http://www.asahi.com/articles/ASH1S3JY4H1SUTQP00B.html
サッカー日本代表のハビエル・アギーレ監督が
スペイン1部リーグのサラゴサ監督時代に八百長に関わった疑いで、
バレンシアの裁判所がスペイン検察当局の告発を受理したと
スペイン各紙が報じたことについて、日本協会の大仁邦弥会長は24日、
「まだ受理されていない」と語った。

ちょっと理解困難なニュースです。
告発は受理されているのでしょうか? 受理されていないのでしょうか?

告発が受理されれば、
予審判事の指揮で本格的な捜査が始まることになる。

どうやらスペインでは、予審判事が捜査を指揮するようです。
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20141221
↑落合洋司弁護士のブログによりますと、
「予審判事」というのは、「予審を主宰する裁判官で、予審というのは、
有罪、無罪を判断する刑事公判の前に、公判に付するかどうかを決めるため行われる、
広義の捜査手続の一環としての制度です。
日本でも、現行の刑事訴訟法の前の、大正時代に成立した旧刑事訴訟法に、
「そういった予審制度が置かれていました。」

予審制度を採用する刑事訴訟法でも、
「捜査は第一次的には検事や警察官が」行います。
しかし、捜索、差押や関係者の身柄の拘束といった
「強制処分は裁判官に行わせ、
公判に付するかどうかを決める局面に至った場合は、予審に付し、
捜査を『司法化』して、裁判官に公平な立場で検討、判断させる」というのが
予審制度です。
そして、落合弁護士が指摘されるように、
法体系として大陸法と英米法の二大系統があるのですが、
予審制度は「大陸法系で採用されてきた制度で、現在も、
問題となっているスペインのほか、フランス、
イタリアなどヨーロッパを中心に根強く残っています。」
実際、私は以前フランスの刑事訴訟法を勉強したことがありまして、
フランスにも予審判事[judge d’instruction]の制度があります。

なお、日本の旧刑事訴訟法が予審制度を採用していたのは、
ドイツ法の影響によるものです。
ただ、ドイツでも1975年に予審制度は廃止されました。
(三井誠ら編『刑事法辞典』(2003年、信山社)777頁[梅田豊])
そして、落合弁護士が指摘されるように、終戦までの日本でも、
「予審制度が、検事、警察官による捜査に
『屋上屋を架する』ものであるという批判も根強く、
予審廃止論が強く主張されていた」のです。
そして、戦後になると、予審制度は「現行刑事訴訟法の当事者主義・
公判中心主義の理念と相容れず予断排除の原則にも反すると考えられた」ため、
あっさり廃止されました。[梅田]
なお「予断排除の原則」とは、公判を担当する裁判官に事件に関する
予断(あらかじめの判断)を抱かせないよう手続き上の配慮を求める原則のことで、
この原則を定めた代表的な規定は「起訴状には、裁判官に事件につき
予断を生ぜしめる虞[おそれ]のある書類その他の物を添附し、
又はその内容を引用してはならない。」という刑事訴訟法第256条第6項です。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO131.html
この刑事訴訟法第256条第6項は「起訴状一本主義」を定めたものと解され、
刑事訴訟法の中でも最も重要な規定の1つです。

話が脱線してしまいました。
バレンシアの裁判所がたとえ告発を受理したとしても、
それは捜査の開始を意味するに過ぎないのです。

捜査が終了しても嫌疑不十分で不起訴になることは、
日本では一定数あります。
http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/61/nfm/images/full/h2-2-3-03.jpg
おそらくスペインでも、捜査を尽くしても嫌疑不十分で不起訴というケースは
それなりの数あるでしょう。
したがって、アギーレ監督の八百長疑惑で裁判所が告発を受理したとしても、
アギーレ氏を有罪と扱って良いことにはならないと思います。


コメント

かわず
2015年1月25日13:19

司法制度が日本とスペインで異なるとしても、「無罪推定の原則」は変わらないはずですよね。
サポーターもマスコミも「無罪推定の原則」を考慮して発言・行動すべきだと思うのですが、そうなっていない部分もあるのが難しいところですね。

loving-c.
2015年1月25日19:39

おっしゃる通りです。

お気に入り日記の更新

この日記について

日記内を検索