昨日お約束した通り、今日からは、
旧法における保護処分を決定するための手続についてご説明します。

Ⅰ 第1に、旧法においては、
「大審院ノ特別権限ニ屬」(ぞく)「スル罪ヲ犯シタル者ハ
少年審判所ノ審判ニ付」することができませんでした(旧法第26条)
ここでの「大審院」とは、「明治憲法下の日本において設置されていた
司法裁判所の中における最上級審の裁判所」です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E5%AF%A9%E9%99%A2
 そして「大審院の特別権限ニ屬スル罪」とは、「皇室に対する罪に関する
刑法第73条(1947年削除)および第75条(同前)、
内乱に関する第77条ないし第79条の罪」のことです。これらの罪に対しては、
大審院は、「第一審にして終審として」、「予審および裁判を行」いました。
https://japanknowledge.com/contents/nipponica/sample_koumoku.html?entryid=1171
 ですが、明治憲法下において、少年が「大審院の特別権限に属する罪」に
問われたことはありません。

Ⅱ 第2に、以下に記載する者は裁判所又は検事より送致を受けた場合を
除いては少年審判所の審判に付すことができませんでした。
 「一 死刑、無期又ハ短期三年以上ノ懲役若」(もしく)ハ「禁錮二
   該」(あたる)ルヘキ罪ヲ犯シタル者
  二 十六歳以上ニシテ罪ヲ犯シタル者」(旧法第27条)。
 つまり、旧法においては、法定刑の比較的重い罪を犯した者と
16歳以上の犯罪者については刑事手続を原則としていたのです。
 これだけをご覧になった方の中には「旧法の方が良い法律ではないか」
と思われた方も多いでしょう。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=140AC0000000045
 しかし、例えば強盗罪の法定刑は「五年以上の懲役」↑(刑法第236条)
ですが、コンビニで万引きしようとしたところ店員に見つかって
警察に引き渡されそうになったので突き飛ばして逃げたような場合にも
「事後強盗罪」として、強盗罪と同じ扱いを受けるのです(刑法第238条)。
https://lovingchicken3.diarynote.jp/202111281802349564/
 また、11月28日に書いた↑ように、「『1935年の旧制中学校、実業学校、
高等女学校の進学率は18.5%に過ぎなかった』のです。↓
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A7%E5%88%B6%E4%B8%AD%E7%AD%89%E6%95%99%E8%82%B2%E5%AD%A6%E6%A0%A1
ですから、この時代に尋常小学校(1941年以降は国民学校)を
卒業した人たちの圧倒的大多数は、工場での単純労働や商店での丁稚奉公や
子守りとしてであれ働いてい」たことを思い出して下さい。

Ⅲ 第3に、刑事手続により審理中の者は少年審判所の審判に付すことが
できませんでした(旧法第28条第1項)。これは当然です。
 また、14歳に満たない者は「地方長官ヨリ送致ヲ受ケタル場合ヲ
除クノ外」(ほか)少年審判の審判に付すことが
できませんでした(旧法第28条第2項)。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
 これと似た規定は、現行少年法第3条第2項↑にもあります。
それによりますと、「家庭裁判所は、前項第二号に掲げる少年及び
同項第三号に掲げる少年で十四歳に満たない者については、
都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り、
これを審判に付することができる。」とあります。
 ここで「前項第二号に掲げる少年」とは、「十四歳に満たないで刑罰法令に
触れる行為をした少年」つまり「触法少年」です。そして「同項第三号に
掲げる少年で十四歳に満たない者」とは14歳未満の虞犯少年です。ですから、
現行少年法も、旧法と同じく、14歳未満の少年については、
福祉機関優先主義を採用しています。

Ⅳ と、ここまでご説明してきたところで、本日は時間がなくなってきて
しまいました。少年審判所における保護処分を決定するための手続の
続きについては、明日ご説明します。


 
 

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