昨日のブログに続き、今日も、
少年審判所における保護処分を決定するための手続をご説明します。
今日はいよいよ、少年審判所が保護処分を決定するまさにそのための手続である
審判についてご説明します。

Ⅰ 第1に、旧法第19条には「少年審判官ハ單獨」(たんどく)「ニテ
審判ヲ爲」(な)「ス」と規定されていました。つまり、旧法の下では、
審判は常に少年審判官単独で行われていました。
 これに対して、現行法では、2000年までは裁判官単独で審判が
行われていました。
 しかし、2000年改正以降は、「合議体で審判又は審理及び裁判をする旨の
決定を合議体でした事件」は裁判官の合議体で取り扱うこととされました
(裁判所法第31条の四第2項第1号)。この場合の合議体の裁判官の員数は、
「三人とし、そのうち一人を裁判長」とします(裁判所法第31条の四第3項)。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000059

Ⅱ 第2に、旧法第43条第1項には「審判期日ニハ少年審判官及書記
出席スヘシ」と規定されていました。これは当然です。現行の少年審判規則
第28条第1項にも、「審判の席には、裁判官及び裁判所書記官が、
列席する。」と規定されています。

Ⅲ 第3に、旧法第43条第2項には「少年保護司ハ審判期日ニ出席スルコトヲ
得」と規定されていました。でも、これを逆に言うと、旧法の下では
少年保護司は必ずしも審判期日に出席しなくてもよかったのです。
 これに対して、少年審判規則第28条第2項には、「家庭裁判所調査官は、
裁判長の許可を得た場合を除き、審判の席に出席しなければならない。」と
規定されています。つまり現在では、家庭裁判所調査官は、
原則として審判の席に出席する義務があるのです。

Ⅳ 第4に、旧法第43条第3項には「審判期日ニハ本人、保護者及附添人ヲ
呼出」(よびだ)「スヘシ但シ實益」(じつえき)「ナシト認メタルトキハ
保護者ハ之ヲ呼出サザルコトヲ得」と規定されていました。つまり、゜へ
旧法の下では、少年審判官が「実益がない」と認めた場合には、
保護者を呼び出す必要がなかったのです。
 これに対して、少年審判規則第25条第2項には「審判期日には、
少年及び保護者を呼び出さなければならない。」と規定されています。
つまり、現行法の下では、裁判官または裁判長は、たとえ「実益がない」
と認めたとしても、保護者を呼び出す義務を有しているのです。
 また、少年審判規則第28条第3項によりますと「少年が審判期日に
出頭しないときは、審判を行うことができない。」とされています。
 なお、旧法では附添人も呼出の対象とされていました。これに対して、
少年審判規則第28条第4項では、「付添人は、審判の席に出席することが
できる。」と規定され、同第5項では、「家庭裁判所は、審判期日を付添人に
通知しなければならない。」と規定されています。

Ⅴ 第5に、旧法第44条第1項では「少年保護司、保護者及附添人ハ審判ノ
席ニ於テ意見ヲ陳述スルコトヲ得」と規定されていました。一見すると
当然のことを規定しているようですが、本人が意見を陳述できるとは
規定されていません。
 これに対して、少年審判規則第30条には「少年、保護者、付添人、
家庭裁判所調査官、保護観察官、保護司、法務技官及び法務教官は、
審判の席において、裁判長の許可を得て、
意見を述べることができる」と規定されています。つまり現在では、
少年も、裁判長の許可を得てですが、審判の席で意見を述べることが
できます。
 なお、ここでの「保護司」は、旧法の「少年保護司」と
紛らわしいですが、「社会奉仕の精神をもつて、犯罪をした者の改善及び
更生を助けるとともに、犯罪の予防のため世論の啓発に努め、
もつて地域社会の浄化をはかり、個人及び公共の福祉に寄与することを、
その使命とする」人たちで、1)保護観察、「つまり犯罪や非行をした
人たちと定期的に面接を行い、更生を図るための約束事(遵守事項)を
守るよう指導するとともに、生活上の助言や就労の手助け等を行」い、
2)生活環境の調整、つまり少年院や刑務所に収容されている人が、
釈放後にスムーズに社会復帰できるよう、釈放後の帰住予定地の調査、
引受人との話合い等を行い、必要な受け入れ態勢を整え」ることを行い、
3)犯罪予防活動、つまり「犯罪や非行を未然に防ぐとともに、罪を犯した人の
更生について理解を深めるために、世論の啓発や地域社会の浄化に
努める」ことを行います。
https://www.kouseihogo-net.jp/hogoshi/about.html
 また、「法務技官」とは、「法務省において技術を掌る官職の
官名(技官)で」す。「国家公務員総合職試験並びに法務省専門職員
(人間科学)採用試験で採用される矯正心理専門職の他、選考採用で
採用される医療従事者、作業専門官があ」ります。
 このうち矯正心理専門職(法務技官(心理) )の職務内容は以下の通りです。
「少年鑑別所では、法務教官に併任され法務技官兼法務教官として
勤務」します。「入所した少年に対して面接や各種心理検査を行い、
知能や性格等の資質上の特徴、非行に至った原因、今後の処遇上の指針を
明らかに」します。「結果は、『鑑別結果通知書』として、家庭裁判所に
送付され(収容審判鑑別)、審判や少年院・保護観察所での指導・援助に
活用され」ます。また、家庭裁判所の審判決定により、少年院に送致された
少年や保護観察処分になった少年にも、専門的なアセスメント機能を活用して
継続的に関与(処遇鑑別)」します。「これらに加え、心理学に関する
専門的な知見を生かして、地域社会の非行・犯罪の防止に貢献するため、
一般の方や関係機関等からの依頼に応じ、相談・助言や心理検査等を
行っており、学校等の関係機関と連携した非行防止や青少年の
健全育成のための活動にも積極的に取り組んでいる(地域援助)。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B3%95%E5%8B%99%E6%8A%80%E5%AE%98
 そして、「法務教官」は主として、少年院に送致された非行少年への
指導・支援を行います。
https://www.moj.go.jp/moj/KYOUSEI/SAIYO/houmukyoukan/houmukyoukan.html

Ⅵ 第6に、話を旧法に戻しますと、その第44条第2項には、少年保護司、
保護者及び附添人が審判の席で意見を陳述する場合には「本人ヲ
退席セシムヘシ但シ相當」(そうとう)「ノ事由アルトキハ本人ヲ
在席セシムルコトヲ得」と規定されていました。つまり、旧法の下では、
少年保護司、保護者及び附添人が審判の席で意見を陳述する場合には、
原則として本人を退席させなければならず、相当の事由があるときに
限って在席させることができたのです。
 このような規定は現行少年法や少年審判規則にはありません。ただ、
少年審判規則には以下のような規定があります。
「第三十一条 裁判長は、適正な審判をするため必要があると認めるときは、
発言を制止し、又は少年以外の者を退席させる等相当の措置をとることが
できる。
2 裁判長は、少年の情操を害するものと認める状況が生じたときは、
その状況の継続中、少年を退席させることができる。」
 つまり現在では、少年が退席させられることがありうるのは、
「少年の情操を害するものと認める状況が生じたとき」で、
「その状況の継続中」に限られています。

Ⅶ なお、現行法では、2000年の改正以降、家裁は、
犯罪少年に係る事件であって、「死刑又は無期若しくは長期三年を超える
懲役若しくは禁錮に当たる罪のものにおいて、その非行事実を認定するための
審判の手続に検察官が関与する必要があると認めるときは、決定をもつて、
審判に検察官を出席させることができ」ます(現行法第22条第1項)。
この決定があった事件において、検察官は、「その非行事実の認定に
資するため必要な限度で、最高裁判所規則の定めるところにより、
事件の記録及び証拠物を閲覧し及び謄写し、審判の手続
(事件を終局させる決定の告知を含む。)に立ち会い、
少年及び証人その他の関係人に発問し、
並びに意見を述べることができ」ます(現行法第22条第3項)。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
 そして、このような検察官関与に関する規定は、旧法にはありませんでした。

Ⅷ と、ここまで書いてきたところで、今日も時間がなくなってきて
しまいました。少年審判における保護処分を決定するための手続の続きに
ついては、明日ご説明します。



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