12月7日に書いたブログでお約束した通り、
今回からは、旧少年法「ではどんな機関が、
どんな手続きで保護処分を決定することとされていたのか」という
話題についてご説明します。
ですが、長くなりそうですので、保護処分の決定機関についてのご説明と、
保護処分を決定するための手続きについてのご説明は、
章を分けることとします。

Ⅰ 現行少年法で保護処分を決定する機関は、
家庭裁判所です(現行法第24条第1項本文)↓。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000059
 家庭裁判所は、その名の通り裁判所の一種↑(裁判所法第2条第1項)で、
裁判所は司法権が帰属する(日本国憲法第76条第1項)↓司法機関です。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=321CONSTITUTION

Ⅱ これに対して、旧法の下で保護処分を決定していた機関は、
12月4日に書いたブログでも触れましたように、
少年審判所(旧法第15条)という機関です。
https://lovingchicken3.diarynote.jp/202112041741246482/
 この少年審判所は、司法機関ではありませんでした。
「司法権と行政権の中間物だ」(注1)とされていたのです。
 もっとも、少年審判所は司法大臣の監督に属す(旧法第17条)と
されてしました。また、審判を行う少年審判官(旧法第19条)は
司法官である「判事ヲシテ之ヲ兼ネムシムルコトヲ得」(旧法第21条第1項)
とされていましたし、「判事タル資格ヲ有スル少年審判官ハ
判事ヲ兼ヌルコトヲ得」(旧法第21条第2項)とされてしました。
しかし、これらのことは、逆に言うと、旧法においては少年審判官は
判事である必要はなかったことを意味するものでして、
したがって少年審判所は司法機関ではなかったのです。
 もっとも、このように少年審判所を「司法権と行政権の中間物」と
性格づけることに対しては、帝国議会での旧少年法案審議に際して、
清瀬一郎(注2)から次のような批判があったそうです。
「中間物と云ふ事は一体ある筈でない、…何故起案者は、少年審判官を、
最後に審判する人だけは矢張司法官たる資格を有った者から採ると云う
制度を何故御採用にならなかったか、…自由を剥奪するとか、
此等の事をすることは、どうしたって是を源は司法組織に組まぬと云ふと、
行政組織ではいかぬという疑が出来るののである、…矯正院は子供の監獄、
内実は同一である、名前に拘束されてはいかぬ。」「民権に重大なる
關係のあるものは、特別担当の役人に裁判せしむるといふ事が、
今日の法治思想、憲法思想でありまして、国家はそれに依って組織されて
居ります。…憲法のある国では必ずさうである。然るに日本が審判所を
設けて処罰せんとするのは、どういふ差し支えがありますか。」(注3)
ですが、清瀬のこのような批判は、結局容れられませんでした。

 長くなりました。この後に、少年審判所には少年審判官の他に
どのような職員がいたかご説明する必要があります。しかし、
更に長くなりますので、そのご説明は明日に譲らせていただきます。

 (注1)森田明『未成年者保護法と現代社会-保護と自律のあいだ』
   (有斐閣、1999年)216頁。
 (注2)清瀬 一郎(きよせ いちろう、1884年〈明治17年〉7月5日 -
   1967年〈昭和42年〉6月27日)は「大正、昭和時代の日本の弁護士、
  法学者、政治家」です。弁護士としては、治安維持法に反対した
  こともあったのですが、「極東国際軍事裁判で東條英機の弁護人などを
  務め、また政治家としては文部大臣、衆議院議長を歴任」しました。
  そして「衆議院議長在任中の1960年6月19日から20日にかけて、
  衆議院本会議で日米安全保障条約(新安保条約)の採決が行われた。
  採決の前、日本社会党の議員や秘書団が清瀬を議長室に
  閉じ込めていたが、警官隊がこれを排除。清瀬は救出に来た金丸信に
  抱えられて議事堂に入るが、入場の際に扉に左足首
  (日経新聞の記事では右足首とされているが、産経新聞の写真で
  左足首にギプスを巻いているのが確認できる[2])をぶつけて
  骨折している。議長席についた清瀬はそのまま大混乱の中で
  会期延長を強行採決し、日付が変わった直後に条約批准案を
  可決させた[3]。なんとか可決にこぎつけ疲労困憊の清瀬は、
  ソファに横たわりながら記者らの取材を受けた」そうです。
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%85%E7%80%AC%E4%B8%80%E9%83%8E
 (注3)森田明・前掲注(1)書216頁。

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