昨日お約束した通り、今日は、
保護処分に付される可能性のある少年という点においての、
旧少年法と現行少年法の違いについてご説明します。
Ⅰ 旧法第4条第1項によりますと、保護処分に付される可能性のある少年は、
「刑罰法令ニ觸(ふ)ルル行為ヲ為(な)シ又ハ刑罰法令ニ刑罰法令ニ觸ルル行為ヲ
為ス虞(おそれ)アル少年」でした。
これを現代用語に訳した上で分かりやすく書き直してみると、
旧法第4条第1項により保護処分に付される可能性のある少年は
以下の通りです。
1)刑罰法令に触れる行為をした少年。
2)刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年。これを以下、
「虞犯(ぐはん)少年」と呼びます。そして、
この「刑罰法令に触れる行為をする虞」は、「虞犯性」と呼ばれます。
Ⅱ これに対して現行法第3条第1項は、「家庭裁判所の審判に付すべき
少年」として、以下のような少年を規定しています。
「一 罪を犯した少年
二 十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年
三 次に掲げる事由があつて、その性格又は環境に照して、将来、
罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年
イ 保護者の正当な監督に服しない性癖(せいへき)のあること。
ロ 正当の理由がなく家庭に寄り附かないこと。
ハ 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、
又はいかがわしい場所に出入すること。
ニ 自己又は他人の徳性(とくせい)を害する行為をする性癖のあること。」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
第一号、つまり「一」に当たる少年は、「犯罪少年」と呼ばれます。
第二号、つまり「二」に当たる少年は、「触法(しょくほう)少年」と
呼ばれます。
第三号、つまり「三」に当たる少年は、「虞犯少年」と呼ばれます。そして、第三号のうち「その性格又は環境に照して、将来、罪を犯し、
又は刑罰法令に触れる行為をする虞」の箇所は「虞犯性」と、
「イ」から「ニ」までの箇所は「虞犯事由」と、それぞれ呼ばれます。
なお、現行法の下では、家庭裁判所(以下「家裁」と略します)の審判に
付された少年の全てが保護処分に付される訳ではありません(現行法第23条)。
それどころか、家裁の審判に付されたものの保護処分に付されない少年の数は、
かなり多いです(注1)。
ですが、ある少年を家裁の審判に付すことなしに保護処分に付すことは、
絶対に許されませんし、実際にもそのようなことはありません。
ですから、「家庭裁判所の審判に付すべき少年」を定めた現行法第3条第1項は、
保護処分に付される可能性のある少年を定めたものと理解することも
できます。
Ⅲ ⅠとⅡをご覧になった方には、旧法と現行法とでは次のような違いが
あることにお気づきになった方もいらっしゃるでしょう。
A. 現行法では「犯罪少年」と「触法少年」を区別して規定している。
B. 現行法の「虞犯少年」に関する規定には、旧法には存在しなかった
「虞犯事由」(現行法第3条第1項第3号の「イ」から「二」までの箇所)が
存在する。
以下、AとBそれぞれについてご説明します。
Ⅳ ⅢのAでご紹介したように、現行法で「罪を犯した少年」という文言が
用いられたのは、現行法第3条第2項で「家庭裁判所は、
前項第二号に掲げる少年及び同項第三号に掲げる少年で十四歳に満たない者
については、都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り、
これを審判に付することができる。」と規定されたからです。このような
原則は「児童福祉機関先議(せんぎ)の原則」と呼ばれます(注2)。そして、
14歳未満の者について児童福祉機関先議の原則が定められたのは、
そのような「少年は低年齢であり、類型的に心身が未成熟であるため、
少年法に基づく措置よりも、専ら児童の福祉を図ることを目的とする
児童福祉法上の措置(児福26条・27条-原文のまま-)を優先するという
考え方に基づくもの」です(注3)。
Ⅴ と、ここまで書いたところで、時間がなくなってきてしまいました。
このため、ⅢのB.でご紹介した「現行法の『虞犯少年』に関する規定には、
旧法には存在しなかった『虞犯事由』(現行法第3条第1項第3号の
『イ』から『二』までの箇所)が存在する」という点については、
明日ご説明することとします。
(注1)例えば2019年度においては、過失運転致死傷等保護事件および虞犯を除く
一般保護事件については、総人数25,815人のうち17.2%が不処分決定を
受けていますし、過失運転致死傷等保護事件についても総人数10,336人のうち
16.0%が不処分決定を受けています。また、道路交通保護事件については
総人数11,636人のうち8.5%が不処分決定を受けています。法務省法務総合
研究所編『令和2年版犯罪白書』113頁。
(注2)川出敏裕『少年法』(有斐閣、2015年)81頁。なお、「先議」とは、
ある問題についてAという機関がBという機関より先に扱うという意味です。
(注3)川出・前掲注(2)85頁。
保護処分に付される可能性のある少年という点においての、
旧少年法と現行少年法の違いについてご説明します。
Ⅰ 旧法第4条第1項によりますと、保護処分に付される可能性のある少年は、
「刑罰法令ニ觸(ふ)ルル行為ヲ為(な)シ又ハ刑罰法令ニ刑罰法令ニ觸ルル行為ヲ
為ス虞(おそれ)アル少年」でした。
これを現代用語に訳した上で分かりやすく書き直してみると、
旧法第4条第1項により保護処分に付される可能性のある少年は
以下の通りです。
1)刑罰法令に触れる行為をした少年。
2)刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年。これを以下、
「虞犯(ぐはん)少年」と呼びます。そして、
この「刑罰法令に触れる行為をする虞」は、「虞犯性」と呼ばれます。
Ⅱ これに対して現行法第3条第1項は、「家庭裁判所の審判に付すべき
少年」として、以下のような少年を規定しています。
「一 罪を犯した少年
二 十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年
三 次に掲げる事由があつて、その性格又は環境に照して、将来、
罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年
イ 保護者の正当な監督に服しない性癖(せいへき)のあること。
ロ 正当の理由がなく家庭に寄り附かないこと。
ハ 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、
又はいかがわしい場所に出入すること。
ニ 自己又は他人の徳性(とくせい)を害する行為をする性癖のあること。」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
第一号、つまり「一」に当たる少年は、「犯罪少年」と呼ばれます。
第二号、つまり「二」に当たる少年は、「触法(しょくほう)少年」と
呼ばれます。
第三号、つまり「三」に当たる少年は、「虞犯少年」と呼ばれます。そして、第三号のうち「その性格又は環境に照して、将来、罪を犯し、
又は刑罰法令に触れる行為をする虞」の箇所は「虞犯性」と、
「イ」から「ニ」までの箇所は「虞犯事由」と、それぞれ呼ばれます。
なお、現行法の下では、家庭裁判所(以下「家裁」と略します)の審判に
付された少年の全てが保護処分に付される訳ではありません(現行法第23条)。
それどころか、家裁の審判に付されたものの保護処分に付されない少年の数は、
かなり多いです(注1)。
ですが、ある少年を家裁の審判に付すことなしに保護処分に付すことは、
絶対に許されませんし、実際にもそのようなことはありません。
ですから、「家庭裁判所の審判に付すべき少年」を定めた現行法第3条第1項は、
保護処分に付される可能性のある少年を定めたものと理解することも
できます。
Ⅲ ⅠとⅡをご覧になった方には、旧法と現行法とでは次のような違いが
あることにお気づきになった方もいらっしゃるでしょう。
A. 現行法では「犯罪少年」と「触法少年」を区別して規定している。
B. 現行法の「虞犯少年」に関する規定には、旧法には存在しなかった
「虞犯事由」(現行法第3条第1項第3号の「イ」から「二」までの箇所)が
存在する。
以下、AとBそれぞれについてご説明します。
Ⅳ ⅢのAでご紹介したように、現行法で「罪を犯した少年」という文言が
用いられたのは、現行法第3条第2項で「家庭裁判所は、
前項第二号に掲げる少年及び同項第三号に掲げる少年で十四歳に満たない者
については、都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り、
これを審判に付することができる。」と規定されたからです。このような
原則は「児童福祉機関先議(せんぎ)の原則」と呼ばれます(注2)。そして、
14歳未満の者について児童福祉機関先議の原則が定められたのは、
そのような「少年は低年齢であり、類型的に心身が未成熟であるため、
少年法に基づく措置よりも、専ら児童の福祉を図ることを目的とする
児童福祉法上の措置(児福26条・27条-原文のまま-)を優先するという
考え方に基づくもの」です(注3)。
Ⅴ と、ここまで書いたところで、時間がなくなってきてしまいました。
このため、ⅢのB.でご紹介した「現行法の『虞犯少年』に関する規定には、
旧法には存在しなかった『虞犯事由』(現行法第3条第1項第3号の
『イ』から『二』までの箇所)が存在する」という点については、
明日ご説明することとします。
(注1)例えば2019年度においては、過失運転致死傷等保護事件および虞犯を除く
一般保護事件については、総人数25,815人のうち17.2%が不処分決定を
受けていますし、過失運転致死傷等保護事件についても総人数10,336人のうち
16.0%が不処分決定を受けています。また、道路交通保護事件については
総人数11,636人のうち8.5%が不処分決定を受けています。法務省法務総合
研究所編『令和2年版犯罪白書』113頁。
(注2)川出敏裕『少年法』(有斐閣、2015年)81頁。なお、「先議」とは、
ある問題についてAという機関がBという機関より先に扱うという意味です。
(注3)川出・前掲注(2)85頁。
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