
「第七十條 裁判所ハ事情ニ依リ公判中一時少年ノ被告人ヲ退廷セシムル
コトヲ得」
しかし、旧法第70条に対応する規定は現行法には存在しません。
Ⅳ 以上で、旧法の定める少年に対する刑事手続の特則のあらましに
ついてのご説明を終わらせていただきます。そして、旧法には、
少年に対する刑事処分の特則もいくつかあるのですが、
これらについてのご解説は、明日から始めさせていただきます。
今日は旧法の第68条と第69条についてご解説します。
そして、第70条についてもご解説します。
Ⅰ 第1に、旧法の第68条は以下のような規定でした。
「第六十八條 少年ノ被告人ハ他ノ被告人ト分離シ其」(そ)「ノ
接觸」(せっしょく)「ヲ避ケシムルヘシ」
これと似た規定は、現行法第49条第1項にあります。それによりますと、
「少年の被疑者又は被告人は、他の被疑者又は被告人と分離して、なるべく、
その接触を避けなければならない。」と規定されています。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
旧法と違い、現行法は被疑者も含んでいますが、
「なるべく」という文言もあります。
Ⅱ 第2に、旧法の第69条は以下のような規定でした。
「第六十九條 少年ニ對」(たい)「スル被告事件ハ他ノ被告事件ト
牽連」(けんれん)「スル場合ト雖」(いえども)「審理ニ妨」(さまたげ)「ナキ
限リ其ノ手續」(てつづき)「ヲ分離スヘシ」
ここでの「牽連」とは「つながりつづくこと。また、ある関係によって
つながること。」という意味です。
https://kotobank.jp/word/%E7%89%BD%E9%80%A3-493322
そして、旧法第69条と似た規定として、現行法第49条第2項があります。
それによりますと、「少年に対する被告事件は、
他の被告事件と関連する場合にも、審理に妨げない限り、
その手続を分離しなければならない。」と規定されています。
Ⅲ 第3に、旧法第70条は以下のような規定です。
「第七十條 裁判所ハ事情ニ依リ公判中一時少年ノ被告人ヲ退廷セシムル
コトヲ得」
しかし、旧法第70条に対応する規定は現行法には存在しません。
Ⅳ 以上で、旧法の定める少年に対する刑事手続の特則のあらましに
ついてのご説明を終わらせていただきます。そして、旧法には、
少年に対する刑事処分の特則もいくつかあるのですが、
これらについてのご解説は、明日から始めさせていただきます。
昨日のブログでお約束した通り、
今日は旧法第67条についてご説明します。
(なお、昨日は「そしてできれば、
第68条や第69条についてもご説明したいです。」とも書きましたが、
説明をできるだけ分かりやすくするために、
これらの条文についてのご説明は明日にさせていただきます。)
Ⅰ 旧法第67条は以下のような規定でした。
「第六十七条 勾留状ハ已」(や)「ムコトヲ得サル場合ニ
非」(あら)「サレバ少年ニ對」(たい)シテ之ヲ發」(はっ)「スル
コトヲ得ス
拘置監ニ於」(おい)「テハ特別ノ事由アル場合ヲ除クノ外少年ヲ
獨居」(どっきょ)「セシムヘシ」
Ⅱ 旧法第67条第1項、つまり「勾留状」から「得ス」までの部分の
「勾留状」とは、逮捕されて刑事裁判所に起訴されるまでの被疑者と
起訴された後の被告人の身柄を拘束する「勾留」という手続を取ることを
許可する裁判所の令状のことです。
https://keiji.vbest.jp/columns/g_other/5796/
そして、旧法第67条第1項とそっくりな規定は、現行法第48条第1項にも
存在します。それによりますと、「第四十八条 勾留状は、
やむを得ない場合でなければ、少年に対して、
これを発することはできない。」と規定されています。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000050
Ⅱ 旧法第67条第2項、つまり「拘置監」から「セシムヘシ」までの部分の
「拘置監」とは、「旧監獄法で規定されていた監獄の種類の一つで、
刑事被告人や死刑の言い渡しを受けた者を拘禁する場所」です。
現在では「拘置所」と呼ばれています。
https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E6%8B%98%E7%BD%AE%E7%9B%A3/
また「獨居」とは、囚人を一人だけ入れておく部屋に入れることです。
https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E7%8B%AC%E5%B1%85%E6%88%BF/#jn-159291
つまり、旧法第67条第2項は、「拘置監においては特別の事由ある
場合を除いては少年を独居させなければならない」という意味です。
現行法には、旧法第67条第2項にぴったり対応する規定はありません。
ただ、第49条第3項に「刑事施設、留置施設及び
海上保安留置施設においては、少年(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に
関する法律(平成十七年法律第五十号)第二条第四号の受刑者(同条第八号の
未決拘禁者としての地位を有するものを除く。)を除く。)を成人と分離して
収容しなければならない。」と規定されていますので、
拘置所に収容されている少年も成人と分離して収容しなければなりません。
Ⅲ なお、現行法第48条の第2項と第3項には以下のような規定があります。
「2 少年を勾留する場合には、少年鑑別所にこれを拘禁することができる。
3 本人が満二十歳に達した後でも、引き続き前項の規定によることが
できる。」
つまり、現行法によると、少年を勾留する場合でも、少年鑑別所にこれを
拘禁することができますし、本人が満20歳に達した後でも、
引き続き少年鑑別所に拘禁することができます。これは良い規定だと
思います。なぜなら、少年鑑別所の方が、拘置所よりも、
少年の扱いに慣れているからです。
そして、現行法第48条の第2項と第3項に対応する規定は、旧法には
存在しませんでした。というのは、旧法には少年鑑別所に対応する施設が
なかったからです。
Ⅳ 以上で、旧法第67条についてのご説明を終わらせていただきます。
明日は、今日のブログの冒頭でお約束した通り、
旧法の第68条や第69条についてご説明します。
今日は旧法第67条についてご説明します。
(なお、昨日は「そしてできれば、
第68条や第69条についてもご説明したいです。」とも書きましたが、
説明をできるだけ分かりやすくするために、
これらの条文についてのご説明は明日にさせていただきます。)
Ⅰ 旧法第67条は以下のような規定でした。
「第六十七条 勾留状ハ已」(や)「ムコトヲ得サル場合ニ
非」(あら)「サレバ少年ニ對」(たい)シテ之ヲ發」(はっ)「スル
コトヲ得ス
拘置監ニ於」(おい)「テハ特別ノ事由アル場合ヲ除クノ外少年ヲ
獨居」(どっきょ)「セシムヘシ」
Ⅱ 旧法第67条第1項、つまり「勾留状」から「得ス」までの部分の
「勾留状」とは、逮捕されて刑事裁判所に起訴されるまでの被疑者と
起訴された後の被告人の身柄を拘束する「勾留」という手続を取ることを
許可する裁判所の令状のことです。
https://keiji.vbest.jp/columns/g_other/5796/
そして、旧法第67条第1項とそっくりな規定は、現行法第48条第1項にも
存在します。それによりますと、「第四十八条 勾留状は、
やむを得ない場合でなければ、少年に対して、
これを発することはできない。」と規定されています。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000050
Ⅱ 旧法第67条第2項、つまり「拘置監」から「セシムヘシ」までの部分の
「拘置監」とは、「旧監獄法で規定されていた監獄の種類の一つで、
刑事被告人や死刑の言い渡しを受けた者を拘禁する場所」です。
現在では「拘置所」と呼ばれています。
https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E6%8B%98%E7%BD%AE%E7%9B%A3/
また「獨居」とは、囚人を一人だけ入れておく部屋に入れることです。
https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E7%8B%AC%E5%B1%85%E6%88%BF/#jn-159291
つまり、旧法第67条第2項は、「拘置監においては特別の事由ある
場合を除いては少年を独居させなければならない」という意味です。
現行法には、旧法第67条第2項にぴったり対応する規定はありません。
ただ、第49条第3項に「刑事施設、留置施設及び
海上保安留置施設においては、少年(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に
関する法律(平成十七年法律第五十号)第二条第四号の受刑者(同条第八号の
未決拘禁者としての地位を有するものを除く。)を除く。)を成人と分離して
収容しなければならない。」と規定されていますので、
拘置所に収容されている少年も成人と分離して収容しなければなりません。
Ⅲ なお、現行法第48条の第2項と第3項には以下のような規定があります。
「2 少年を勾留する場合には、少年鑑別所にこれを拘禁することができる。
3 本人が満二十歳に達した後でも、引き続き前項の規定によることが
できる。」
つまり、現行法によると、少年を勾留する場合でも、少年鑑別所にこれを
拘禁することができますし、本人が満20歳に達した後でも、
引き続き少年鑑別所に拘禁することができます。これは良い規定だと
思います。なぜなら、少年鑑別所の方が、拘置所よりも、
少年の扱いに慣れているからです。
そして、現行法第48条の第2項と第3項に対応する規定は、旧法には
存在しませんでした。というのは、旧法には少年鑑別所に対応する施設が
なかったからです。
Ⅳ 以上で、旧法第67条についてのご説明を終わらせていただきます。
明日は、今日のブログの冒頭でお約束した通り、
旧法の第68条や第69条についてご説明します。
昨日書いたブログでお約束した通り、
今日からは旧法が定める少年に対する刑事手続の特則、
つまり特別な定めについてご説明します。
今日は旧法第64条についてご説明します。
Ⅰ 旧法第64条は以下のような規定でした。
「第六十四條 少年ニ對」(たい)「スル刑事事件ニ付」(つい)「テハ
第三十一條ノ調査ヲ爲スヘシ
少年ノ身上ニ關」(かん)「スル事項ノ調査ハ少年保護司ニ嘱託シテ
之ヲ爲サシムルコトヲ得」
1.第一に、第1項、つまり「少年ニ」から「爲ヘシ」の部分における
「第三十一條ノ調査」とは、12月23日に書いたブログでご説明したように、
「事件ノ關係」(かんけい)「及本人ノ性行、境遇、經歴、」(けいれき)
「心身ノ状況、教育ノ程度等」についての調査のことです。
2.第二に、第2項、つまり「少年ノ身上」から「コトヲ得」の部分は、
少年の「性行、境遇、經歴、心身ノ状況、教育ノ程度等」に関する事項の
調査は、少年保護司に嘱託してこれを行わせることができる、
という意味の規定です。
3. ですから、1.2.を総合すると、旧法では、刑事裁判所に起訴された
少年に対しても、事件の関係、及本人の性行、境遇、経歴、
心身の状況、教育の程度等についての調査を行わなければならず、
このうち少年の身上に関する事項の調査は、少年保護司に嘱託して
行わせることができたのです。
Ⅱ 現行少年法には、旧法第64条にぴったり対応する規定はありません。
わずかに第50条が、以下のように定めているだけです。
「(審理の方針)
第五十条 少年に対する刑事事件の審理は、第九条の趣旨に従つて、
これを行わなければならない。」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
ここで、「第九条」とは次のような規定です。
「(調査の方針)
第九条 前条の調査は、なるべく、少年、保護者又は関係人の行状、経歴、
素質、環境等について、医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的智識
特に少年鑑別所の鑑別の結果を活用して、これを行うように努めなければ
ならない。」
ですから、現行法第50条が意味するのは、
「少年に対する刑事事件の審理は、なるべく、
少年、保護者又は関係人の行状、経歴、素質、環境等について、医学、
心理学、教育学、社会学その他の専門的智識特に少年鑑別所の鑑別の結果を
活用して、行わなければならない」という意味です。
そして、現行法第50条は、実務家つまり裁判官によって、
次のように解釈されています。
「家庭裁判所でなされた科学調査の結果がまとめられた社会記録を
取寄せて判断資料とすることが最も有効である。(中略) 他方、
社会記録には少年や保護者の個人情報で公開に馴染まないものが多く
非公開・秘密保持の要請が強いのに、刑事裁判は公開の法廷で
行われる。そこで、この秘密保持の要請のため、取調の方式や
閲覧・謄写(刑訴40条)に配慮・工夫することが重要である(中略)。
証拠書類の取調方式は朗読であるが(刑訴305条)、
実務上ほとんどの場合、朗読に代えて要旨の告知(刑訴規203条の2)によって
行われているので、社会記録の取調の場合、少年や保護者の名誉や情操を
害さないように配慮して工夫することが可能であり、
実務上励行されている。」(注)
Ⅲ 長くなりました。以上で旧法第64条についてのご説明を終わりと
します。明日は、旧法第67条についてご説明します。そしてできれば、
第68条や第69条についてもご説明したいです。
(注)田宮裕=廣瀬健二編『注釈少年法(第3版)』(2009年、有斐閣)462頁
今日からは旧法が定める少年に対する刑事手続の特則、
つまり特別な定めについてご説明します。
今日は旧法第64条についてご説明します。
Ⅰ 旧法第64条は以下のような規定でした。
「第六十四條 少年ニ對」(たい)「スル刑事事件ニ付」(つい)「テハ
第三十一條ノ調査ヲ爲スヘシ
少年ノ身上ニ關」(かん)「スル事項ノ調査ハ少年保護司ニ嘱託シテ
之ヲ爲サシムルコトヲ得」
1.第一に、第1項、つまり「少年ニ」から「爲ヘシ」の部分における
「第三十一條ノ調査」とは、12月23日に書いたブログでご説明したように、
「事件ノ關係」(かんけい)「及本人ノ性行、境遇、經歴、」(けいれき)
「心身ノ状況、教育ノ程度等」についての調査のことです。
2.第二に、第2項、つまり「少年ノ身上」から「コトヲ得」の部分は、
少年の「性行、境遇、經歴、心身ノ状況、教育ノ程度等」に関する事項の
調査は、少年保護司に嘱託してこれを行わせることができる、
という意味の規定です。
3. ですから、1.2.を総合すると、旧法では、刑事裁判所に起訴された
少年に対しても、事件の関係、及本人の性行、境遇、経歴、
心身の状況、教育の程度等についての調査を行わなければならず、
このうち少年の身上に関する事項の調査は、少年保護司に嘱託して
行わせることができたのです。
Ⅱ 現行少年法には、旧法第64条にぴったり対応する規定はありません。
わずかに第50条が、以下のように定めているだけです。
「(審理の方針)
第五十条 少年に対する刑事事件の審理は、第九条の趣旨に従つて、
これを行わなければならない。」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
ここで、「第九条」とは次のような規定です。
「(調査の方針)
第九条 前条の調査は、なるべく、少年、保護者又は関係人の行状、経歴、
素質、環境等について、医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的智識
特に少年鑑別所の鑑別の結果を活用して、これを行うように努めなければ
ならない。」
ですから、現行法第50条が意味するのは、
「少年に対する刑事事件の審理は、なるべく、
少年、保護者又は関係人の行状、経歴、素質、環境等について、医学、
心理学、教育学、社会学その他の専門的智識特に少年鑑別所の鑑別の結果を
活用して、行わなければならない」という意味です。
そして、現行法第50条は、実務家つまり裁判官によって、
次のように解釈されています。
「家庭裁判所でなされた科学調査の結果がまとめられた社会記録を
取寄せて判断資料とすることが最も有効である。(中略) 他方、
社会記録には少年や保護者の個人情報で公開に馴染まないものが多く
非公開・秘密保持の要請が強いのに、刑事裁判は公開の法廷で
行われる。そこで、この秘密保持の要請のため、取調の方式や
閲覧・謄写(刑訴40条)に配慮・工夫することが重要である(中略)。
証拠書類の取調方式は朗読であるが(刑訴305条)、
実務上ほとんどの場合、朗読に代えて要旨の告知(刑訴規203条の2)によって
行われているので、社会記録の取調の場合、少年や保護者の名誉や情操を
害さないように配慮して工夫することが可能であり、
実務上励行されている。」(注)
Ⅲ 長くなりました。以上で旧法第64条についてのご説明を終わりと
します。明日は、旧法第67条についてご説明します。そしてできれば、
第68条や第69条についてもご説明したいです。
(注)田宮裕=廣瀬健二編『注釈少年法(第3版)』(2009年、有斐閣)462頁
12月27日に書いたブログでお約束した通り、
今日から旧少年法(以下、「旧法」と略します)のあらましについての
ご説明を再開します。
今日は旧法第47条についてご説明します。
Ⅰ 第1に、旧法第47条第1項は、現代風で表記すると、
「刑事訴追(そつい)の必要ありと認めたるときは事件を管轄裁判所の検事に
送致すべし」という規定でした。
ここで「訴追」とは、「検察官が刑事事件について公訴を提起し、
追行すること」という意味でして、「起訴」と同じ意味です。
https://kotobank.jp/word/%E8%A8%B4%E8%BF%BD-554570
また、「管轄裁判所の検事」というのは、戦前の日本では
検事局が裁判所に付置、つまり付属して置かれていたことから
このように呼ばれています。
https://www.kensatsu.go.jp/kensatsu_seido/wagakuni_enkaku.htm
旧法第47条第1項に対応する現行少年法(以下「現行法」と略します)の
規定は、第20条です。現行法第20条は以下の通りです。
「(検察官への送致)
第二十条 家庭裁判所は、死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、
調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは、
決定をもつて、これを管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に
送致しなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、家庭裁判所は、故意の犯罪行為により
被害者を死亡させた罪の事件であつて、その罪を犯すとき十六歳以上の少年に
係るものについては、同項の決定をしなければならない。ただし、
調査の結果、犯行の動機及び態様、犯行後の情況、少年の性格、年齢、
行状及び環境その他の事情を考慮し、
刑事処分以外の措置を相当と認めるときは、この限りでない。」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
ただし、現行法第20条をご覧になればお分かりの通り、
旧法には「刑事訴追の必要ありと認めたるとき」と規定しているだけで、
現行法のような「調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と
認めるとき」という要件はありませんでしたし、犯罪行為時16歳以上の
少年による故意の犯罪行為により被害者を志望させた罪の事件についての
特別扱いはありませんでした。
Ⅱ 第2に、旧法第47条は、「裁判所又は検事より送致を受けたる事件に
付」(つき)「新」(あらた)「なる事実の発見により刑事訴追の必要ありと
認めたるときは管轄裁判所の検事の意見を聴き前項の手続を為すべし」
という規定でした。
この規定の前提として、旧法第62条と第71条第1項について
ご説明しなければなりません。
1.旧法第62条は「検事少年に対する刑事事件に付
第四条の処分を為すを相当と思料」(しりょう)「したるときは事件を
少年審判所に送致すべし」と定めていました。
ここで、「第四条の処分」とは、旧法の定めていた保護処分、
つまり、「一 訓戒ヲ加フルコト、二 学校長ノ訓戒ニ委(まか)スルコト、
三 書面ヲ以(も)テ改心(かいしん)ノ誓約ヲ爲(ナ)サシムルコト、
四 條件(じょうけん)ヲ附(ふ)シテ保護者ニ引渡スコト、
五 寺院、教會、保護團體(ほごだんたい)又ハ適富(てきとう)ナル者ニ
委託スルコト、六 少年保護司ノ観察ニ付スルコト、七 感化院(かんかいん)
ニ送致スルコト、八 矯正院ニ送致スルコト、九 病院ニ送致又ハ
委託スルコト」です。
ですから、旧法第62条によると、検事は少年に対する刑事事件に
ついて旧法第4条の保護処分を行うのを相当と思った場合には
事件を少年審判所に送致しなければならなかったのですが、
そうでない場合には送致する義務を負わず、不起訴したり、
直接刑事裁判所に起訴することもできたのです。
2.旧法第71条第1項は、「第一審裁判所又は控訴裁判所審理の
結果に因り被告人に対し第四条の処分を為すを相当と認めたるときは
少年裁判所に送致する旨(むね)の決定を為すべし」という規定でした。
ここでの「第四条の処分」は旧法の定めていた保護処分です。
ですから、旧法第71条第1項は、第一審または控訴裁判所に対し、
審理の結果被告人に対し保護処分を為すを相当と認めたときは、
少年審判所に送致するという内容の決定をしなければならないという
意味です。
3.話を旧法第47条第2項に戻しますと、この規定は、裁判所又は検事より
「保護処分を為すのが相当である」と送致された事件について、
「新たなる事実」を発見したため刑事訴追の必要があると認めた場合には、
管轄裁判所の検事の意見を聴いた上でその検事に送致しなければならない、
という意味の規定です。
Ⅲ 旧法第47条第3項は「前二項の規定による処分を為したるときは
其の旨を本人及び保護者に通知すべし」という規定です。
つまりこの規定は、1)刑事訴追を必要と認めたため事件を
管轄裁判所の検事に送致する処分、または2)裁判所又は検事より
「保護処分を為すのが相当である」と送致された事件について、
「新たなる事実」を発見したため刑事訴追の必要があると認めたため、
管轄裁判所の検事の意見を聴いた上でその検事に送致する
処分をしたときは、その旨を本人と保護者に通知しなければならない、
という手見の規定です。
Ⅳ 旧法第47条第4項は、「検事は第一項又は第二項の規定により
送致を受けたる事件に付為したる処分を少年審判所に通知すべし」
という規定です。
つまりこの規定は、検事に対して、1)刑事訴追を必要と認めたため事件を
管轄裁判所の検事に送致された事件、または、2)裁判所又は検事より
「保護処分を為すのが相当である」と送致された事件について、
「新たなる事実」を発見したため刑事訴追の必要があると認めたため、
管轄裁判所の検事の意見を聴いた上でその検事に送致された事件について、
為した処分を少年審判所に通知することを義務づける規定です。
Ⅴ 長くなりました。旧法第47条についてのご説明はここまでとします。
明日からは、旧法が定める少年に対する刑事手続の特則、
つまり特別な定めについてご説明します。
今日から旧少年法(以下、「旧法」と略します)のあらましについての
ご説明を再開します。
今日は旧法第47条についてご説明します。
Ⅰ 第1に、旧法第47条第1項は、現代風で表記すると、
「刑事訴追(そつい)の必要ありと認めたるときは事件を管轄裁判所の検事に
送致すべし」という規定でした。
ここで「訴追」とは、「検察官が刑事事件について公訴を提起し、
追行すること」という意味でして、「起訴」と同じ意味です。
https://kotobank.jp/word/%E8%A8%B4%E8%BF%BD-554570
また、「管轄裁判所の検事」というのは、戦前の日本では
検事局が裁判所に付置、つまり付属して置かれていたことから
このように呼ばれています。
https://www.kensatsu.go.jp/kensatsu_seido/wagakuni_enkaku.htm
旧法第47条第1項に対応する現行少年法(以下「現行法」と略します)の
規定は、第20条です。現行法第20条は以下の通りです。
「(検察官への送致)
第二十条 家庭裁判所は、死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、
調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは、
決定をもつて、これを管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に
送致しなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、家庭裁判所は、故意の犯罪行為により
被害者を死亡させた罪の事件であつて、その罪を犯すとき十六歳以上の少年に
係るものについては、同項の決定をしなければならない。ただし、
調査の結果、犯行の動機及び態様、犯行後の情況、少年の性格、年齢、
行状及び環境その他の事情を考慮し、
刑事処分以外の措置を相当と認めるときは、この限りでない。」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
ただし、現行法第20条をご覧になればお分かりの通り、
旧法には「刑事訴追の必要ありと認めたるとき」と規定しているだけで、
現行法のような「調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と
認めるとき」という要件はありませんでしたし、犯罪行為時16歳以上の
少年による故意の犯罪行為により被害者を志望させた罪の事件についての
特別扱いはありませんでした。
Ⅱ 第2に、旧法第47条は、「裁判所又は検事より送致を受けたる事件に
付」(つき)「新」(あらた)「なる事実の発見により刑事訴追の必要ありと
認めたるときは管轄裁判所の検事の意見を聴き前項の手続を為すべし」
という規定でした。
この規定の前提として、旧法第62条と第71条第1項について
ご説明しなければなりません。
1.旧法第62条は「検事少年に対する刑事事件に付
第四条の処分を為すを相当と思料」(しりょう)「したるときは事件を
少年審判所に送致すべし」と定めていました。
ここで、「第四条の処分」とは、旧法の定めていた保護処分、
つまり、「一 訓戒ヲ加フルコト、二 学校長ノ訓戒ニ委(まか)スルコト、
三 書面ヲ以(も)テ改心(かいしん)ノ誓約ヲ爲(ナ)サシムルコト、
四 條件(じょうけん)ヲ附(ふ)シテ保護者ニ引渡スコト、
五 寺院、教會、保護團體(ほごだんたい)又ハ適富(てきとう)ナル者ニ
委託スルコト、六 少年保護司ノ観察ニ付スルコト、七 感化院(かんかいん)
ニ送致スルコト、八 矯正院ニ送致スルコト、九 病院ニ送致又ハ
委託スルコト」です。
ですから、旧法第62条によると、検事は少年に対する刑事事件に
ついて旧法第4条の保護処分を行うのを相当と思った場合には
事件を少年審判所に送致しなければならなかったのですが、
そうでない場合には送致する義務を負わず、不起訴したり、
直接刑事裁判所に起訴することもできたのです。
2.旧法第71条第1項は、「第一審裁判所又は控訴裁判所審理の
結果に因り被告人に対し第四条の処分を為すを相当と認めたるときは
少年裁判所に送致する旨(むね)の決定を為すべし」という規定でした。
ここでの「第四条の処分」は旧法の定めていた保護処分です。
ですから、旧法第71条第1項は、第一審または控訴裁判所に対し、
審理の結果被告人に対し保護処分を為すを相当と認めたときは、
少年審判所に送致するという内容の決定をしなければならないという
意味です。
3.話を旧法第47条第2項に戻しますと、この規定は、裁判所又は検事より
「保護処分を為すのが相当である」と送致された事件について、
「新たなる事実」を発見したため刑事訴追の必要があると認めた場合には、
管轄裁判所の検事の意見を聴いた上でその検事に送致しなければならない、
という意味の規定です。
Ⅲ 旧法第47条第3項は「前二項の規定による処分を為したるときは
其の旨を本人及び保護者に通知すべし」という規定です。
つまりこの規定は、1)刑事訴追を必要と認めたため事件を
管轄裁判所の検事に送致する処分、または2)裁判所又は検事より
「保護処分を為すのが相当である」と送致された事件について、
「新たなる事実」を発見したため刑事訴追の必要があると認めたため、
管轄裁判所の検事の意見を聴いた上でその検事に送致する
処分をしたときは、その旨を本人と保護者に通知しなければならない、
という手見の規定です。
Ⅳ 旧法第47条第4項は、「検事は第一項又は第二項の規定により
送致を受けたる事件に付為したる処分を少年審判所に通知すべし」
という規定です。
つまりこの規定は、検事に対して、1)刑事訴追を必要と認めたため事件を
管轄裁判所の検事に送致された事件、または、2)裁判所又は検事より
「保護処分を為すのが相当である」と送致された事件について、
「新たなる事実」を発見したため刑事訴追の必要があると認めたため、
管轄裁判所の検事の意見を聴いた上でその検事に送致された事件について、
為した処分を少年審判所に通知することを義務づける規定です。
Ⅴ 長くなりました。旧法第47条についてのご説明はここまでとします。
明日からは、旧法が定める少年に対する刑事手続の特則、
つまり特別な定めについてご説明します。
昨日のブログに続き、今日も、
少年審判所における保護処分を決定するための手続をご説明します。
そして今日も、少年審判所が保護処分を決定するまさにそのための手続である
審判についてご説明します。
Ⅰ 第1に、旧法第45条には、「審判ハ之ヲ公行セス但シ少年審判所ハ
本人ノ親族、保護事業ニ従事スル者其ノ他相當」(そうとう)「ト認ムル者ニ
在席セシムルコトヲ得」と規定されていました。つまり、旧法では審判は
非公開でしたが、少年審判所は本人の親族、保護事業に従事する者
その他相当と認める者に在席させることができました。そして、実を言うと、
旧法で審判の方式について定めた条文はこの第45条だけでした。
これに対して、現行法でも審判の方式について定めている条文は、
以下に引用する第22条だけです。
「 (審判の方式)
第二十二条 審判は、懇切を旨として、和やかに行うとともに、
非行のある少年に対し自己の非行について内省を促すものとしなければ
ならない。
2 審判は、これを公開しない。
3 審判の指揮は、裁判長が行う。」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
現行法第22条第2項、つまり「2 審判は」から「公開しない」までの
部分をご覧になればお分かりの通り、現在でも少年審判は非公開です。
ただし、少年審判規則第29条には「裁判長は、審判の席に、少年の親族、
教員その他相当と認める者の在席を許すことができる。」と規定されています。
https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file2/20150601syounenshinpankisoku.pdf
ですから、裁判長の許可があった場合に限ってですが、少年審判に
少年の親族、教員その他相当と認められた者が在席することもあります。
「教員」が明記されているかいないかが、現在の制度と旧法の違いと
言えなくはないと思います。
ですが、現行法では、以下の場合に限ってですが、家裁は被害者等に対して、
審判の傍聴を許すことができると規定されています。
「(被害者等による少年審判の傍聴)
第二十二条の四 家庭裁判所は、最高裁判所規則の定めるところにより
第三条第一項第一号に掲げる少年に係る事件であつて次に掲げる罪のもの
又は同項第二号に掲げる少年(十二歳に満たないで刑罰法令に触れる行為を
した少年を除く。次項において同じ。)に係る事件であつて次に掲げる罪に
係る刑罰法令に触れるもの(いずれも被害者を傷害した場合にあつては、
これにより生命に重大な危険を生じさせたときに限る。)の被害者等から、
審判期日における審判の傍聴の申出がある場合において、
少年の年齢及び心身の状態、事件の性質、審判の状況その他の事情を
考慮して、少年の健全な育成を妨げるおそれがなく相当と認めるときは、
その申出をした者に対し、これを傍聴することを許すことができる。
一 故意の犯罪行為により被害者を死傷させた罪
二 刑法(明治四十年法律第四十五号)第二百十一条(業務上過失致死傷等)
の罪
三 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律
(平成二十五年法律第八十六号)第四条、第五条又は第六条第三項若しくは
第四項の罪
2 家庭裁判所は、前項の規定により第三条第一項第二号に掲げる少年に係る
事件の被害者等に審判の傍聴を許すか否かを判断するに当たつては、
同号に掲げる少年が、一般に、精神的に特に未成熟であることを十分
考慮しなければならない。
3 家庭裁判所は、第一項の規定により審判の傍聴を許す場合において、
傍聴する者の年齢、心身の状態その他の事情を考慮し、その者が著しく不安
又は緊張を覚えるおそれがあると認めるときは、その不安又は緊張を
緩和するのに適当であり、かつ、審判を妨げ、又はこれに不当な影響を
与えるおそれがないと認める者を、傍聴する者に付き添わせることができる。
4 裁判長は、第一項の規定により審判を傍聴する者及び前項の規定により
この者に付き添う者の座席の位置、審判を行う場所における裁判所職員の
配置等を定めるに当たつては、少年の心身に及ぼす影響に配慮しなければ
ならない。
5 第五条の二第三項の規定は、第一項の規定により審判を傍聴した者又は
第三項の規定によりこの者に付き添つた者について、準用する。
(弁護士である付添人からの意見の聴取等)
第二十二条の五 家庭裁判所は、前条第一項の規定により審判の傍聴を
許すには、あらかじめ、弁護士である付添人の意見を聴かなければならない。
2 家庭裁判所は、前項の場合において、少年に弁護士である付添人がない
ときは、弁護士である付添人を付さなければならない。
3 少年に弁護士である付添人がない場合であつて、最高裁判所規則の定める
ところにより少年及び保護者がこれを必要としない旨の意思を明示したときは、前二項の規定は適用しない。
4 第二十二条の三第三項の規定は、第二項の規定により家庭裁判所が
付すべき付添人について、準用する。」
なお、ここでの「被害者等」とは、「被害者又はその法定代理人若しくは
被害者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合における
その配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹」です(現行法第5条の2第1項)。
Ⅱ 第2に、話を旧法に戻しますと、その第46条には「少年審判所審理ヲ
終ヘタルトキハ第四十七條乃至」(ないし)「第五十四条ノ規定ニ依リ
終結處分」(しょぶん)「ヲ爲スヘシ」と規定されています。
ここでの「第四十七條」は、「刑事訴追(そつい)の必要があると認めた
ときは事件を管轄裁判所の検事に送致すべし」という意味の規定ですが、
この規定については後日ご説明します。
また、旧法の第48条から第54条までは旧法の定めていた保護処分、
つまり、「一 訓戒ヲ加フルコト、二 学校長ノ訓戒ニ委(まか)スルコト、
三 書面ヲ以(も)テ改心(かいしん)ノ誓約ヲ爲(ナ)サシムルコト、
四 條件(じょうけん)ヲ附(ふ)シテ保護者ニ引渡スコト、
五 寺院、教會、保護團體(ほごだんたい)又ハ適富(てきとう)ナル者ニ
委託スルコト、六 少年保護司ノ観察ニ付スルコト、七 感化院(かんかいん)
ニ送致スルコト、八 矯正院ニ送致スルコト、九 病院ニ送致又ハ
委託スルコト」(旧法第4条第1項)を言い渡す際の手続について定めたものです。
しかし、やや細かい規定ですので、詳しいご説明は割愛させていただきます。
それはともかく、旧法と現行法では大きな違いがあります。
それは、現行法第23条第2項には「家庭裁判所は、審判の結果、
保護処分に付することができず、又は保護処分に付する必要がないと
認めるときは、その旨の決定をしなければならない。」という
規定があるのですが、旧法にはこれに相当する規定がないという違いです。
したがってまず、旧法でも、刑罰法令に触れる行為をした疑い、または、
刑罰法令に触れる行為をする虞があるとして少年審判所に通告または
送致された少年が、実は刑罰法令に触れる行為をしていなかった、
または刑罰法令に触れる行為をする虞がなかったと判断されたケースは
あり得た筈なのに、その場合どうしていたのだろうかという疑問が
生じてきます。お恥ずかしい限りですが、この点については全く不勉強
ですので、今後の研究課題とさせていただかざるを得ません。
また、旧法では「保護処分に付する必要がない」ことを理由とした
不処分決定がない理由は簡単です。それは旧法では、「訓戒ヲ加フルコト」や
「書面ヲ以テ改心ノ誓約ヲ爲(ナ)サシムルコト」といった、
現行法の下では審判不開始決定や不処分決定に伴って行われている
「保護的措置」に相当するものまで正式の保護処分として定められていた
という理由です。
Ⅲ 長くなりました。これでようやく、旧少年法の下で保護処分を
決定するための手続のあらましについてのご説明を終えることとします。
そして、旧法には、少年に対する刑事手続や刑事処分についても
特別な定めがあるのですが、これらについてご説明するのは、
年が明けて来年の1月4日からにさせていただきます。
少年審判所における保護処分を決定するための手続をご説明します。
そして今日も、少年審判所が保護処分を決定するまさにそのための手続である
審判についてご説明します。
Ⅰ 第1に、旧法第45条には、「審判ハ之ヲ公行セス但シ少年審判所ハ
本人ノ親族、保護事業ニ従事スル者其ノ他相當」(そうとう)「ト認ムル者ニ
在席セシムルコトヲ得」と規定されていました。つまり、旧法では審判は
非公開でしたが、少年審判所は本人の親族、保護事業に従事する者
その他相当と認める者に在席させることができました。そして、実を言うと、
旧法で審判の方式について定めた条文はこの第45条だけでした。
これに対して、現行法でも審判の方式について定めている条文は、
以下に引用する第22条だけです。
「 (審判の方式)
第二十二条 審判は、懇切を旨として、和やかに行うとともに、
非行のある少年に対し自己の非行について内省を促すものとしなければ
ならない。
2 審判は、これを公開しない。
3 審判の指揮は、裁判長が行う。」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
現行法第22条第2項、つまり「2 審判は」から「公開しない」までの
部分をご覧になればお分かりの通り、現在でも少年審判は非公開です。
ただし、少年審判規則第29条には「裁判長は、審判の席に、少年の親族、
教員その他相当と認める者の在席を許すことができる。」と規定されています。
https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file2/20150601syounenshinpankisoku.pdf
ですから、裁判長の許可があった場合に限ってですが、少年審判に
少年の親族、教員その他相当と認められた者が在席することもあります。
「教員」が明記されているかいないかが、現在の制度と旧法の違いと
言えなくはないと思います。
ですが、現行法では、以下の場合に限ってですが、家裁は被害者等に対して、
審判の傍聴を許すことができると規定されています。
「(被害者等による少年審判の傍聴)
第二十二条の四 家庭裁判所は、最高裁判所規則の定めるところにより
第三条第一項第一号に掲げる少年に係る事件であつて次に掲げる罪のもの
又は同項第二号に掲げる少年(十二歳に満たないで刑罰法令に触れる行為を
した少年を除く。次項において同じ。)に係る事件であつて次に掲げる罪に
係る刑罰法令に触れるもの(いずれも被害者を傷害した場合にあつては、
これにより生命に重大な危険を生じさせたときに限る。)の被害者等から、
審判期日における審判の傍聴の申出がある場合において、
少年の年齢及び心身の状態、事件の性質、審判の状況その他の事情を
考慮して、少年の健全な育成を妨げるおそれがなく相当と認めるときは、
その申出をした者に対し、これを傍聴することを許すことができる。
一 故意の犯罪行為により被害者を死傷させた罪
二 刑法(明治四十年法律第四十五号)第二百十一条(業務上過失致死傷等)
の罪
三 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律
(平成二十五年法律第八十六号)第四条、第五条又は第六条第三項若しくは
第四項の罪
2 家庭裁判所は、前項の規定により第三条第一項第二号に掲げる少年に係る
事件の被害者等に審判の傍聴を許すか否かを判断するに当たつては、
同号に掲げる少年が、一般に、精神的に特に未成熟であることを十分
考慮しなければならない。
3 家庭裁判所は、第一項の規定により審判の傍聴を許す場合において、
傍聴する者の年齢、心身の状態その他の事情を考慮し、その者が著しく不安
又は緊張を覚えるおそれがあると認めるときは、その不安又は緊張を
緩和するのに適当であり、かつ、審判を妨げ、又はこれに不当な影響を
与えるおそれがないと認める者を、傍聴する者に付き添わせることができる。
4 裁判長は、第一項の規定により審判を傍聴する者及び前項の規定により
この者に付き添う者の座席の位置、審判を行う場所における裁判所職員の
配置等を定めるに当たつては、少年の心身に及ぼす影響に配慮しなければ
ならない。
5 第五条の二第三項の規定は、第一項の規定により審判を傍聴した者又は
第三項の規定によりこの者に付き添つた者について、準用する。
(弁護士である付添人からの意見の聴取等)
第二十二条の五 家庭裁判所は、前条第一項の規定により審判の傍聴を
許すには、あらかじめ、弁護士である付添人の意見を聴かなければならない。
2 家庭裁判所は、前項の場合において、少年に弁護士である付添人がない
ときは、弁護士である付添人を付さなければならない。
3 少年に弁護士である付添人がない場合であつて、最高裁判所規則の定める
ところにより少年及び保護者がこれを必要としない旨の意思を明示したときは、前二項の規定は適用しない。
4 第二十二条の三第三項の規定は、第二項の規定により家庭裁判所が
付すべき付添人について、準用する。」
なお、ここでの「被害者等」とは、「被害者又はその法定代理人若しくは
被害者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合における
その配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹」です(現行法第5条の2第1項)。
Ⅱ 第2に、話を旧法に戻しますと、その第46条には「少年審判所審理ヲ
終ヘタルトキハ第四十七條乃至」(ないし)「第五十四条ノ規定ニ依リ
終結處分」(しょぶん)「ヲ爲スヘシ」と規定されています。
ここでの「第四十七條」は、「刑事訴追(そつい)の必要があると認めた
ときは事件を管轄裁判所の検事に送致すべし」という意味の規定ですが、
この規定については後日ご説明します。
また、旧法の第48条から第54条までは旧法の定めていた保護処分、
つまり、「一 訓戒ヲ加フルコト、二 学校長ノ訓戒ニ委(まか)スルコト、
三 書面ヲ以(も)テ改心(かいしん)ノ誓約ヲ爲(ナ)サシムルコト、
四 條件(じょうけん)ヲ附(ふ)シテ保護者ニ引渡スコト、
五 寺院、教會、保護團體(ほごだんたい)又ハ適富(てきとう)ナル者ニ
委託スルコト、六 少年保護司ノ観察ニ付スルコト、七 感化院(かんかいん)
ニ送致スルコト、八 矯正院ニ送致スルコト、九 病院ニ送致又ハ
委託スルコト」(旧法第4条第1項)を言い渡す際の手続について定めたものです。
しかし、やや細かい規定ですので、詳しいご説明は割愛させていただきます。
それはともかく、旧法と現行法では大きな違いがあります。
それは、現行法第23条第2項には「家庭裁判所は、審判の結果、
保護処分に付することができず、又は保護処分に付する必要がないと
認めるときは、その旨の決定をしなければならない。」という
規定があるのですが、旧法にはこれに相当する規定がないという違いです。
したがってまず、旧法でも、刑罰法令に触れる行為をした疑い、または、
刑罰法令に触れる行為をする虞があるとして少年審判所に通告または
送致された少年が、実は刑罰法令に触れる行為をしていなかった、
または刑罰法令に触れる行為をする虞がなかったと判断されたケースは
あり得た筈なのに、その場合どうしていたのだろうかという疑問が
生じてきます。お恥ずかしい限りですが、この点については全く不勉強
ですので、今後の研究課題とさせていただかざるを得ません。
また、旧法では「保護処分に付する必要がない」ことを理由とした
不処分決定がない理由は簡単です。それは旧法では、「訓戒ヲ加フルコト」や
「書面ヲ以テ改心ノ誓約ヲ爲(ナ)サシムルコト」といった、
現行法の下では審判不開始決定や不処分決定に伴って行われている
「保護的措置」に相当するものまで正式の保護処分として定められていた
という理由です。
Ⅲ 長くなりました。これでようやく、旧少年法の下で保護処分を
決定するための手続のあらましについてのご説明を終えることとします。
そして、旧法には、少年に対する刑事手続や刑事処分についても
特別な定めがあるのですが、これらについてご説明するのは、
年が明けて来年の1月4日からにさせていただきます。
昨日のブログに続き、今日も、
少年審判所における保護処分を決定するための手続をご説明します。
今日はいよいよ、少年審判所が保護処分を決定するまさにそのための手続である
審判についてご説明します。
Ⅰ 第1に、旧法第19条には「少年審判官ハ單獨」(たんどく)「ニテ
審判ヲ爲」(な)「ス」と規定されていました。つまり、旧法の下では、
審判は常に少年審判官単独で行われていました。
これに対して、現行法では、2000年までは裁判官単独で審判が
行われていました。
しかし、2000年改正以降は、「合議体で審判又は審理及び裁判をする旨の
決定を合議体でした事件」は裁判官の合議体で取り扱うこととされました
(裁判所法第31条の四第2項第1号)。この場合の合議体の裁判官の員数は、
「三人とし、そのうち一人を裁判長」とします(裁判所法第31条の四第3項)。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000059
Ⅱ 第2に、旧法第43条第1項には「審判期日ニハ少年審判官及書記
出席スヘシ」と規定されていました。これは当然です。現行の少年審判規則
第28条第1項にも、「審判の席には、裁判官及び裁判所書記官が、
列席する。」と規定されています。
Ⅲ 第3に、旧法第43条第2項には「少年保護司ハ審判期日ニ出席スルコトヲ
得」と規定されていました。でも、これを逆に言うと、旧法の下では
少年保護司は必ずしも審判期日に出席しなくてもよかったのです。
これに対して、少年審判規則第28条第2項には、「家庭裁判所調査官は、
裁判長の許可を得た場合を除き、審判の席に出席しなければならない。」と
規定されています。つまり現在では、家庭裁判所調査官は、
原則として審判の席に出席する義務があるのです。
Ⅳ 第4に、旧法第43条第3項には「審判期日ニハ本人、保護者及附添人ヲ
呼出」(よびだ)「スヘシ但シ實益」(じつえき)「ナシト認メタルトキハ
保護者ハ之ヲ呼出サザルコトヲ得」と規定されていました。つまり、゜へ
旧法の下では、少年審判官が「実益がない」と認めた場合には、
保護者を呼び出す必要がなかったのです。
これに対して、少年審判規則第25条第2項には「審判期日には、
少年及び保護者を呼び出さなければならない。」と規定されています。
つまり、現行法の下では、裁判官または裁判長は、たとえ「実益がない」
と認めたとしても、保護者を呼び出す義務を有しているのです。
また、少年審判規則第28条第3項によりますと「少年が審判期日に
出頭しないときは、審判を行うことができない。」とされています。
なお、旧法では附添人も呼出の対象とされていました。これに対して、
少年審判規則第28条第4項では、「付添人は、審判の席に出席することが
できる。」と規定され、同第5項では、「家庭裁判所は、審判期日を付添人に
通知しなければならない。」と規定されています。
Ⅴ 第5に、旧法第44条第1項では「少年保護司、保護者及附添人ハ審判ノ
席ニ於テ意見ヲ陳述スルコトヲ得」と規定されていました。一見すると
当然のことを規定しているようですが、本人が意見を陳述できるとは
規定されていません。
これに対して、少年審判規則第30条には「少年、保護者、付添人、
家庭裁判所調査官、保護観察官、保護司、法務技官及び法務教官は、
審判の席において、裁判長の許可を得て、
意見を述べることができる」と規定されています。つまり現在では、
少年も、裁判長の許可を得てですが、審判の席で意見を述べることが
できます。
なお、ここでの「保護司」は、旧法の「少年保護司」と
紛らわしいですが、「社会奉仕の精神をもつて、犯罪をした者の改善及び
更生を助けるとともに、犯罪の予防のため世論の啓発に努め、
もつて地域社会の浄化をはかり、個人及び公共の福祉に寄与することを、
その使命とする」人たちで、1)保護観察、「つまり犯罪や非行をした
人たちと定期的に面接を行い、更生を図るための約束事(遵守事項)を
守るよう指導するとともに、生活上の助言や就労の手助け等を行」い、
2)生活環境の調整、つまり少年院や刑務所に収容されている人が、
釈放後にスムーズに社会復帰できるよう、釈放後の帰住予定地の調査、
引受人との話合い等を行い、必要な受け入れ態勢を整え」ることを行い、
3)犯罪予防活動、つまり「犯罪や非行を未然に防ぐとともに、罪を犯した人の
更生について理解を深めるために、世論の啓発や地域社会の浄化に
努める」ことを行います。
https://www.kouseihogo-net.jp/hogoshi/about.html
また、「法務技官」とは、「法務省において技術を掌る官職の
官名(技官)で」す。「国家公務員総合職試験並びに法務省専門職員
(人間科学)採用試験で採用される矯正心理専門職の他、選考採用で
採用される医療従事者、作業専門官があ」ります。
このうち矯正心理専門職(法務技官(心理) )の職務内容は以下の通りです。
「少年鑑別所では、法務教官に併任され法務技官兼法務教官として
勤務」します。「入所した少年に対して面接や各種心理検査を行い、
知能や性格等の資質上の特徴、非行に至った原因、今後の処遇上の指針を
明らかに」します。「結果は、『鑑別結果通知書』として、家庭裁判所に
送付され(収容審判鑑別)、審判や少年院・保護観察所での指導・援助に
活用され」ます。また、家庭裁判所の審判決定により、少年院に送致された
少年や保護観察処分になった少年にも、専門的なアセスメント機能を活用して
継続的に関与(処遇鑑別)」します。「これらに加え、心理学に関する
専門的な知見を生かして、地域社会の非行・犯罪の防止に貢献するため、
一般の方や関係機関等からの依頼に応じ、相談・助言や心理検査等を
行っており、学校等の関係機関と連携した非行防止や青少年の
健全育成のための活動にも積極的に取り組んでいる(地域援助)。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B3%95%E5%8B%99%E6%8A%80%E5%AE%98
そして、「法務教官」は主として、少年院に送致された非行少年への
指導・支援を行います。
https://www.moj.go.jp/moj/KYOUSEI/SAIYO/houmukyoukan/houmukyoukan.html
Ⅵ 第6に、話を旧法に戻しますと、その第44条第2項には、少年保護司、
保護者及び附添人が審判の席で意見を陳述する場合には「本人ヲ
退席セシムヘシ但シ相當」(そうとう)「ノ事由アルトキハ本人ヲ
在席セシムルコトヲ得」と規定されていました。つまり、旧法の下では、
少年保護司、保護者及び附添人が審判の席で意見を陳述する場合には、
原則として本人を退席させなければならず、相当の事由があるときに
限って在席させることができたのです。
このような規定は現行少年法や少年審判規則にはありません。ただ、
少年審判規則には以下のような規定があります。
「第三十一条 裁判長は、適正な審判をするため必要があると認めるときは、
発言を制止し、又は少年以外の者を退席させる等相当の措置をとることが
できる。
2 裁判長は、少年の情操を害するものと認める状況が生じたときは、
その状況の継続中、少年を退席させることができる。」
つまり現在では、少年が退席させられることがありうるのは、
「少年の情操を害するものと認める状況が生じたとき」で、
「その状況の継続中」に限られています。
Ⅶ なお、現行法では、2000年の改正以降、家裁は、
犯罪少年に係る事件であって、「死刑又は無期若しくは長期三年を超える
懲役若しくは禁錮に当たる罪のものにおいて、その非行事実を認定するための
審判の手続に検察官が関与する必要があると認めるときは、決定をもつて、
審判に検察官を出席させることができ」ます(現行法第22条第1項)。
この決定があった事件において、検察官は、「その非行事実の認定に
資するため必要な限度で、最高裁判所規則の定めるところにより、
事件の記録及び証拠物を閲覧し及び謄写し、審判の手続
(事件を終局させる決定の告知を含む。)に立ち会い、
少年及び証人その他の関係人に発問し、
並びに意見を述べることができ」ます(現行法第22条第3項)。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
そして、このような検察官関与に関する規定は、旧法にはありませんでした。
Ⅷ と、ここまで書いてきたところで、今日も時間がなくなってきて
しまいました。少年審判における保護処分を決定するための手続の続きに
ついては、明日ご説明します。
少年審判所における保護処分を決定するための手続をご説明します。
今日はいよいよ、少年審判所が保護処分を決定するまさにそのための手続である
審判についてご説明します。
Ⅰ 第1に、旧法第19条には「少年審判官ハ單獨」(たんどく)「ニテ
審判ヲ爲」(な)「ス」と規定されていました。つまり、旧法の下では、
審判は常に少年審判官単独で行われていました。
これに対して、現行法では、2000年までは裁判官単独で審判が
行われていました。
しかし、2000年改正以降は、「合議体で審判又は審理及び裁判をする旨の
決定を合議体でした事件」は裁判官の合議体で取り扱うこととされました
(裁判所法第31条の四第2項第1号)。この場合の合議体の裁判官の員数は、
「三人とし、そのうち一人を裁判長」とします(裁判所法第31条の四第3項)。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000059
Ⅱ 第2に、旧法第43条第1項には「審判期日ニハ少年審判官及書記
出席スヘシ」と規定されていました。これは当然です。現行の少年審判規則
第28条第1項にも、「審判の席には、裁判官及び裁判所書記官が、
列席する。」と規定されています。
Ⅲ 第3に、旧法第43条第2項には「少年保護司ハ審判期日ニ出席スルコトヲ
得」と規定されていました。でも、これを逆に言うと、旧法の下では
少年保護司は必ずしも審判期日に出席しなくてもよかったのです。
これに対して、少年審判規則第28条第2項には、「家庭裁判所調査官は、
裁判長の許可を得た場合を除き、審判の席に出席しなければならない。」と
規定されています。つまり現在では、家庭裁判所調査官は、
原則として審判の席に出席する義務があるのです。
Ⅳ 第4に、旧法第43条第3項には「審判期日ニハ本人、保護者及附添人ヲ
呼出」(よびだ)「スヘシ但シ實益」(じつえき)「ナシト認メタルトキハ
保護者ハ之ヲ呼出サザルコトヲ得」と規定されていました。つまり、゜へ
旧法の下では、少年審判官が「実益がない」と認めた場合には、
保護者を呼び出す必要がなかったのです。
これに対して、少年審判規則第25条第2項には「審判期日には、
少年及び保護者を呼び出さなければならない。」と規定されています。
つまり、現行法の下では、裁判官または裁判長は、たとえ「実益がない」
と認めたとしても、保護者を呼び出す義務を有しているのです。
また、少年審判規則第28条第3項によりますと「少年が審判期日に
出頭しないときは、審判を行うことができない。」とされています。
なお、旧法では附添人も呼出の対象とされていました。これに対して、
少年審判規則第28条第4項では、「付添人は、審判の席に出席することが
できる。」と規定され、同第5項では、「家庭裁判所は、審判期日を付添人に
通知しなければならない。」と規定されています。
Ⅴ 第5に、旧法第44条第1項では「少年保護司、保護者及附添人ハ審判ノ
席ニ於テ意見ヲ陳述スルコトヲ得」と規定されていました。一見すると
当然のことを規定しているようですが、本人が意見を陳述できるとは
規定されていません。
これに対して、少年審判規則第30条には「少年、保護者、付添人、
家庭裁判所調査官、保護観察官、保護司、法務技官及び法務教官は、
審判の席において、裁判長の許可を得て、
意見を述べることができる」と規定されています。つまり現在では、
少年も、裁判長の許可を得てですが、審判の席で意見を述べることが
できます。
なお、ここでの「保護司」は、旧法の「少年保護司」と
紛らわしいですが、「社会奉仕の精神をもつて、犯罪をした者の改善及び
更生を助けるとともに、犯罪の予防のため世論の啓発に努め、
もつて地域社会の浄化をはかり、個人及び公共の福祉に寄与することを、
その使命とする」人たちで、1)保護観察、「つまり犯罪や非行をした
人たちと定期的に面接を行い、更生を図るための約束事(遵守事項)を
守るよう指導するとともに、生活上の助言や就労の手助け等を行」い、
2)生活環境の調整、つまり少年院や刑務所に収容されている人が、
釈放後にスムーズに社会復帰できるよう、釈放後の帰住予定地の調査、
引受人との話合い等を行い、必要な受け入れ態勢を整え」ることを行い、
3)犯罪予防活動、つまり「犯罪や非行を未然に防ぐとともに、罪を犯した人の
更生について理解を深めるために、世論の啓発や地域社会の浄化に
努める」ことを行います。
https://www.kouseihogo-net.jp/hogoshi/about.html
また、「法務技官」とは、「法務省において技術を掌る官職の
官名(技官)で」す。「国家公務員総合職試験並びに法務省専門職員
(人間科学)採用試験で採用される矯正心理専門職の他、選考採用で
採用される医療従事者、作業専門官があ」ります。
このうち矯正心理専門職(法務技官(心理) )の職務内容は以下の通りです。
「少年鑑別所では、法務教官に併任され法務技官兼法務教官として
勤務」します。「入所した少年に対して面接や各種心理検査を行い、
知能や性格等の資質上の特徴、非行に至った原因、今後の処遇上の指針を
明らかに」します。「結果は、『鑑別結果通知書』として、家庭裁判所に
送付され(収容審判鑑別)、審判や少年院・保護観察所での指導・援助に
活用され」ます。また、家庭裁判所の審判決定により、少年院に送致された
少年や保護観察処分になった少年にも、専門的なアセスメント機能を活用して
継続的に関与(処遇鑑別)」します。「これらに加え、心理学に関する
専門的な知見を生かして、地域社会の非行・犯罪の防止に貢献するため、
一般の方や関係機関等からの依頼に応じ、相談・助言や心理検査等を
行っており、学校等の関係機関と連携した非行防止や青少年の
健全育成のための活動にも積極的に取り組んでいる(地域援助)。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B3%95%E5%8B%99%E6%8A%80%E5%AE%98
そして、「法務教官」は主として、少年院に送致された非行少年への
指導・支援を行います。
https://www.moj.go.jp/moj/KYOUSEI/SAIYO/houmukyoukan/houmukyoukan.html
Ⅵ 第6に、話を旧法に戻しますと、その第44条第2項には、少年保護司、
保護者及び附添人が審判の席で意見を陳述する場合には「本人ヲ
退席セシムヘシ但シ相當」(そうとう)「ノ事由アルトキハ本人ヲ
在席セシムルコトヲ得」と規定されていました。つまり、旧法の下では、
少年保護司、保護者及び附添人が審判の席で意見を陳述する場合には、
原則として本人を退席させなければならず、相当の事由があるときに
限って在席させることができたのです。
このような規定は現行少年法や少年審判規則にはありません。ただ、
少年審判規則には以下のような規定があります。
「第三十一条 裁判長は、適正な審判をするため必要があると認めるときは、
発言を制止し、又は少年以外の者を退席させる等相当の措置をとることが
できる。
2 裁判長は、少年の情操を害するものと認める状況が生じたときは、
その状況の継続中、少年を退席させることができる。」
つまり現在では、少年が退席させられることがありうるのは、
「少年の情操を害するものと認める状況が生じたとき」で、
「その状況の継続中」に限られています。
Ⅶ なお、現行法では、2000年の改正以降、家裁は、
犯罪少年に係る事件であって、「死刑又は無期若しくは長期三年を超える
懲役若しくは禁錮に当たる罪のものにおいて、その非行事実を認定するための
審判の手続に検察官が関与する必要があると認めるときは、決定をもつて、
審判に検察官を出席させることができ」ます(現行法第22条第1項)。
この決定があった事件において、検察官は、「その非行事実の認定に
資するため必要な限度で、最高裁判所規則の定めるところにより、
事件の記録及び証拠物を閲覧し及び謄写し、審判の手続
(事件を終局させる決定の告知を含む。)に立ち会い、
少年及び証人その他の関係人に発問し、
並びに意見を述べることができ」ます(現行法第22条第3項)。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
そして、このような検察官関与に関する規定は、旧法にはありませんでした。
Ⅷ と、ここまで書いてきたところで、今日も時間がなくなってきて
しまいました。少年審判における保護処分を決定するための手続の続きに
ついては、明日ご説明します。
昨日のブログに続き、今日も、
少年審判所における保護処分を決定するための手続をご説明します。
Ⅰ 旧法第42条には次のような規定がありました。
「第四十二條 少年審判所審判ヲ開始スル場合ニ於」(おい)「テ
必要アルトキハ本人ノタメ附添人ヲ附スルコトヲ得
本人、保護者又ハ保護團體」(だんたい)「ハ少年審判所ノ許可ヲ
受」(うけ)「テ附添人ヲ選任スルコトヲ得
附添人ハ辯護士」(べんごし)「、保護事業ニ従事スル者又ハ
少年審判所ノ許可ヲ受ケタル者ヲ以」(も)「テ之ニ充ツヘシ」
Ⅱ 第1に、旧法第42条第1項、つまり「少年審判所」から「附スルコトヲ得」
までの部分は、少年審判所の職権による国選附添人付与を定めています。この
国選附添人の対象となる事件は、「少年審判所が審判を開始する場合において
必要あるとき」と無制限です。ただし、第3項-つまり「附添人」から
「充ツヘシ」までの部分-の規定のため、この国選附添人は必ずしも
弁護士でなくても構わなかったのです。
これに対して、現行法では以下のような場合に弁護士である国選付添人の
選任を定めています。
1. 「死刑又は無期若しくは長期三年を超える懲役若しくは禁錮に当たる」
犯罪少年に係る事件で、「その非行事実を認定するための審判の手続に
検察官を関与させる必要がある」と判断し、審判に検察官を出席させる
決定をして、少年に弁護士である付添人がないとき(現行法第22条の3第1項・
第22条の2第1項)。なお、この場合、家裁は必ず弁護士である国選付添人を
付さなければなりません。
2.「死刑又は無期若しくは長期三年を超える懲役若しくは禁錮に当たる」
犯罪少年に係る事件または「死刑又は無期若しくは長期三年を超える懲役
若しくは禁錮に当たる罪」に係る触法少年事件に係る事件で、
少年法第17条第1項第2号の少年鑑別所に送致する観護措置がとられており、
「かつ、少年に弁護士である付添人がない場合において、事案の内容、
保護者の有無その他の事情を考慮し、審判の手続に弁護士である付添人が
関与する必要があると認めるとき」。この場合には、家裁は弁護士である
付添人を付することができます(現行法第22条の3第2項・第22条の2第1項)。
3.被害者等に少年審判の傍聴を許す(現行法第22条の4第1項)前提として、
家裁は弁護士である付添人の意見を聴かなければならない(現行法第22条の5
第1項)のですが、その場合少年に少年に弁護士である付添人がないとき
(現行法第22条の5第2項)。この場合、家裁は弁護士である付添人を
付さなければなりません(現行法第22条の5第2項)。しかし、
「最高裁判所規則の定めるところにより少年及び保護者がこれを
必要としない旨の意思を明示したとき」、つまり少年及び保護者が
「弁護士である付添人とその意見を聴く費用はない」とはっきりと
述べた場合には、弁護士である付添人を付す必要はありません。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
Ⅲ 第2に、話を旧法に戻しますと、その第42条第2項によりますと、
本人、保護者または保護団体は少年審判所の許可を受けて附添人を
選任することができました。
これに対して現行法第10条では、付添人について以下の通り定めています。
「(付添人)
第十条 少年及び保護者は、家庭裁判所の許可を受けて、付添人を
選任することができる。ただし、弁護士を付添人に選任するには、
家庭裁判所の許可を要しない。
2 保護者は、家庭裁判所の許可を受けて、付添人となることができる」
第10条第1項但し書き-つまり「ただし」から「要しない」の部分-を
ご覧になればお分かりの通り、現行法では弁護士を付添人に選任するために、
家裁の許可は必要ありません。これは旧法との大きな違いであり、
それだけ現行法は少年の権利を重視していると言えます。
また、第2項-つまり「保護者」から「できる」までの部分-を
ご覧になればお分かりの通り、現行法では、
家裁の許可を受ければの話ですが、保護者もまた付添人になることができます。
この点も、旧法との大きな違いです。
Ⅳ と、ここまで書いてきたところで、今日も時間がなくなってきて
しまいました。少年審判所における保護処分を決定するための手続の続きに
ついては、明日ご説明します。
少年審判所における保護処分を決定するための手続をご説明します。
Ⅰ 旧法第42条には次のような規定がありました。
「第四十二條 少年審判所審判ヲ開始スル場合ニ於」(おい)「テ
必要アルトキハ本人ノタメ附添人ヲ附スルコトヲ得
本人、保護者又ハ保護團體」(だんたい)「ハ少年審判所ノ許可ヲ
受」(うけ)「テ附添人ヲ選任スルコトヲ得
附添人ハ辯護士」(べんごし)「、保護事業ニ従事スル者又ハ
少年審判所ノ許可ヲ受ケタル者ヲ以」(も)「テ之ニ充ツヘシ」
Ⅱ 第1に、旧法第42条第1項、つまり「少年審判所」から「附スルコトヲ得」
までの部分は、少年審判所の職権による国選附添人付与を定めています。この
国選附添人の対象となる事件は、「少年審判所が審判を開始する場合において
必要あるとき」と無制限です。ただし、第3項-つまり「附添人」から
「充ツヘシ」までの部分-の規定のため、この国選附添人は必ずしも
弁護士でなくても構わなかったのです。
これに対して、現行法では以下のような場合に弁護士である国選付添人の
選任を定めています。
1. 「死刑又は無期若しくは長期三年を超える懲役若しくは禁錮に当たる」
犯罪少年に係る事件で、「その非行事実を認定するための審判の手続に
検察官を関与させる必要がある」と判断し、審判に検察官を出席させる
決定をして、少年に弁護士である付添人がないとき(現行法第22条の3第1項・
第22条の2第1項)。なお、この場合、家裁は必ず弁護士である国選付添人を
付さなければなりません。
2.「死刑又は無期若しくは長期三年を超える懲役若しくは禁錮に当たる」
犯罪少年に係る事件または「死刑又は無期若しくは長期三年を超える懲役
若しくは禁錮に当たる罪」に係る触法少年事件に係る事件で、
少年法第17条第1項第2号の少年鑑別所に送致する観護措置がとられており、
「かつ、少年に弁護士である付添人がない場合において、事案の内容、
保護者の有無その他の事情を考慮し、審判の手続に弁護士である付添人が
関与する必要があると認めるとき」。この場合には、家裁は弁護士である
付添人を付することができます(現行法第22条の3第2項・第22条の2第1項)。
3.被害者等に少年審判の傍聴を許す(現行法第22条の4第1項)前提として、
家裁は弁護士である付添人の意見を聴かなければならない(現行法第22条の5
第1項)のですが、その場合少年に少年に弁護士である付添人がないとき
(現行法第22条の5第2項)。この場合、家裁は弁護士である付添人を
付さなければなりません(現行法第22条の5第2項)。しかし、
「最高裁判所規則の定めるところにより少年及び保護者がこれを
必要としない旨の意思を明示したとき」、つまり少年及び保護者が
「弁護士である付添人とその意見を聴く費用はない」とはっきりと
述べた場合には、弁護士である付添人を付す必要はありません。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
Ⅲ 第2に、話を旧法に戻しますと、その第42条第2項によりますと、
本人、保護者または保護団体は少年審判所の許可を受けて附添人を
選任することができました。
これに対して現行法第10条では、付添人について以下の通り定めています。
「(付添人)
第十条 少年及び保護者は、家庭裁判所の許可を受けて、付添人を
選任することができる。ただし、弁護士を付添人に選任するには、
家庭裁判所の許可を要しない。
2 保護者は、家庭裁判所の許可を受けて、付添人となることができる」
第10条第1項但し書き-つまり「ただし」から「要しない」の部分-を
ご覧になればお分かりの通り、現行法では弁護士を付添人に選任するために、
家裁の許可は必要ありません。これは旧法との大きな違いであり、
それだけ現行法は少年の権利を重視していると言えます。
また、第2項-つまり「保護者」から「できる」までの部分-を
ご覧になればお分かりの通り、現行法では、
家裁の許可を受ければの話ですが、保護者もまた付添人になることができます。
この点も、旧法との大きな違いです。
Ⅳ と、ここまで書いてきたところで、今日も時間がなくなってきて
しまいました。少年審判所における保護処分を決定するための手続の続きに
ついては、明日ご説明します。
昨日のブログに続き、今日も、
少年審判所における保護処分を決定するための手続をご説明します。
Ⅰ 第1に、旧法第40条には以下のような規定がありました。
「第四十條 少年審判所調査ノ結果ニ因」(よ)「リ審判ヲ開始スヘキモノト
思料」(しりょ)「シタルトキハ審判期日ヲ定ムヘシ」
現行法第21条にも以下のような類似の規定があります。
「(審判開始の決定)
第二十一条 家庭裁判所は、調査の結果、審判を開始するのが相当であると
認めるときは、その旨の決定をしなければならない。」
ただし、旧法と違って現行法では、家裁は審判開始決定をする際に
審判期日を定めることを義務づけられてはいません。
Ⅱ 第2に、旧法第41条には以下のような規定がありました。
「第四十一條 審判ヲ開始セサル場合ニ於」(おい)「テハ第三十七條ノ
處分」(しょぶん)「ハコレヲ取消スヘシ
第三十九條ノ規定ハ前項ノ場合ニコレヲ準用ス」
まず、第1項(「審判ヲ」から(「取消スヘシ」までの箇所)における
「第三十七條ノ處分」とは昨日ご紹介した「仮の保護処分」のことでして、
以下のような内容です。
「一 條件ヲ附シ又ハ附セスシテ保護者ニ預クルコト
二 寺院、教會、保護團體」(だんたい)「又は適當ナル者ニ
預クルコト
三 病院ニ委託スルコト
四 少年保護司ノ観察ニ付スルコト
已」(や)「ムコトヲ得サル場合ニ於」(おい)「テハ本人ヲ
假」(かり)ニ感化院又ハ矯正院ニ委託スルコト゜
第一項第一號」(ごう)」「乃至」(ないし)「第三號ノ處分アリタルトキハ
本人ヲ少年保護司ノ観察ニ付ス」こと。
次に第2項の「第三十九條ノ規定ハ前項ノ場合ニコレヲ準用ス」とは、
「審判を開始しないため仮の保護処分を取消す場合には、そのことを
速やかに保護者に通知しなければならない」という意味です。
(なお、「準用」とは、「ある事柄を規律するためにつくられた法規を,
それと性質を異にする別の事柄に対して,必要な若干の修正を加えて
あてはめること」です。
https://kotobank.jp/word/%E6%BA%96%E7%94%A8-78720
また、第三十九條とは、次のような規定です。
「第三十九條 前三條ノ場合ニ於テハ速」(すみやか)「ニ其」(そ)
「ノ旨」(むね)ヲ保護者ニ通知スヘシ」
つまり、旧第39条は、「少年審判所が少年保護司をして本人を同行させたり、
仮の保護処分に付したり、仮の保護処分を取消しまたは変更する際には、
速やかにそのことを保護者に通知すべきである」という意味です。)
Ⅲ と、ここまで書いたところで今日は時間がなくなってきてしまいました。
少年審判所における保護処分を決定するための手続の続きについては、
明日ご説明します。
少年審判所における保護処分を決定するための手続をご説明します。
Ⅰ 第1に、旧法第40条には以下のような規定がありました。
「第四十條 少年審判所調査ノ結果ニ因」(よ)「リ審判ヲ開始スヘキモノト
思料」(しりょ)「シタルトキハ審判期日ヲ定ムヘシ」
現行法第21条にも以下のような類似の規定があります。
「(審判開始の決定)
第二十一条 家庭裁判所は、調査の結果、審判を開始するのが相当であると
認めるときは、その旨の決定をしなければならない。」
ただし、旧法と違って現行法では、家裁は審判開始決定をする際に
審判期日を定めることを義務づけられてはいません。
Ⅱ 第2に、旧法第41条には以下のような規定がありました。
「第四十一條 審判ヲ開始セサル場合ニ於」(おい)「テハ第三十七條ノ
處分」(しょぶん)「ハコレヲ取消スヘシ
第三十九條ノ規定ハ前項ノ場合ニコレヲ準用ス」
まず、第1項(「審判ヲ」から(「取消スヘシ」までの箇所)における
「第三十七條ノ處分」とは昨日ご紹介した「仮の保護処分」のことでして、
以下のような内容です。
「一 條件ヲ附シ又ハ附セスシテ保護者ニ預クルコト
二 寺院、教會、保護團體」(だんたい)「又は適當ナル者ニ
預クルコト
三 病院ニ委託スルコト
四 少年保護司ノ観察ニ付スルコト
已」(や)「ムコトヲ得サル場合ニ於」(おい)「テハ本人ヲ
假」(かり)ニ感化院又ハ矯正院ニ委託スルコト゜
第一項第一號」(ごう)」「乃至」(ないし)「第三號ノ處分アリタルトキハ
本人ヲ少年保護司ノ観察ニ付ス」こと。
次に第2項の「第三十九條ノ規定ハ前項ノ場合ニコレヲ準用ス」とは、
「審判を開始しないため仮の保護処分を取消す場合には、そのことを
速やかに保護者に通知しなければならない」という意味です。
(なお、「準用」とは、「ある事柄を規律するためにつくられた法規を,
それと性質を異にする別の事柄に対して,必要な若干の修正を加えて
あてはめること」です。
https://kotobank.jp/word/%E6%BA%96%E7%94%A8-78720
また、第三十九條とは、次のような規定です。
「第三十九條 前三條ノ場合ニ於テハ速」(すみやか)「ニ其」(そ)
「ノ旨」(むね)ヲ保護者ニ通知スヘシ」
つまり、旧第39条は、「少年審判所が少年保護司をして本人を同行させたり、
仮の保護処分に付したり、仮の保護処分を取消しまたは変更する際には、
速やかにそのことを保護者に通知すべきである」という意味です。)
Ⅲ と、ここまで書いたところで今日は時間がなくなってきてしまいました。
少年審判所における保護処分を決定するための手続の続きについては、
明日ご説明します。
昨日のブログに続き、今日も、
少年審判所における保護処分を決定するための手続をご説明します。
Ⅰ 第1に、旧法の第36条には次のような規定がありました。
「第三十六條 少年審判所ハ必要ニ依リ何時ニテモ少年保護司ヲシテ本人ヲ
同行シセシムルコトヲ得」
これと似た規定は、以下に引用する現行法の第11条から第13条までに
あります。
「(呼出、同行)
第十一条 家庭裁判所は、事件の調査又は審判について必要があると
認めるときは、少年又は保護者に対して、呼出状を発することができる。
2 家庭裁判所は、正当の理由がなく前項の呼出に応じない者に対して、
同行状を発することができる。
(緊急の場合の同行)
第十二条 家庭裁判所は、少年が保護のため緊急を要する状態にあつて、
その福祉上必要であると認めるときは、前条第二項の規定にかかわらず、
その少年に対して、同行状を発することができる。
2 裁判長は、急速を要する場合には、前項の処分をし、
又は合議体の構成員にこれをさせることができる。
(同行状の執行)
第十三条 同行状は、家庭裁判所調査官がこれを執行する。
2 家庭裁判所は、警察官、保護観察官又は裁判所書記官をして、
同行状を執行させることができる。
3 裁判長は、急速を要する場合には、前項の処分をし、又は合議体の
構成員にこれをさせることができる。」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
ただし、現行法は、同行状を発する前に呼出状を発することを
家裁に義務づけています。
Ⅱ 第2に、旧法の第37条から第39条までには以下のような規定がありました。
「第三十七條 少年審判所ハ事情ニ従ヒ本人ニ對」(たい)「シ假」(かり)ニ
左」(さ)「ノ處分」(しょぶん)「ヲ爲スコトヲ得
一 條件ヲ附シ又ハ附セスシテ保護者ニ預クルコト
二 寺院、教會、保護團體」(だんたい)「又は適當ナル者ニ
預クルコト
三 病院ニ委託スルコト
四 少年保護司ノ観察ニ付スルコト
已」(や)「ムコトヲ得サル場合ニ於」(おい)「テハ本人ヲ
假」(かり)ニ感化院又ハ矯正院ニ委託スルコトヲ得
第一項第一號」(ごう)」「乃至」(ないし)「第三號ノ處分アリタルトキハ
本人ヲ少年保護司ノ観察ニ付ス
第三十八條 前條ノ處分ハ何時ニテモ之ヲ取消シ又ハ變更」(へんこう)
「 スルコトヲ得
第三十九條 前三條ノ場合ニ於テハ速」(すみやか)「ニ其」(そ)
「ノ旨」(むね)ヲ保護者ニ通知スヘシ」
現行法には、このような「仮の保護処分」に関する規定はありません。
ですが、旧法第37条第1項の第一号(一の箇所)から第四号(四の箇所)
および第3項(「第一項」から「付す」の箇所)に似ている現行法の規定として、
次のような第25条の規定があります。
「第二十五条 家庭裁判所は、第二十四条第一項の保護処分を決定するため
必要があると認めるときは、決定をもつて、相当の期間、家庭裁判所調査官の
観察に付することができる。
2 家庭裁判所は、前項の観察とあわせて、次に掲げる措置をとることが
できる。
一 遵守事項を定めてその履行を命ずること。
二 条件を附けて保護者に引き渡すこと。
三 適当な施設、団体又は個人に補導を委託すること。」
そして、現行法そのものには規定がないのですが、少年審判規則
第40条第6項には、現行法第25条の「家庭裁判所調査官の観察に付する
決定は、いつでも、取り消し又は変更することができる。」と規定されて
います。
https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file2/20150601syounenshinpankisoku.pdf
Ⅲ また、現行法では少年を仮に児童自立支援施設や少年院に委託すること
が認められていないのは、以下のような観護措置に関する規定があるからです。
「(観護の措置)
第十七条 家庭裁判所は、審判を行うため必要があるときは、決定をもつて、
次に掲げる観護の措置をとることができる。
一 家庭裁判所調査官の観護に付すること。
二 少年鑑別所に送致すること。
2 同行された少年については、観護の措置は、遅くとも、到着のときから
二十四時間以内に、これを行わなければならない。検察官又は司法警察員から
勾留又は逮捕された少年の送致を受けたときも、同様である。
3 第一項第二号の措置においては、少年鑑別所に収容する期間は、二週間を
超えることができない。ただし、特に継続の必要があるときは、
決定をもつて、これを更新することができる。
4 前項ただし書の規定による更新は、一回を超えて行うことができない。
ただし、第三条第一項第一号に掲げる少年に係る死刑、懲役又は禁錮こに
当たる罪の事件でその非行事実(犯行の動機、態様及び結果その他の当該
犯罪に密接に関連する重要な事実を含む。以下同じ。)の認定に関し
証人尋問、鑑定若しくは検証を行うことを決定したもの又はこれを
行つたものについて、少年を収容しなければ審判に著しい支障が生じる
おそれがあると認めるに足りる相当の理由がある場合には、その更新は、
更に二回を限度として、行うことができる。
5 第三項ただし書の規定にかかわらず、検察官から再び送致を受けた事件が
先に第一項第二号の措置がとられ、又は勾留状が発せられた事件であるときは、収容の期間は、これを更新することができない。
6 裁判官が第四十三条第一項の請求により、第一項第一号の措置をとつた
場合において、事件が家庭裁判所に送致されたときは、その措置は、
これを第一項第一号の措置とみなす。
7 裁判官が第四十三条第一項の請求により第一項第二号の措置をとつた
場合において、事件が家庭裁判所に送致されたときは、その措置は、これを
第一項第二号の措置とみなす。この場合には、第三項の期間は、家庭裁判所が
事件の送致を受けた日から、これを起算する。
8 観護の措置は、決定をもつて、これを取り消し、又は変更することが
できる。
9 第一項第二号の措置については、収容の期間は、通じて八週間を超える
ことができない。ただし、その収容の期間が通じて四週間を超えることとなる
決定を行うときは、第四項ただし書に規定する事由がなければならない。
10 裁判長は、急速を要する場合には、第一項及び第八項の処分をし、
又は合議体の構成員にこれをさせることができる。
(異議の申立て)
第十七条の二 少年、その法定代理人又は付添人は、前条第一項第二号又は
第三項ただし書の決定に対して、保護事件の係属する家庭裁判所に異議の
申立てをすることができる。ただし、付添人は、選任者である保護者の
明示した意思に反して、異議の申立てをすることができない。
2 前項の異議の申立ては、審判に付すべき事由がないことを理由としてする
ことはできない。
3 第一項の異議の申立てについては、家庭裁判所は、合議体で決定を
しなければならない。この場合において、その決定には、原決定に関与した
裁判官は、関与することができない。
4 第三十二条の三、第三十三条及び第三十四条の規定は、第一項の異議の
申立てがあつた場合について準用する。この場合において、第三十三条第二項
中「取り消して、事件を原裁判所に差し戻し、又は他の家庭裁判所に
移送しなければならない」とあるのは、「取り消し、必要があるときは、
更に裁判をしなければならない」と読み替えるものとする。
(特別抗告)
第十七条の三 第三十五条第一項の規定は、前条第三項の決定について
準用する。この場合において、第三十五条第一項中「二週間」とあるのは、
「五日」と読み替えるものとする。
2 前条第四項及び第三十二条の二の規定は、前項の規定による抗告があつた
場合について準用する。
(少年鑑別所送致の場合の仮収容)
第十七条の四 家庭裁判所は、第十七条第一項第二号の措置をとつた場合に
おいて、直ちに少年鑑別所に収容することが著しく困難であると認める事情が
あるときは、決定をもつて、少年を仮に最寄りの少年院又は刑事施設の特
に区別した場所に収容することができる。ただし、その期間は、
収容した時から七十二時間を超えることができない。
2 裁判長は、急速を要する場合には、前項の処分をし、
又は合議体の構成員にこれをさせることができる。
3 第一項の規定による収容の期間は、これを第十七条第一項第二号の措置に
より少年鑑別所に収容した期間とみなし、同条第三項の期間は、少年院又は
刑事施設に収容した日から、これを起算する。
4 裁判官が第四十三条第一項の請求のあつた事件につき、
第一項の収容をした場合において、事件が家庭裁判所に送致されたときは、
その収容は、これを第一項の規定による収容とみなす。」
Ⅳ と、ここまで書いたところで、今日は時間がなくなってきてしまいました。
少年審判所において保護処分を決定する手続の続きについては、
明日ご説明します。
少年審判所における保護処分を決定するための手続をご説明します。
Ⅰ 第1に、旧法の第36条には次のような規定がありました。
「第三十六條 少年審判所ハ必要ニ依リ何時ニテモ少年保護司ヲシテ本人ヲ
同行シセシムルコトヲ得」
これと似た規定は、以下に引用する現行法の第11条から第13条までに
あります。
「(呼出、同行)
第十一条 家庭裁判所は、事件の調査又は審判について必要があると
認めるときは、少年又は保護者に対して、呼出状を発することができる。
2 家庭裁判所は、正当の理由がなく前項の呼出に応じない者に対して、
同行状を発することができる。
(緊急の場合の同行)
第十二条 家庭裁判所は、少年が保護のため緊急を要する状態にあつて、
その福祉上必要であると認めるときは、前条第二項の規定にかかわらず、
その少年に対して、同行状を発することができる。
2 裁判長は、急速を要する場合には、前項の処分をし、
又は合議体の構成員にこれをさせることができる。
(同行状の執行)
第十三条 同行状は、家庭裁判所調査官がこれを執行する。
2 家庭裁判所は、警察官、保護観察官又は裁判所書記官をして、
同行状を執行させることができる。
3 裁判長は、急速を要する場合には、前項の処分をし、又は合議体の
構成員にこれをさせることができる。」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
ただし、現行法は、同行状を発する前に呼出状を発することを
家裁に義務づけています。
Ⅱ 第2に、旧法の第37条から第39条までには以下のような規定がありました。
「第三十七條 少年審判所ハ事情ニ従ヒ本人ニ對」(たい)「シ假」(かり)ニ
左」(さ)「ノ處分」(しょぶん)「ヲ爲スコトヲ得
一 條件ヲ附シ又ハ附セスシテ保護者ニ預クルコト
二 寺院、教會、保護團體」(だんたい)「又は適當ナル者ニ
預クルコト
三 病院ニ委託スルコト
四 少年保護司ノ観察ニ付スルコト
已」(や)「ムコトヲ得サル場合ニ於」(おい)「テハ本人ヲ
假」(かり)ニ感化院又ハ矯正院ニ委託スルコトヲ得
第一項第一號」(ごう)」「乃至」(ないし)「第三號ノ處分アリタルトキハ
本人ヲ少年保護司ノ観察ニ付ス
第三十八條 前條ノ處分ハ何時ニテモ之ヲ取消シ又ハ變更」(へんこう)
「 スルコトヲ得
第三十九條 前三條ノ場合ニ於テハ速」(すみやか)「ニ其」(そ)
「ノ旨」(むね)ヲ保護者ニ通知スヘシ」
現行法には、このような「仮の保護処分」に関する規定はありません。
ですが、旧法第37条第1項の第一号(一の箇所)から第四号(四の箇所)
および第3項(「第一項」から「付す」の箇所)に似ている現行法の規定として、
次のような第25条の規定があります。
「第二十五条 家庭裁判所は、第二十四条第一項の保護処分を決定するため
必要があると認めるときは、決定をもつて、相当の期間、家庭裁判所調査官の
観察に付することができる。
2 家庭裁判所は、前項の観察とあわせて、次に掲げる措置をとることが
できる。
一 遵守事項を定めてその履行を命ずること。
二 条件を附けて保護者に引き渡すこと。
三 適当な施設、団体又は個人に補導を委託すること。」
そして、現行法そのものには規定がないのですが、少年審判規則
第40条第6項には、現行法第25条の「家庭裁判所調査官の観察に付する
決定は、いつでも、取り消し又は変更することができる。」と規定されて
います。
https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file2/20150601syounenshinpankisoku.pdf
Ⅲ また、現行法では少年を仮に児童自立支援施設や少年院に委託すること
が認められていないのは、以下のような観護措置に関する規定があるからです。
「(観護の措置)
第十七条 家庭裁判所は、審判を行うため必要があるときは、決定をもつて、
次に掲げる観護の措置をとることができる。
一 家庭裁判所調査官の観護に付すること。
二 少年鑑別所に送致すること。
2 同行された少年については、観護の措置は、遅くとも、到着のときから
二十四時間以内に、これを行わなければならない。検察官又は司法警察員から
勾留又は逮捕された少年の送致を受けたときも、同様である。
3 第一項第二号の措置においては、少年鑑別所に収容する期間は、二週間を
超えることができない。ただし、特に継続の必要があるときは、
決定をもつて、これを更新することができる。
4 前項ただし書の規定による更新は、一回を超えて行うことができない。
ただし、第三条第一項第一号に掲げる少年に係る死刑、懲役又は禁錮こに
当たる罪の事件でその非行事実(犯行の動機、態様及び結果その他の当該
犯罪に密接に関連する重要な事実を含む。以下同じ。)の認定に関し
証人尋問、鑑定若しくは検証を行うことを決定したもの又はこれを
行つたものについて、少年を収容しなければ審判に著しい支障が生じる
おそれがあると認めるに足りる相当の理由がある場合には、その更新は、
更に二回を限度として、行うことができる。
5 第三項ただし書の規定にかかわらず、検察官から再び送致を受けた事件が
先に第一項第二号の措置がとられ、又は勾留状が発せられた事件であるときは、収容の期間は、これを更新することができない。
6 裁判官が第四十三条第一項の請求により、第一項第一号の措置をとつた
場合において、事件が家庭裁判所に送致されたときは、その措置は、
これを第一項第一号の措置とみなす。
7 裁判官が第四十三条第一項の請求により第一項第二号の措置をとつた
場合において、事件が家庭裁判所に送致されたときは、その措置は、これを
第一項第二号の措置とみなす。この場合には、第三項の期間は、家庭裁判所が
事件の送致を受けた日から、これを起算する。
8 観護の措置は、決定をもつて、これを取り消し、又は変更することが
できる。
9 第一項第二号の措置については、収容の期間は、通じて八週間を超える
ことができない。ただし、その収容の期間が通じて四週間を超えることとなる
決定を行うときは、第四項ただし書に規定する事由がなければならない。
10 裁判長は、急速を要する場合には、第一項及び第八項の処分をし、
又は合議体の構成員にこれをさせることができる。
(異議の申立て)
第十七条の二 少年、その法定代理人又は付添人は、前条第一項第二号又は
第三項ただし書の決定に対して、保護事件の係属する家庭裁判所に異議の
申立てをすることができる。ただし、付添人は、選任者である保護者の
明示した意思に反して、異議の申立てをすることができない。
2 前項の異議の申立ては、審判に付すべき事由がないことを理由としてする
ことはできない。
3 第一項の異議の申立てについては、家庭裁判所は、合議体で決定を
しなければならない。この場合において、その決定には、原決定に関与した
裁判官は、関与することができない。
4 第三十二条の三、第三十三条及び第三十四条の規定は、第一項の異議の
申立てがあつた場合について準用する。この場合において、第三十三条第二項
中「取り消して、事件を原裁判所に差し戻し、又は他の家庭裁判所に
移送しなければならない」とあるのは、「取り消し、必要があるときは、
更に裁判をしなければならない」と読み替えるものとする。
(特別抗告)
第十七条の三 第三十五条第一項の規定は、前条第三項の決定について
準用する。この場合において、第三十五条第一項中「二週間」とあるのは、
「五日」と読み替えるものとする。
2 前条第四項及び第三十二条の二の規定は、前項の規定による抗告があつた
場合について準用する。
(少年鑑別所送致の場合の仮収容)
第十七条の四 家庭裁判所は、第十七条第一項第二号の措置をとつた場合に
おいて、直ちに少年鑑別所に収容することが著しく困難であると認める事情が
あるときは、決定をもつて、少年を仮に最寄りの少年院又は刑事施設の特
に区別した場所に収容することができる。ただし、その期間は、
収容した時から七十二時間を超えることができない。
2 裁判長は、急速を要する場合には、前項の処分をし、
又は合議体の構成員にこれをさせることができる。
3 第一項の規定による収容の期間は、これを第十七条第一項第二号の措置に
より少年鑑別所に収容した期間とみなし、同条第三項の期間は、少年院又は
刑事施設に収容した日から、これを起算する。
4 裁判官が第四十三条第一項の請求のあつた事件につき、
第一項の収容をした場合において、事件が家庭裁判所に送致されたときは、
その収容は、これを第一項の規定による収容とみなす。」
Ⅳ と、ここまで書いたところで、今日は時間がなくなってきてしまいました。
少年審判所において保護処分を決定する手続の続きについては、
明日ご説明します。
昨日のブログに続き、今日も、
少年審判所における保護処分を決定するための手続をご説明します。
Ⅰ 旧法の第31条、第32条及び第34条には次のような規定がありました。
「第三十一條 少年審判所ノ審判ニ付スヘキ少年アリト
思料」(しりょ)「シタルトキハ事件ノ關係」(かんけい)
「及本人ノ性行、境遇、經歴、」(けいれき)「心身ノ状況、
教育ノ程度等ヲ調査スヘシ
心身ノ状況ニ付」(つい)「テハ成ルヘク醫師」(いし)「ヲシテ
診察ヲ爲サシムヘシ
第三十二條 少年審判所ハ少年保護司ニ命シテ必要ナル調査ヲ
爲サシムルベシ」
「第三十四條 少年審判所ハ參考人」(さんこうにん)「ニ出頭ヲ命シ
調査ノ爲」(ため)「必要ナル事實」(じじつ)「ノ供述又ハ鑑定ヲ
爲サシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ必要ト認メタルトキハ供述又ハ鑑定ノ要領ヲ
録取スヘシ」
なお、旧法第31条第1項で用いられている「思料」という言葉は、
「思いはかること、考えること」という意味↓です。
https://word-dictionary.jp/posts/4090
Ⅱ 旧法の第31条と第32条に類似した規定は、現行法や少年審判規則にも
存在します。
第1に、現行法の第8条と第9条には以下のような規定があります。
「(事件の調査)
第八条 家庭裁判所は、第六条第一項の通告又は前条第一項の報告により、
審判に付すべき少年があると思料するときは、事件について調査しなければ
ならない。検察官、司法警察員、警察官、都道府県知事又は児童相談所長から
家庭裁判所の審判に付すべき少年事件の送致を受けたときも、同様とする。
2 家庭裁判所は、家庭裁判所調査官に命じて、少年、保護者又は参考人の
取調その他の必要な調査を行わせることができる。
(調査の方針)
第九条 前条の調査は、なるべく、少年、保護者又は関係人の行状、経歴、
素質、環境等について、医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的智識
特に少年鑑別所の鑑別の結果を活用して、これを行うように努めなければ
ならない。」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
第2に、このような少年法第9条の規定を受けて、少年審判規則第11条から
第13条までには、以下のような規定が存在します。
「(調査の方針・法第九条)
第十一条 審判に付すべき少年については、家庭及び保護者の関係、境遇、
経歴、教育の程度及び状況、不良化の経過、性行、事件の関係、心身の状況等
審判及び処遇上必要な事項の調査を行うものとする。
2 家族及び関係人の経歴、教育の程度、性行及び遺伝関係等についても、
できる限り、調査を行うものとする。
3 少年を少年鑑別所に送致するときは、少年鑑別所に対し、なるべく、
鑑別上及び観護処遇上の注意その他参考となる事項を示さなければならない。
(陳述録取調書の作成)
第十二条 少年、保護者又は参考人の陳述が事件の審判上必要であると
認めるときは、これを調書に記載させ、又は記載しなければならない。
2 前項の調書には、陳述者をして署名押印させなければならない。
3 家庭裁判所調査官は、第一項の場合において相当と認めるときは、少年、
保護者又は参考人の陳述の要旨を記載した書面を作成し、これを同項の
調書に代えることができる。
(家庭裁判所調査官の調査報告・法第八条)
第十三条 家庭裁判所調査官は、調査の結果を書面で家庭裁判所に報告する
ものとする。
2 前項の書面には、意見をつけなければならない。
3 家庭裁判所調査官は、第一項の規定による報告の前後を問わず、
少年の処遇に関し、家庭裁判所に対して意見を述べなければならない。」
Ⅲ ただ、これらの現行法の調査に関する規定と旧法のそれを比較すると、
二つの大きな違いがあります。
第一の違いは、現行法第9条にある「医学、心理学、教育学、社会学
その他の専門的智識…を活用して」という言葉が、旧法には存在しないという
ことです。つまり、現行法の調査の方が旧法より科学的なのです。
第二の違いは、現行法には存在する「少年鑑別所の鑑別の結果」という
言葉が、旧法には存在しないことです。実は、少年鑑別所は、現行少年法の
制定に合わせて新設されたのです。
そして、少年鑑別所がどのように鑑別を行うべきかについては、
少年鑑別所法第16条に以下のように規定されています。
「(鑑別の実施)
第十六条 鑑別対象者の鑑別においては、医学、心理学、教育学、社会学
その他の専門的知識及び技術に基づき、鑑別対象者について、その非行又は
犯罪に影響を及ぼした資質上及び環境上問題となる事情を明らかにした上、
その事情の改善に寄与するため、その者の処遇に資する適切な指針を示す
ものとする。
2 鑑別対象者の鑑別を行うに当たっては、その者の性格、経歴、心身の状況
及び発達の程度、非行の状況、家庭環境並びに交友関係、在所中の生活及び
行動の状況(鑑別対象者が在所者である場合に限る。)その他の鑑別を行う
ために必要な事項に関する調査を行うものとする。
3 前項の調査は、鑑別を求めた者に対して資料の提出、説明その他の必要な
協力を求める方法によるほか、必要と認めるときは、鑑別対象者又はその
保護者その他参考人との面接、心理検査その他の検査、前条の規定による
照会その他相当と認める方法により行うものとする。」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=426AC0000000059
つまり、少年鑑別所による鑑別も、非常に科学的なものなのです。
これらの二点を併せて考えますと、現行少年法の下で行われる調査の
方が、旧法において行われていたものよりずっと、科学的であると言えます。
Ⅳ と、ここまでご説明したところで、今日も時間がなくなってきて
しまいました。したがって、旧少年法の下における保護処分を
決定するための手続の続きについては、明日ご説明することとします。
少年審判所における保護処分を決定するための手続をご説明します。
Ⅰ 旧法の第31条、第32条及び第34条には次のような規定がありました。
「第三十一條 少年審判所ノ審判ニ付スヘキ少年アリト
思料」(しりょ)「シタルトキハ事件ノ關係」(かんけい)
「及本人ノ性行、境遇、經歴、」(けいれき)「心身ノ状況、
教育ノ程度等ヲ調査スヘシ
心身ノ状況ニ付」(つい)「テハ成ルヘク醫師」(いし)「ヲシテ
診察ヲ爲サシムヘシ
第三十二條 少年審判所ハ少年保護司ニ命シテ必要ナル調査ヲ
爲サシムルベシ」
「第三十四條 少年審判所ハ參考人」(さんこうにん)「ニ出頭ヲ命シ
調査ノ爲」(ため)「必要ナル事實」(じじつ)「ノ供述又ハ鑑定ヲ
爲サシムルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ必要ト認メタルトキハ供述又ハ鑑定ノ要領ヲ
録取スヘシ」
なお、旧法第31条第1項で用いられている「思料」という言葉は、
「思いはかること、考えること」という意味↓です。
https://word-dictionary.jp/posts/4090
Ⅱ 旧法の第31条と第32条に類似した規定は、現行法や少年審判規則にも
存在します。
第1に、現行法の第8条と第9条には以下のような規定があります。
「(事件の調査)
第八条 家庭裁判所は、第六条第一項の通告又は前条第一項の報告により、
審判に付すべき少年があると思料するときは、事件について調査しなければ
ならない。検察官、司法警察員、警察官、都道府県知事又は児童相談所長から
家庭裁判所の審判に付すべき少年事件の送致を受けたときも、同様とする。
2 家庭裁判所は、家庭裁判所調査官に命じて、少年、保護者又は参考人の
取調その他の必要な調査を行わせることができる。
(調査の方針)
第九条 前条の調査は、なるべく、少年、保護者又は関係人の行状、経歴、
素質、環境等について、医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的智識
特に少年鑑別所の鑑別の結果を活用して、これを行うように努めなければ
ならない。」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
第2に、このような少年法第9条の規定を受けて、少年審判規則第11条から
第13条までには、以下のような規定が存在します。
「(調査の方針・法第九条)
第十一条 審判に付すべき少年については、家庭及び保護者の関係、境遇、
経歴、教育の程度及び状況、不良化の経過、性行、事件の関係、心身の状況等
審判及び処遇上必要な事項の調査を行うものとする。
2 家族及び関係人の経歴、教育の程度、性行及び遺伝関係等についても、
できる限り、調査を行うものとする。
3 少年を少年鑑別所に送致するときは、少年鑑別所に対し、なるべく、
鑑別上及び観護処遇上の注意その他参考となる事項を示さなければならない。
(陳述録取調書の作成)
第十二条 少年、保護者又は参考人の陳述が事件の審判上必要であると
認めるときは、これを調書に記載させ、又は記載しなければならない。
2 前項の調書には、陳述者をして署名押印させなければならない。
3 家庭裁判所調査官は、第一項の場合において相当と認めるときは、少年、
保護者又は参考人の陳述の要旨を記載した書面を作成し、これを同項の
調書に代えることができる。
(家庭裁判所調査官の調査報告・法第八条)
第十三条 家庭裁判所調査官は、調査の結果を書面で家庭裁判所に報告する
ものとする。
2 前項の書面には、意見をつけなければならない。
3 家庭裁判所調査官は、第一項の規定による報告の前後を問わず、
少年の処遇に関し、家庭裁判所に対して意見を述べなければならない。」
Ⅲ ただ、これらの現行法の調査に関する規定と旧法のそれを比較すると、
二つの大きな違いがあります。
第一の違いは、現行法第9条にある「医学、心理学、教育学、社会学
その他の専門的智識…を活用して」という言葉が、旧法には存在しないという
ことです。つまり、現行法の調査の方が旧法より科学的なのです。
第二の違いは、現行法には存在する「少年鑑別所の鑑別の結果」という
言葉が、旧法には存在しないことです。実は、少年鑑別所は、現行少年法の
制定に合わせて新設されたのです。
そして、少年鑑別所がどのように鑑別を行うべきかについては、
少年鑑別所法第16条に以下のように規定されています。
「(鑑別の実施)
第十六条 鑑別対象者の鑑別においては、医学、心理学、教育学、社会学
その他の専門的知識及び技術に基づき、鑑別対象者について、その非行又は
犯罪に影響を及ぼした資質上及び環境上問題となる事情を明らかにした上、
その事情の改善に寄与するため、その者の処遇に資する適切な指針を示す
ものとする。
2 鑑別対象者の鑑別を行うに当たっては、その者の性格、経歴、心身の状況
及び発達の程度、非行の状況、家庭環境並びに交友関係、在所中の生活及び
行動の状況(鑑別対象者が在所者である場合に限る。)その他の鑑別を行う
ために必要な事項に関する調査を行うものとする。
3 前項の調査は、鑑別を求めた者に対して資料の提出、説明その他の必要な
協力を求める方法によるほか、必要と認めるときは、鑑別対象者又はその
保護者その他参考人との面接、心理検査その他の検査、前条の規定による
照会その他相当と認める方法により行うものとする。」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=426AC0000000059
つまり、少年鑑別所による鑑別も、非常に科学的なものなのです。
これらの二点を併せて考えますと、現行少年法の下で行われる調査の
方が、旧法において行われていたものよりずっと、科学的であると言えます。
Ⅳ と、ここまでご説明したところで、今日も時間がなくなってきて
しまいました。したがって、旧少年法の下における保護処分を
決定するための手続の続きについては、明日ご説明することとします。
昨日のブログに続き、今日も、
少年審判所における保護処分を決定するための手続をご説明します。
Ⅰ 第1に、旧法では、「少年審判所ニ於」(おい)「テ保護処分ヲ爲スヘキ
少年アルコトヲ認知シタル者ハ之ヲ少年審判所又ハ其ノ職員ニ
通告スヘシ」と規定されていました(旧法第29条)と規定されていました。
これと似ている規定は、現行法第6条第1項にもあります。それによりますと、
「家庭裁判所の審判に付すべき少年を発見した者は、
これを家庭裁判所に通告しなければならない。」↓と規定されています。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
ただし、現行法第6条第2項では「警察官又は保護者は、
第三条第一項第三号に掲げる少年について、直接これを家庭裁判所に送致し、
又は通告するよりも、先づ児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)
による措置にゆだねるのが適当であると認めるときは、
その少年を直接児童相談所に通告することができる。」と規定↓されています。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
つまり、現行法では、虞犯少年については、警察官又は保護者に対して、
家裁への通告又は通告と児童相談所への通告を選択できる権利を
認めています。
Ⅱ 第2に、話を旧法に戻しますと、
第29条の「通告ヲ爲スニハ其ノ事由ヲ開示シ成ルヘク本人及其ノ
保護者ノ氏名、住所、年齢、職業、性行」(せいこう)「等ヲ申立テ且」(かつ)「参考ト爲ルヘキ資料ヲ差出スヘシ」と規定されていました(旧法第30条)。
ですから、旧法第29条によりますと、「刑罰法令ニ觸ルル行為ヲ爲シ
又ハ刑罰法令ニ觸ルル行為ヲ爲ス虞ノアル少年」を発見した者は誰でも、
その少年を少年審判所に通告すべきとされていたのですが、
そのためにはその事由を開示し、少年本人と保護者の氏名・住所・年齢
だけでなく職業や性行を申し立て、しかも参考資料を差し出さなければ
ならなかったのですから、実際には通告をするのはかなり難しかったのでは
ないかと思われます。
なお、Ⅰでもご紹介しましたように、現行法でも一般人に対して、
非行少年を家裁に通告する義務を課しています。この「一般人による
通告」の方式については、現行法上では特段の規定を設けてはいませんが、
少年法を具体化するために最高裁が定めた少年審判規則第9条第1項には
以下のように規定されています。
「家庭裁判所の審判に付すべき少年を発見した者は、
家庭裁判所に通告するには、審判に付すべき事由のほか、なるべく、
少年及び保護者の氏名、年齢、職業及び住居(保護者が法人である場合に
おいては、その名称又は商号及び主たる事務所又は本店の所在地)並びに
少年の本籍を明らかにしなければならない。」
https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file2/20150601syounenshinpankisoku.pdf
つまり、少年審判規則によりますと、一般人による通告を行うためには、
少年又は保護者の性行を明らかにしたり参考資料を差し出したりする義務は
ないことになります。
Ⅲ 第3に、話を再び旧法に戻しますと、「通告ハ書面又ハ口頭ヲ以」(も)
「テコレヲ爲スコトヲ得口頭ノ通告アリタル場合ニ於テハ少年審判所ノ職員
其ノ申立ヲ録取スヘシ」と規定されていました(旧法第30条第2項)。
https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file2/20150601syounenshinpankisoku.pdf
これと似ている規定は少年審判規則第9条第2項↑にもあります。
それによりますと、「前項の通告は、書面又は口頭ですることができる。
口頭の通告があつた場合には、家庭裁判所調査官又は裁判所書記官は、
これを調書に記載する。」と規定されています。
Ⅳ と、ここまで書いたところで、今日は時間がなくなってきて
しまいました。少年審判所において保護処分を決定するための手続の
続きについては、明日ご説明することとします。
少年審判所における保護処分を決定するための手続をご説明します。
Ⅰ 第1に、旧法では、「少年審判所ニ於」(おい)「テ保護処分ヲ爲スヘキ
少年アルコトヲ認知シタル者ハ之ヲ少年審判所又ハ其ノ職員ニ
通告スヘシ」と規定されていました(旧法第29条)と規定されていました。
これと似ている規定は、現行法第6条第1項にもあります。それによりますと、
「家庭裁判所の審判に付すべき少年を発見した者は、
これを家庭裁判所に通告しなければならない。」↓と規定されています。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
ただし、現行法第6条第2項では「警察官又は保護者は、
第三条第一項第三号に掲げる少年について、直接これを家庭裁判所に送致し、
又は通告するよりも、先づ児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)
による措置にゆだねるのが適当であると認めるときは、
その少年を直接児童相談所に通告することができる。」と規定↓されています。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
つまり、現行法では、虞犯少年については、警察官又は保護者に対して、
家裁への通告又は通告と児童相談所への通告を選択できる権利を
認めています。
Ⅱ 第2に、話を旧法に戻しますと、
第29条の「通告ヲ爲スニハ其ノ事由ヲ開示シ成ルヘク本人及其ノ
保護者ノ氏名、住所、年齢、職業、性行」(せいこう)「等ヲ申立テ且」(かつ)「参考ト爲ルヘキ資料ヲ差出スヘシ」と規定されていました(旧法第30条)。
ですから、旧法第29条によりますと、「刑罰法令ニ觸ルル行為ヲ爲シ
又ハ刑罰法令ニ觸ルル行為ヲ爲ス虞ノアル少年」を発見した者は誰でも、
その少年を少年審判所に通告すべきとされていたのですが、
そのためにはその事由を開示し、少年本人と保護者の氏名・住所・年齢
だけでなく職業や性行を申し立て、しかも参考資料を差し出さなければ
ならなかったのですから、実際には通告をするのはかなり難しかったのでは
ないかと思われます。
なお、Ⅰでもご紹介しましたように、現行法でも一般人に対して、
非行少年を家裁に通告する義務を課しています。この「一般人による
通告」の方式については、現行法上では特段の規定を設けてはいませんが、
少年法を具体化するために最高裁が定めた少年審判規則第9条第1項には
以下のように規定されています。
「家庭裁判所の審判に付すべき少年を発見した者は、
家庭裁判所に通告するには、審判に付すべき事由のほか、なるべく、
少年及び保護者の氏名、年齢、職業及び住居(保護者が法人である場合に
おいては、その名称又は商号及び主たる事務所又は本店の所在地)並びに
少年の本籍を明らかにしなければならない。」
https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file2/20150601syounenshinpankisoku.pdf
つまり、少年審判規則によりますと、一般人による通告を行うためには、
少年又は保護者の性行を明らかにしたり参考資料を差し出したりする義務は
ないことになります。
Ⅲ 第3に、話を再び旧法に戻しますと、「通告ハ書面又ハ口頭ヲ以」(も)
「テコレヲ爲スコトヲ得口頭ノ通告アリタル場合ニ於テハ少年審判所ノ職員
其ノ申立ヲ録取スヘシ」と規定されていました(旧法第30条第2項)。
https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file2/20150601syounenshinpankisoku.pdf
これと似ている規定は少年審判規則第9条第2項↑にもあります。
それによりますと、「前項の通告は、書面又は口頭ですることができる。
口頭の通告があつた場合には、家庭裁判所調査官又は裁判所書記官は、
これを調書に記載する。」と規定されています。
Ⅳ と、ここまで書いたところで、今日は時間がなくなってきて
しまいました。少年審判所において保護処分を決定するための手続の
続きについては、明日ご説明することとします。
昨日お約束した通り、今日からは、
旧法における保護処分を決定するための手続についてご説明します。
Ⅰ 第1に、旧法においては、
「大審院ノ特別権限ニ屬」(ぞく)「スル罪ヲ犯シタル者ハ
少年審判所ノ審判ニ付」することができませんでした(旧法第26条)
ここでの「大審院」とは、「明治憲法下の日本において設置されていた
司法裁判所の中における最上級審の裁判所」です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E5%AF%A9%E9%99%A2
そして「大審院の特別権限ニ屬スル罪」とは、「皇室に対する罪に関する
刑法第73条(1947年削除)および第75条(同前)、
内乱に関する第77条ないし第79条の罪」のことです。これらの罪に対しては、
大審院は、「第一審にして終審として」、「予審および裁判を行」いました。
https://japanknowledge.com/contents/nipponica/sample_koumoku.html?entryid=1171
ですが、明治憲法下において、少年が「大審院の特別権限に属する罪」に
問われたことはありません。
Ⅱ 第2に、以下に記載する者は裁判所又は検事より送致を受けた場合を
除いては少年審判所の審判に付すことができませんでした。
「一 死刑、無期又ハ短期三年以上ノ懲役若」(もしく)ハ「禁錮二
該」(あたる)ルヘキ罪ヲ犯シタル者
二 十六歳以上ニシテ罪ヲ犯シタル者」(旧法第27条)。
つまり、旧法においては、法定刑の比較的重い罪を犯した者と
16歳以上の犯罪者については刑事手続を原則としていたのです。
これだけをご覧になった方の中には「旧法の方が良い法律ではないか」
と思われた方も多いでしょう。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=140AC0000000045
しかし、例えば強盗罪の法定刑は「五年以上の懲役」↑(刑法第236条)
ですが、コンビニで万引きしようとしたところ店員に見つかって
警察に引き渡されそうになったので突き飛ばして逃げたような場合にも
「事後強盗罪」として、強盗罪と同じ扱いを受けるのです(刑法第238条)。
https://lovingchicken3.diarynote.jp/202111281802349564/
また、11月28日に書いた↑ように、「『1935年の旧制中学校、実業学校、
高等女学校の進学率は18.5%に過ぎなかった』のです。↓
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A7%E5%88%B6%E4%B8%AD%E7%AD%89%E6%95%99%E8%82%B2%E5%AD%A6%E6%A0%A1
ですから、この時代に尋常小学校(1941年以降は国民学校)を
卒業した人たちの圧倒的大多数は、工場での単純労働や商店での丁稚奉公や
子守りとしてであれ働いてい」たことを思い出して下さい。
Ⅲ 第3に、刑事手続により審理中の者は少年審判所の審判に付すことが
できませんでした(旧法第28条第1項)。これは当然です。
また、14歳に満たない者は「地方長官ヨリ送致ヲ受ケタル場合ヲ
除クノ外」(ほか)少年審判の審判に付すことが
できませんでした(旧法第28条第2項)。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
これと似た規定は、現行少年法第3条第2項↑にもあります。
それによりますと、「家庭裁判所は、前項第二号に掲げる少年及び
同項第三号に掲げる少年で十四歳に満たない者については、
都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り、
これを審判に付することができる。」とあります。
ここで「前項第二号に掲げる少年」とは、「十四歳に満たないで刑罰法令に
触れる行為をした少年」つまり「触法少年」です。そして「同項第三号に
掲げる少年で十四歳に満たない者」とは14歳未満の虞犯少年です。ですから、
現行少年法も、旧法と同じく、14歳未満の少年については、
福祉機関優先主義を採用しています。
Ⅳ と、ここまでご説明してきたところで、本日は時間がなくなってきて
しまいました。少年審判所における保護処分を決定するための手続の
続きについては、明日ご説明します。
旧法における保護処分を決定するための手続についてご説明します。
Ⅰ 第1に、旧法においては、
「大審院ノ特別権限ニ屬」(ぞく)「スル罪ヲ犯シタル者ハ
少年審判所ノ審判ニ付」することができませんでした(旧法第26条)
ここでの「大審院」とは、「明治憲法下の日本において設置されていた
司法裁判所の中における最上級審の裁判所」です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E5%AF%A9%E9%99%A2
そして「大審院の特別権限ニ屬スル罪」とは、「皇室に対する罪に関する
刑法第73条(1947年削除)および第75条(同前)、
内乱に関する第77条ないし第79条の罪」のことです。これらの罪に対しては、
大審院は、「第一審にして終審として」、「予審および裁判を行」いました。
https://japanknowledge.com/contents/nipponica/sample_koumoku.html?entryid=1171
ですが、明治憲法下において、少年が「大審院の特別権限に属する罪」に
問われたことはありません。
Ⅱ 第2に、以下に記載する者は裁判所又は検事より送致を受けた場合を
除いては少年審判所の審判に付すことができませんでした。
「一 死刑、無期又ハ短期三年以上ノ懲役若」(もしく)ハ「禁錮二
該」(あたる)ルヘキ罪ヲ犯シタル者
二 十六歳以上ニシテ罪ヲ犯シタル者」(旧法第27条)。
つまり、旧法においては、法定刑の比較的重い罪を犯した者と
16歳以上の犯罪者については刑事手続を原則としていたのです。
これだけをご覧になった方の中には「旧法の方が良い法律ではないか」
と思われた方も多いでしょう。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=140AC0000000045
しかし、例えば強盗罪の法定刑は「五年以上の懲役」↑(刑法第236条)
ですが、コンビニで万引きしようとしたところ店員に見つかって
警察に引き渡されそうになったので突き飛ばして逃げたような場合にも
「事後強盗罪」として、強盗罪と同じ扱いを受けるのです(刑法第238条)。
https://lovingchicken3.diarynote.jp/202111281802349564/
また、11月28日に書いた↑ように、「『1935年の旧制中学校、実業学校、
高等女学校の進学率は18.5%に過ぎなかった』のです。↓
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A7%E5%88%B6%E4%B8%AD%E7%AD%89%E6%95%99%E8%82%B2%E5%AD%A6%E6%A0%A1
ですから、この時代に尋常小学校(1941年以降は国民学校)を
卒業した人たちの圧倒的大多数は、工場での単純労働や商店での丁稚奉公や
子守りとしてであれ働いてい」たことを思い出して下さい。
Ⅲ 第3に、刑事手続により審理中の者は少年審判所の審判に付すことが
できませんでした(旧法第28条第1項)。これは当然です。
また、14歳に満たない者は「地方長官ヨリ送致ヲ受ケタル場合ヲ
除クノ外」(ほか)少年審判の審判に付すことが
できませんでした(旧法第28条第2項)。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
これと似た規定は、現行少年法第3条第2項↑にもあります。
それによりますと、「家庭裁判所は、前項第二号に掲げる少年及び
同項第三号に掲げる少年で十四歳に満たない者については、
都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り、
これを審判に付することができる。」とあります。
ここで「前項第二号に掲げる少年」とは、「十四歳に満たないで刑罰法令に
触れる行為をした少年」つまり「触法少年」です。そして「同項第三号に
掲げる少年で十四歳に満たない者」とは14歳未満の虞犯少年です。ですから、
現行少年法も、旧法と同じく、14歳未満の少年については、
福祉機関優先主義を採用しています。
Ⅳ と、ここまでご説明してきたところで、本日は時間がなくなってきて
しまいました。少年審判所における保護処分を決定するための手続の
続きについては、明日ご説明します。
昨日書いたブログでお約束した通り、今日は、
少年審判所には少年審判官の他にどのような職員がいたかご説明します。
Ⅰ 少年審判所には少年審判官の他に、
少年保護司と書記という職員がいました(旧法18条)。
そして、少年審判官には少年審判所の事務を管理し、
上記の職員を監督する職務がありました(旧法第20条第1項)。
なお、2人以上の少年審判官が配置された少年審判所においては、
上席者が旧法第20条第1項の規定による職員を監督する職務を
行わなければなりませんでした(旧法第20条第2項)。
https://lovingchicken3.diarynote.jp/202112041741246482/
Ⅱ 少年保護司は、12月4日に書いたブログ↑でご紹介したように、
少年審判官を「輔佐」(ほさ)「シテ審判ノ資料ヲ供シ観察事務ヲ
掌(つかさど)ル」職務を有していました(旧法第23条第1項)。
つまり、「少年保護司」は、現行法の家庭裁判所調査官の職務
(現行法第8条第2項・第9条・第25条)と
保護観察官の職務を併せて担っていたということもできます。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
そして、少年保護司は「少年ノ保護又ハ教育ニ經驗」(経験)「ヲ有スル者
其」(そ)ノ「他適當」(てきとう)「ナル者ニ對」(たい)「シ司法大臣
之ヲ嘱託スルコトヲ得」(旧法第23条第2項)とされていました。
なお、「家庭裁判所調査官は家庭裁判所で取り扱っている家事事件,
少年事件などについて,調査を行うのが主な仕事です(裁判所法第61条の2)。」
そして「家庭裁判所調査官になるには,裁判所職員採用総合職試験
(家庭裁判所調査官補)を受験して採用された後,
裁判所職員総合研修所において2年間研修を受けて必要な技能等を
修得することが必要です。」
https://www.courts.go.jp/saiban/zinbutu/tyosakan/index.html
また、「保護観察官になるためには,国家公務員試験に合格し,
法務省保護局又は更生保護官署(地方更生保護委員会又は保護観察所)に
法務事務官として採用された後,一定の期間,更生保護行政を幅広く
理解するための仕事を経験することが必要です。
採用試験には,国家公務員採用総合職試験,法務省専門職員(人間科学)
採用試験(保護観察区分)及び国家公務員採用一般職試験があります。
採用事務は,国家公務員採用総合職試験は法務省保護局総務課において,
法務省専門職員(人間科学)採用試験(保護観察官区分)及び
国家公務員採用一般職試験は地方更生保護委員会事務局総務課において
行っています。」
https://www.moj.go.jp/hogo1/soumu/hogo_hogo04-01.html
Ⅲ 話を旧少年法に戻しますと、少年審判所に配置されていた書記は、
「上司ノ指揮ヲ承」(う)「ケ審判ニ關」(かん)「スル書類ノ調製ニ
掌リ庶務ニ従事ス」とされていました(旧法第24条)。
現在では、家庭裁判所だけでなく各裁判所に裁判所書記官が
配置されています(裁判所法第60条第1項)。
「裁判所書記官は、裁判所の事件に関する記録その他の書類の作成及び保管
その他他の法律において定める事務を掌る」(裁判所法第60条第2項)ほか、
「裁判所の事件に関し、裁判官の命を受けて、裁判官の行なう法令及び判例の
調査その他必要な事項の調査を補助」します(裁判所法第60条第3項)。
裁判所書記官は、その職務を行うについては、裁判官の命令に」
必ず従わなければなりません(裁判所法第60条第4項)。ですが、
「裁判所書記官は、口述の書取その他書類の作成又は変更に関して裁判官の
命令を受けた場合において、その作成又は変更を正当でないと認めるときは、
自己の意見を書き添えることができ」ます(裁判所法第60条第5項)。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000059
Ⅳ なお、現在の家庭裁判所には、家庭裁判所調査官・
裁判所書記官のほかに、裁判所事務官(裁判所法第58条)、
事務局長(裁判所法第59条)、及び裁判所速記官(裁判所法第60条の2)という
職員も置かれているのですが、旧少年法にはこれらの職員に対応する
職員に関する規定は置かれていません。おそらく立法の際に
「必要ない」と判断されたのでしょう。
Ⅴ 長くなりました。以上で旧少年法における少年審判所に
配置されていた職員に関するご説明を終わります。明日からは、
旧法における保護処分を決定するための手続についてご説明します。
少年審判所には少年審判官の他にどのような職員がいたかご説明します。
Ⅰ 少年審判所には少年審判官の他に、
少年保護司と書記という職員がいました(旧法18条)。
そして、少年審判官には少年審判所の事務を管理し、
上記の職員を監督する職務がありました(旧法第20条第1項)。
なお、2人以上の少年審判官が配置された少年審判所においては、
上席者が旧法第20条第1項の規定による職員を監督する職務を
行わなければなりませんでした(旧法第20条第2項)。
https://lovingchicken3.diarynote.jp/202112041741246482/
Ⅱ 少年保護司は、12月4日に書いたブログ↑でご紹介したように、
少年審判官を「輔佐」(ほさ)「シテ審判ノ資料ヲ供シ観察事務ヲ
掌(つかさど)ル」職務を有していました(旧法第23条第1項)。
つまり、「少年保護司」は、現行法の家庭裁判所調査官の職務
(現行法第8条第2項・第9条・第25条)と
保護観察官の職務を併せて担っていたということもできます。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
そして、少年保護司は「少年ノ保護又ハ教育ニ經驗」(経験)「ヲ有スル者
其」(そ)ノ「他適當」(てきとう)「ナル者ニ對」(たい)「シ司法大臣
之ヲ嘱託スルコトヲ得」(旧法第23条第2項)とされていました。
なお、「家庭裁判所調査官は家庭裁判所で取り扱っている家事事件,
少年事件などについて,調査を行うのが主な仕事です(裁判所法第61条の2)。」
そして「家庭裁判所調査官になるには,裁判所職員採用総合職試験
(家庭裁判所調査官補)を受験して採用された後,
裁判所職員総合研修所において2年間研修を受けて必要な技能等を
修得することが必要です。」
https://www.courts.go.jp/saiban/zinbutu/tyosakan/index.html
また、「保護観察官になるためには,国家公務員試験に合格し,
法務省保護局又は更生保護官署(地方更生保護委員会又は保護観察所)に
法務事務官として採用された後,一定の期間,更生保護行政を幅広く
理解するための仕事を経験することが必要です。
採用試験には,国家公務員採用総合職試験,法務省専門職員(人間科学)
採用試験(保護観察区分)及び国家公務員採用一般職試験があります。
採用事務は,国家公務員採用総合職試験は法務省保護局総務課において,
法務省専門職員(人間科学)採用試験(保護観察官区分)及び
国家公務員採用一般職試験は地方更生保護委員会事務局総務課において
行っています。」
https://www.moj.go.jp/hogo1/soumu/hogo_hogo04-01.html
Ⅲ 話を旧少年法に戻しますと、少年審判所に配置されていた書記は、
「上司ノ指揮ヲ承」(う)「ケ審判ニ關」(かん)「スル書類ノ調製ニ
掌リ庶務ニ従事ス」とされていました(旧法第24条)。
現在では、家庭裁判所だけでなく各裁判所に裁判所書記官が
配置されています(裁判所法第60条第1項)。
「裁判所書記官は、裁判所の事件に関する記録その他の書類の作成及び保管
その他他の法律において定める事務を掌る」(裁判所法第60条第2項)ほか、
「裁判所の事件に関し、裁判官の命を受けて、裁判官の行なう法令及び判例の
調査その他必要な事項の調査を補助」します(裁判所法第60条第3項)。
裁判所書記官は、その職務を行うについては、裁判官の命令に」
必ず従わなければなりません(裁判所法第60条第4項)。ですが、
「裁判所書記官は、口述の書取その他書類の作成又は変更に関して裁判官の
命令を受けた場合において、その作成又は変更を正当でないと認めるときは、
自己の意見を書き添えることができ」ます(裁判所法第60条第5項)。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000059
Ⅳ なお、現在の家庭裁判所には、家庭裁判所調査官・
裁判所書記官のほかに、裁判所事務官(裁判所法第58条)、
事務局長(裁判所法第59条)、及び裁判所速記官(裁判所法第60条の2)という
職員も置かれているのですが、旧少年法にはこれらの職員に対応する
職員に関する規定は置かれていません。おそらく立法の際に
「必要ない」と判断されたのでしょう。
Ⅴ 長くなりました。以上で旧少年法における少年審判所に
配置されていた職員に関するご説明を終わります。明日からは、
旧法における保護処分を決定するための手続についてご説明します。
12月7日に書いたブログでお約束した通り、
今回からは、旧少年法「ではどんな機関が、
どんな手続きで保護処分を決定することとされていたのか」という
話題についてご説明します。
ですが、長くなりそうですので、保護処分の決定機関についてのご説明と、
保護処分を決定するための手続きについてのご説明は、
章を分けることとします。
Ⅰ 現行少年法で保護処分を決定する機関は、
家庭裁判所です(現行法第24条第1項本文)↓。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000059
家庭裁判所は、その名の通り裁判所の一種↑(裁判所法第2条第1項)で、
裁判所は司法権が帰属する(日本国憲法第76条第1項)↓司法機関です。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=321CONSTITUTION
Ⅱ これに対して、旧法の下で保護処分を決定していた機関は、
12月4日に書いたブログでも触れましたように、
少年審判所(旧法第15条)という機関です。
https://lovingchicken3.diarynote.jp/202112041741246482/
この少年審判所は、司法機関ではありませんでした。
「司法権と行政権の中間物だ」(注1)とされていたのです。
もっとも、少年審判所は司法大臣の監督に属す(旧法第17条)と
されてしました。また、審判を行う少年審判官(旧法第19条)は
司法官である「判事ヲシテ之ヲ兼ネムシムルコトヲ得」(旧法第21条第1項)
とされていましたし、「判事タル資格ヲ有スル少年審判官ハ
判事ヲ兼ヌルコトヲ得」(旧法第21条第2項)とされてしました。
しかし、これらのことは、逆に言うと、旧法においては少年審判官は
判事である必要はなかったことを意味するものでして、
したがって少年審判所は司法機関ではなかったのです。
もっとも、このように少年審判所を「司法権と行政権の中間物」と
性格づけることに対しては、帝国議会での旧少年法案審議に際して、
清瀬一郎(注2)から次のような批判があったそうです。
「中間物と云ふ事は一体ある筈でない、…何故起案者は、少年審判官を、
最後に審判する人だけは矢張司法官たる資格を有った者から採ると云う
制度を何故御採用にならなかったか、…自由を剥奪するとか、
此等の事をすることは、どうしたって是を源は司法組織に組まぬと云ふと、
行政組織ではいかぬという疑が出来るののである、…矯正院は子供の監獄、
内実は同一である、名前に拘束されてはいかぬ。」「民権に重大なる
關係のあるものは、特別担当の役人に裁判せしむるといふ事が、
今日の法治思想、憲法思想でありまして、国家はそれに依って組織されて
居ります。…憲法のある国では必ずさうである。然るに日本が審判所を
設けて処罰せんとするのは、どういふ差し支えがありますか。」(注3)
ですが、清瀬のこのような批判は、結局容れられませんでした。
長くなりました。この後に、少年審判所には少年審判官の他に
どのような職員がいたかご説明する必要があります。しかし、
更に長くなりますので、そのご説明は明日に譲らせていただきます。
(注1)森田明『未成年者保護法と現代社会-保護と自律のあいだ』
(有斐閣、1999年)216頁。
(注2)清瀬 一郎(きよせ いちろう、1884年〈明治17年〉7月5日 -
1967年〈昭和42年〉6月27日)は「大正、昭和時代の日本の弁護士、
法学者、政治家」です。弁護士としては、治安維持法に反対した
こともあったのですが、「極東国際軍事裁判で東條英機の弁護人などを
務め、また政治家としては文部大臣、衆議院議長を歴任」しました。
そして「衆議院議長在任中の1960年6月19日から20日にかけて、
衆議院本会議で日米安全保障条約(新安保条約)の採決が行われた。
採決の前、日本社会党の議員や秘書団が清瀬を議長室に
閉じ込めていたが、警官隊がこれを排除。清瀬は救出に来た金丸信に
抱えられて議事堂に入るが、入場の際に扉に左足首
(日経新聞の記事では右足首とされているが、産経新聞の写真で
左足首にギプスを巻いているのが確認できる[2])をぶつけて
骨折している。議長席についた清瀬はそのまま大混乱の中で
会期延長を強行採決し、日付が変わった直後に条約批准案を
可決させた[3]。なんとか可決にこぎつけ疲労困憊の清瀬は、
ソファに横たわりながら記者らの取材を受けた」そうです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%85%E7%80%AC%E4%B8%80%E9%83%8E
(注3)森田明・前掲注(1)書216頁。
今回からは、旧少年法「ではどんな機関が、
どんな手続きで保護処分を決定することとされていたのか」という
話題についてご説明します。
ですが、長くなりそうですので、保護処分の決定機関についてのご説明と、
保護処分を決定するための手続きについてのご説明は、
章を分けることとします。
Ⅰ 現行少年法で保護処分を決定する機関は、
家庭裁判所です(現行法第24条第1項本文)↓。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000059
家庭裁判所は、その名の通り裁判所の一種↑(裁判所法第2条第1項)で、
裁判所は司法権が帰属する(日本国憲法第76条第1項)↓司法機関です。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=321CONSTITUTION
Ⅱ これに対して、旧法の下で保護処分を決定していた機関は、
12月4日に書いたブログでも触れましたように、
少年審判所(旧法第15条)という機関です。
https://lovingchicken3.diarynote.jp/202112041741246482/
この少年審判所は、司法機関ではありませんでした。
「司法権と行政権の中間物だ」(注1)とされていたのです。
もっとも、少年審判所は司法大臣の監督に属す(旧法第17条)と
されてしました。また、審判を行う少年審判官(旧法第19条)は
司法官である「判事ヲシテ之ヲ兼ネムシムルコトヲ得」(旧法第21条第1項)
とされていましたし、「判事タル資格ヲ有スル少年審判官ハ
判事ヲ兼ヌルコトヲ得」(旧法第21条第2項)とされてしました。
しかし、これらのことは、逆に言うと、旧法においては少年審判官は
判事である必要はなかったことを意味するものでして、
したがって少年審判所は司法機関ではなかったのです。
もっとも、このように少年審判所を「司法権と行政権の中間物」と
性格づけることに対しては、帝国議会での旧少年法案審議に際して、
清瀬一郎(注2)から次のような批判があったそうです。
「中間物と云ふ事は一体ある筈でない、…何故起案者は、少年審判官を、
最後に審判する人だけは矢張司法官たる資格を有った者から採ると云う
制度を何故御採用にならなかったか、…自由を剥奪するとか、
此等の事をすることは、どうしたって是を源は司法組織に組まぬと云ふと、
行政組織ではいかぬという疑が出来るののである、…矯正院は子供の監獄、
内実は同一である、名前に拘束されてはいかぬ。」「民権に重大なる
關係のあるものは、特別担当の役人に裁判せしむるといふ事が、
今日の法治思想、憲法思想でありまして、国家はそれに依って組織されて
居ります。…憲法のある国では必ずさうである。然るに日本が審判所を
設けて処罰せんとするのは、どういふ差し支えがありますか。」(注3)
ですが、清瀬のこのような批判は、結局容れられませんでした。
長くなりました。この後に、少年審判所には少年審判官の他に
どのような職員がいたかご説明する必要があります。しかし、
更に長くなりますので、そのご説明は明日に譲らせていただきます。
(注1)森田明『未成年者保護法と現代社会-保護と自律のあいだ』
(有斐閣、1999年)216頁。
(注2)清瀬 一郎(きよせ いちろう、1884年〈明治17年〉7月5日 -
1967年〈昭和42年〉6月27日)は「大正、昭和時代の日本の弁護士、
法学者、政治家」です。弁護士としては、治安維持法に反対した
こともあったのですが、「極東国際軍事裁判で東條英機の弁護人などを
務め、また政治家としては文部大臣、衆議院議長を歴任」しました。
そして「衆議院議長在任中の1960年6月19日から20日にかけて、
衆議院本会議で日米安全保障条約(新安保条約)の採決が行われた。
採決の前、日本社会党の議員や秘書団が清瀬を議長室に
閉じ込めていたが、警官隊がこれを排除。清瀬は救出に来た金丸信に
抱えられて議事堂に入るが、入場の際に扉に左足首
(日経新聞の記事では右足首とされているが、産経新聞の写真で
左足首にギプスを巻いているのが確認できる[2])をぶつけて
骨折している。議長席についた清瀬はそのまま大混乱の中で
会期延長を強行採決し、日付が変わった直後に条約批准案を
可決させた[3]。なんとか可決にこぎつけ疲労困憊の清瀬は、
ソファに横たわりながら記者らの取材を受けた」そうです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%85%E7%80%AC%E4%B8%80%E9%83%8E
(注3)森田明・前掲注(1)書216頁。
昨日お約束した通り、今日は、「現行法の『虞犯少年』に関する規定には、
旧法には存在しなかった『虞犯事由』(現行法第3条第1項第3号の
『イ』から『二』までの箇所)が存在する」という点についてご説明します。
その前提として、念のために、
現行法第3条第1項の規定を再びご紹介します。
「(審判に付すべき少年)
第三条 次に掲げる少年は、これを家庭裁判所の審判に付する。
一 罪を犯した少年
二 十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年
三 次に掲げる事由があつて、その性格又は環境に照して、将来、罪を犯し、
又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年
イ 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。
ロ 正当の理由がなく家庭に寄り附かないこと。
ハ 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、
又はいかがわしい場所に出入すること。
ニ 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること。」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
そして、現行法第3条第1項第3号の「その性格又は環境に照して、将来、
罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞」の箇所は「虞犯性」と、
「イ」から「二」までの箇所は「虞犯事由」と、それぞれ呼ばれます。
今日の日記の冒頭で述べたように、「虞犯事由」は旧法には存在せず、
「人権保障の見地から虞犯性判断に客観性を与えるため現行法で初めて
規定されたもので」す(注1)。
現行少年法は「少年の健全育成」を目的とします(現行法第1条)。
そのためには、非行の背後にある少年の性格・環境上の問題性という意味の
「要保護性に見合った教育的な措置を適切・有効であり、
犯罪に至らなくても問題行動等があって要保護性があれば、
それに最も相応しい処遇を加えるべきことにある。虞犯制度は、
この保護・教育優先主義の本質的な要請に応え、犯罪に至る前に
少年を立ち直らせようとするもので、保護・教育のために必要・有効なもの
である。」(注2)と指摘されていまして、私のこの指摘そのものには賛成です。
しかし、それと同時に、現行憲法の下では、少年であっても
基本的人権を保障されるべきである(日本国憲法第11条)ことも、
認めなければなりません。
したがって、少年の健全育成、
より厳密に言うと非行の早期発見・早期治療の必要性と、
少年の基本的人権の保障のバランスを取るために、
現行少年法が虞犯の成立のために虞犯事由をも必要としたことは妥当である、
と考えます。
以上の通り昨日と今日は、
保護処分に付される可能性のある少年という点における
旧法と現行法の違いをご説明しました。
そこで次は、「旧法ではどんな機関が、
どんな手続きで保護処分を決定することとされていたのか」という
話題についてご説明する必要があると思います。
しかし、明日(8日)から17日まで忙しいので、
この説明を行うことはできません。この説明は18日から開始したいと思います。
(注1)田宮裕=廣瀬健二編『注釈少年法(第3版)』(有斐閣、2009年)67頁。
(注2)田宮裕=廣瀬健二編・前掲書65頁。
旧法には存在しなかった『虞犯事由』(現行法第3条第1項第3号の
『イ』から『二』までの箇所)が存在する」という点についてご説明します。
その前提として、念のために、
現行法第3条第1項の規定を再びご紹介します。
「(審判に付すべき少年)
第三条 次に掲げる少年は、これを家庭裁判所の審判に付する。
一 罪を犯した少年
二 十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年
三 次に掲げる事由があつて、その性格又は環境に照して、将来、罪を犯し、
又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年
イ 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。
ロ 正当の理由がなく家庭に寄り附かないこと。
ハ 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、
又はいかがわしい場所に出入すること。
ニ 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること。」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
そして、現行法第3条第1項第3号の「その性格又は環境に照して、将来、
罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞」の箇所は「虞犯性」と、
「イ」から「二」までの箇所は「虞犯事由」と、それぞれ呼ばれます。
今日の日記の冒頭で述べたように、「虞犯事由」は旧法には存在せず、
「人権保障の見地から虞犯性判断に客観性を与えるため現行法で初めて
規定されたもので」す(注1)。
現行少年法は「少年の健全育成」を目的とします(現行法第1条)。
そのためには、非行の背後にある少年の性格・環境上の問題性という意味の
「要保護性に見合った教育的な措置を適切・有効であり、
犯罪に至らなくても問題行動等があって要保護性があれば、
それに最も相応しい処遇を加えるべきことにある。虞犯制度は、
この保護・教育優先主義の本質的な要請に応え、犯罪に至る前に
少年を立ち直らせようとするもので、保護・教育のために必要・有効なもの
である。」(注2)と指摘されていまして、私のこの指摘そのものには賛成です。
しかし、それと同時に、現行憲法の下では、少年であっても
基本的人権を保障されるべきである(日本国憲法第11条)ことも、
認めなければなりません。
したがって、少年の健全育成、
より厳密に言うと非行の早期発見・早期治療の必要性と、
少年の基本的人権の保障のバランスを取るために、
現行少年法が虞犯の成立のために虞犯事由をも必要としたことは妥当である、
と考えます。
以上の通り昨日と今日は、
保護処分に付される可能性のある少年という点における
旧法と現行法の違いをご説明しました。
そこで次は、「旧法ではどんな機関が、
どんな手続きで保護処分を決定することとされていたのか」という
話題についてご説明する必要があると思います。
しかし、明日(8日)から17日まで忙しいので、
この説明を行うことはできません。この説明は18日から開始したいと思います。
(注1)田宮裕=廣瀬健二編『注釈少年法(第3版)』(有斐閣、2009年)67頁。
(注2)田宮裕=廣瀬健二編・前掲書65頁。
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