昨日のブログでお約束した通り、
今日は旧法第9条についてご説明します。

Ⅰ 旧法第9条は以下のような規定でした。
「第九條 懲役又ハ禁錮ノ言渡シヲ受ケタル少年ニ對」(たい)「シテハ
   特ニ設ケタル監獄又ハ監獄内ノ特ニ分界」(ぶんかい)「ヲ設ケタル
   場所ニ於」(おい)「テ其ノ刑ヲ執行ス
  本人十八歳ニ達シタル後ト雖」(いえど)「満二十三歳ニ至ル迄ハ
   其ノ刑ヲ執行スルコトヲ得」

Ⅱ 旧法第9条に似た規定は、現行法第56条にも存在します。
これは以下のような規定です。
「(懲役又は禁錮の執行)
第五十六条 懲役又は禁錮の言渡しを受けた少年(第三項の規定により
少年院において刑の執行を受ける者を除く。)に対しては、特に設けた
刑事施設又は刑事施設若しくは留置施設内の特に分界を設けた場所において、
その刑を執行する。
2 本人が満二十歳に達した後でも、満二十六歳に達するまでは、
前項の規定による執行を継続することができる。
3 懲役又は禁錮の言渡しを受けた十六歳に満たない少年に対しては、
刑法第十二条第二項又は第十三条第二項の規定にかかわらず、
十六歳に達するまでの間、少年院において、その刑を執行することができる。
この場合において、その少年には、矯正教育を授ける。」

Ⅲ 旧法第9条第1項、つまり「懲役又ハ禁錮」から「執行ス」までの部分と、
現行法第56条第1項、つまり「懲役又は禁錮」から
「執行する」までの部分とでは、用語が現代化されている点と、
「監獄又ハ監獄内」が「刑事施設又は刑事施設若しくは留置施設内」
と改められている点を除いては、違いがありません。
 この「特ニ設ケタル監獄」または「特に設けた刑事施設」は
「少年刑務所」と呼ばれています(法務省設置法第8条)。ただ、
「少年刑務所には、少年受刑者のほか26歳未満の青年受刑者をも
収容しており、少年受刑者は少ないため、大多数は青年受刑者と
なっている」のです(注1)。
 なお、「分界」とは、「境目をつけて分けること。また、その境目。」
という意味です。
https://kotobank.jp/word/%E5%88%86%E7%95%8C-622972

Ⅳ 旧法第9条第2項、つまり「本人」から「執行スルコトヲ得」までの部分と、
現行法第56条第2項、つまり「本人」から「執行することができる」までの
部分とでも、現代用語化されている点と、「十八歳」が「満二十歳」と、
「二十三歳」が「二十六歳」とそれぞれ改められている点を除いては、
違いがありません。
 そして、少年刑務所で成人受刑者に対する刑の執行を認めている理由
としては、次のことが指摘されています。
 「少年刑務所は、20歳未満の少年を収容すべきことを原則としているが、
入所したときは少年でも収容中に20歳になる場合がある。この場合、少年が
20歳に達したからといって、直ちに普通の成人の刑務所に移すことは、
それまでなされた少年に対する特別の行刑の効果を損なう虞」(おそれ)
「があるので、本(現行法第56)条2項は、満26歳に達するまでは、本条
1項による執行を継続できるとしている。『26歳』は、」第三種少年院の
「収容の最高年齢が26歳とされている」(少年院法第4条第1項第3号)
「こととの対応を考えたものである」(注2)のです。

Ⅴ なお、現行法第56条第3項、つまり「3 懲役又は禁錮の言渡しを受けた
十六歳に満たない少年に対しては、
刑法第十二条第二項又は第十三条第二項の規定にかかわらず、
十六歳に達するまでの間、少年院において、その刑を執行することができる。
この場合において、その少年には、矯正教育を授ける。」という規定は、
旧法にはなかったもので、次のように解説されています。
 「本条3項は、平成12年改正により、16歳未満(14・15歳)の少年に
ついても、検送が可能になり、懲役刑・禁錮刑が科され得るようになったが、
その年齢や心身の発達の度合いを考慮し、刑の執行にあたって教育的側面を
重視すべき場合が多いと考えられ、特に、義務教育年齢の者については
教科教育を重視しなければならないことから、このような年少少年
(刑の執行開始時に16歳未満であることを要する)に対する刑の執行の特例
として少年院における矯正教育を受けさせることを認めたものである。」(注3)

Ⅵ 長くなりました。これで旧法第9条についてのご説明を終わらせて
いただきます。次は旧法第10条についてのご説明をしたいのですが、
明日は忙しいので、明後日つまり12日にさせていただきます。

(注1)田宮裕=廣瀬健二編『注釈少年法(第3版)』(2009年、有斐閣)479頁。
(注2)田宮=廣瀬編・前掲(注1)。
(注3)甲斐行夫=入江猛=飯島泰=加藤俊治=岡健太郎=岡田伸太=本田能久=
 安永健次「少年法等の一部を改正する法律及び少年審判規則の一部を改正する
 規則の解説」『法曹会新法解説叢書17』(2002年)233頁。

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