昨日書いたブログでお約束した通り、
今日からは旧法が定める少年に対する刑事手続の特則、
つまり特別な定めについてご説明します。
今日は旧法第64条についてご説明します。
Ⅰ 旧法第64条は以下のような規定でした。
「第六十四條 少年ニ對」(たい)「スル刑事事件ニ付」(つい)「テハ
第三十一條ノ調査ヲ爲スヘシ
少年ノ身上ニ關」(かん)「スル事項ノ調査ハ少年保護司ニ嘱託シテ
之ヲ爲サシムルコトヲ得」
1.第一に、第1項、つまり「少年ニ」から「爲ヘシ」の部分における
「第三十一條ノ調査」とは、12月23日に書いたブログでご説明したように、
「事件ノ關係」(かんけい)「及本人ノ性行、境遇、經歴、」(けいれき)
「心身ノ状況、教育ノ程度等」についての調査のことです。
2.第二に、第2項、つまり「少年ノ身上」から「コトヲ得」の部分は、
少年の「性行、境遇、經歴、心身ノ状況、教育ノ程度等」に関する事項の
調査は、少年保護司に嘱託してこれを行わせることができる、
という意味の規定です。
3. ですから、1.2.を総合すると、旧法では、刑事裁判所に起訴された
少年に対しても、事件の関係、及本人の性行、境遇、経歴、
心身の状況、教育の程度等についての調査を行わなければならず、
このうち少年の身上に関する事項の調査は、少年保護司に嘱託して
行わせることができたのです。
Ⅱ 現行少年法には、旧法第64条にぴったり対応する規定はありません。
わずかに第50条が、以下のように定めているだけです。
「(審理の方針)
第五十条 少年に対する刑事事件の審理は、第九条の趣旨に従つて、
これを行わなければならない。」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
ここで、「第九条」とは次のような規定です。
「(調査の方針)
第九条 前条の調査は、なるべく、少年、保護者又は関係人の行状、経歴、
素質、環境等について、医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的智識
特に少年鑑別所の鑑別の結果を活用して、これを行うように努めなければ
ならない。」
ですから、現行法第50条が意味するのは、
「少年に対する刑事事件の審理は、なるべく、
少年、保護者又は関係人の行状、経歴、素質、環境等について、医学、
心理学、教育学、社会学その他の専門的智識特に少年鑑別所の鑑別の結果を
活用して、行わなければならない」という意味です。
そして、現行法第50条は、実務家つまり裁判官によって、
次のように解釈されています。
「家庭裁判所でなされた科学調査の結果がまとめられた社会記録を
取寄せて判断資料とすることが最も有効である。(中略) 他方、
社会記録には少年や保護者の個人情報で公開に馴染まないものが多く
非公開・秘密保持の要請が強いのに、刑事裁判は公開の法廷で
行われる。そこで、この秘密保持の要請のため、取調の方式や
閲覧・謄写(刑訴40条)に配慮・工夫することが重要である(中略)。
証拠書類の取調方式は朗読であるが(刑訴305条)、
実務上ほとんどの場合、朗読に代えて要旨の告知(刑訴規203条の2)によって
行われているので、社会記録の取調の場合、少年や保護者の名誉や情操を
害さないように配慮して工夫することが可能であり、
実務上励行されている。」(注)
Ⅲ 長くなりました。以上で旧法第64条についてのご説明を終わりと
します。明日は、旧法第67条についてご説明します。そしてできれば、
第68条や第69条についてもご説明したいです。
(注)田宮裕=廣瀬健二編『注釈少年法(第3版)』(2009年、有斐閣)462頁
今日からは旧法が定める少年に対する刑事手続の特則、
つまり特別な定めについてご説明します。
今日は旧法第64条についてご説明します。
Ⅰ 旧法第64条は以下のような規定でした。
「第六十四條 少年ニ對」(たい)「スル刑事事件ニ付」(つい)「テハ
第三十一條ノ調査ヲ爲スヘシ
少年ノ身上ニ關」(かん)「スル事項ノ調査ハ少年保護司ニ嘱託シテ
之ヲ爲サシムルコトヲ得」
1.第一に、第1項、つまり「少年ニ」から「爲ヘシ」の部分における
「第三十一條ノ調査」とは、12月23日に書いたブログでご説明したように、
「事件ノ關係」(かんけい)「及本人ノ性行、境遇、經歴、」(けいれき)
「心身ノ状況、教育ノ程度等」についての調査のことです。
2.第二に、第2項、つまり「少年ノ身上」から「コトヲ得」の部分は、
少年の「性行、境遇、經歴、心身ノ状況、教育ノ程度等」に関する事項の
調査は、少年保護司に嘱託してこれを行わせることができる、
という意味の規定です。
3. ですから、1.2.を総合すると、旧法では、刑事裁判所に起訴された
少年に対しても、事件の関係、及本人の性行、境遇、経歴、
心身の状況、教育の程度等についての調査を行わなければならず、
このうち少年の身上に関する事項の調査は、少年保護司に嘱託して
行わせることができたのです。
Ⅱ 現行少年法には、旧法第64条にぴったり対応する規定はありません。
わずかに第50条が、以下のように定めているだけです。
「(審理の方針)
第五十条 少年に対する刑事事件の審理は、第九条の趣旨に従つて、
これを行わなければならない。」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
ここで、「第九条」とは次のような規定です。
「(調査の方針)
第九条 前条の調査は、なるべく、少年、保護者又は関係人の行状、経歴、
素質、環境等について、医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的智識
特に少年鑑別所の鑑別の結果を活用して、これを行うように努めなければ
ならない。」
ですから、現行法第50条が意味するのは、
「少年に対する刑事事件の審理は、なるべく、
少年、保護者又は関係人の行状、経歴、素質、環境等について、医学、
心理学、教育学、社会学その他の専門的智識特に少年鑑別所の鑑別の結果を
活用して、行わなければならない」という意味です。
そして、現行法第50条は、実務家つまり裁判官によって、
次のように解釈されています。
「家庭裁判所でなされた科学調査の結果がまとめられた社会記録を
取寄せて判断資料とすることが最も有効である。(中略) 他方、
社会記録には少年や保護者の個人情報で公開に馴染まないものが多く
非公開・秘密保持の要請が強いのに、刑事裁判は公開の法廷で
行われる。そこで、この秘密保持の要請のため、取調の方式や
閲覧・謄写(刑訴40条)に配慮・工夫することが重要である(中略)。
証拠書類の取調方式は朗読であるが(刑訴305条)、
実務上ほとんどの場合、朗読に代えて要旨の告知(刑訴規203条の2)によって
行われているので、社会記録の取調の場合、少年や保護者の名誉や情操を
害さないように配慮して工夫することが可能であり、
実務上励行されている。」(注)
Ⅲ 長くなりました。以上で旧法第64条についてのご説明を終わりと
します。明日は、旧法第67条についてご説明します。そしてできれば、
第68条や第69条についてもご説明したいです。
(注)田宮裕=廣瀬健二編『注釈少年法(第3版)』(2009年、有斐閣)462頁
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