ここへの書き込みができなくなります。
これまで、このブログをご覧になった皆様、
ならびに管理人さんに心からお礼を申し上げます。
明日(4月1日)からは↓Amebaのブログに書くつもりでおります。
https://ameblo.jp/loving-c-ameba
よろしければ、ご覧になって下さい。
以下の通りです。
・NHK総合TV : 火曜日10:55-, 木曜日10:55-, 日曜日10:55-
・NHK Eテレ : 月曜日8:55-, 火曜日12:45-, 水曜日8:55-    
・ラジオ第1 : 日曜日11:50-(隔週)
・ラジオ第2 : 月15:10-,火12:10-,水15:10-,木12:10-, 金15:10-, 土8:35- 
・FM放送 : 火21:10-, 木21:10-, 土11:50-
よろしければ、ご視聴して下さい。

なお、同じく谷山浩子さんが1986年8月に「みんなのうた」に提供された
「しっぽのきもち」も、以下のようなスケジュールで再放送されます。
・総合TV : 金曜日15:55-
・Eテレ : 火曜日6:35-
・ラジオ第2 : 木曜日23:15-、土曜日:12:55-
こちらの方もご視聴していただければ、なお幸いです。

亡くなられた方々に哀悼の誠を捧げるとともに、
被害に遭われた皆様に、心からお見舞いを申し上げます。

地震が発生した時私は寝ていたのですが、当然目が覚めました。
強い揺れが長く続いたので「本が落ちてくるかもしれない」と思い、
本棚の前から離れました。
もっとも、本が落ちてくるほどの揺れではなかったのですが、
この地震が、更に強い地震の前触れでないことを心から祈ります。
谷山浩子さんの「きみがいるから」という曲が放送されることが、
発表されました。
https://www.nhk.or.jp/minna/program/next/
放送日や時間などの詳細は、まだ発表されていません。
分かり次第、こちらでもお知らせしますので、
よろしければご視聴して下さい。
左肩の注射部位の痛みもなくなりました。
今回も副反応が軽くて、本当に安心しました。
左肩の注射部位が痛みますが、その他は特に異状は感じられません。
今までのところ、これぐらいの副反応で済んでいるのは御の字です。
予約していた時間より30分前に医院に行ったら、
予約時間より17分ぐらい早く注射してもらえました。
左肩の注射部位が痛みますが、
これぐらいの副反応で済むことを願っています。
「そして『みんなのうた』は生まれた2」#4「谷山浩子の世界」という番組が
放送されます。
https://www.nhk.or.jp/minna/60th/
放送時間は14:50から15:00までです。
谷山さんと、栗コーダーカルテットの皆さんが出演されます。
よろしければご視聴して下さい。

早速、私の住んでいる市のワクチン接種コールセンターに電話し、
かかりつけの医院での2/28の15:30の接種の予約が取れました。
2月中に3回目の接種ができるので、御の字です。
後は、1回目・2回目同様、副反応が軽くて済むことを祈るだけです。
12日にお約束した通り、今日は、
旧少年法のあらましについてのご説明の最終回として、
第74条についてご説明します。

Ⅰ 旧法第74条は、以下のような規定でした。
「第七十四條 少年審判所ノ審判ニ付セラレタル事項又ハ少年ニ
   對」(たい)スル「刑事事件ニ付豫審」(よしん)「又ハ公判ニ
   付セラレタル事項ハ之ヲ新聞紙其ノ他ノ出版物ニ掲載スルコトヲ得ス
  前項ノ規定ニ違反シタルトキハ新聞紙ニ在リテハ
   編輯」(へんしゅう)「人及發行人、」(はっこうにん)
   其ノ他ノ出版物ニ在リテハ著作者及發行者ヲ一年以下ノ禁錮又ハ
   千圓以下ノ罰金ニ処ス」
 1.第1項、つまり「少年審判所」から「得ス」までの部分の
「豫審」(予審)とは、「検察官の公訴提起を受けて、
予審判事が被告事件を公判に付すべきか否かを決定するために必要な事項を
取り調べる公判前の訴訟手続」のことです。「公判に付するに足りる嫌疑が
あるときは、予審判事は決定をもって、被告事件を公判に付する言渡しを
なすべきものとされて」いました。「この予審の制度は、
フランス法を継受した日本の治罪法(1880年公布)以来、
旧刑事訴訟法(1922年公布)に至るまで採用されていた」のですが、
「この手続は非公開で、被告人の尋問には弁護人の立会いを認めず、
また予審調書は公判期日において無条件で証拠能力を有するなど、
かなり糾問主義的制度であったので、
現行刑事訴訟法(1948年公布)は公判中心主義を強化し、
この制度を廃止し」たのです。https://kotobank.jp/word/%E4%BA%88%E5%AF%A9-65433
 2.旧少年法が制定された1922年に比較的近い1926年の1円は、
「今でいう818円程度」であるとされています。
https://magazine.tr.mufg.jp/90326
 だとすると、旧法第74条第2項の定める罰金の上限額である「千圓」
(千円)は、今でいう81万8千円に当たります。これはかなりの高額です。
 しかも、旧法第74条が処罰するのは、少年審判所の審判または
刑事裁判所の予審又は公判に付された少年が誰であるかだけではなく、
そもそもその少年が、いつ、どこで、何を、どのように、
そしてなぜしたのかを新聞またはその他の出版物に掲載することでした。
これは厳しすぎます。
もっとも、これは、戦前の日本で国民は、
「法律の範囲内」においてでしか「著作印行(いんこう)…の自由」
を認められているに過ぎなかった(大日本帝国憲法第29条)ためでもあります。
https://www.aozora.gr.jp/cards/001528/files/825.html

Ⅱ これに対して、現行少年法には、旧法第74条にぴったり対応する
規定はありません。
 なるほど現行法第61条には次のように規定されています。
「(記事等の掲載の禁止)
第六十一条 家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により
公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、
容ぼヽうヽ等によりその者が当該事件の本人であることを推知することが
できるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。」
 しかし、現行法第61条によって「新聞紙その他の出版物に掲載」する
ことが禁止されているのは、あくまでも、「氏名、年齢、職業、住居、
容ぼヽうヽ等によりその者が当該事件の本人であることを推知することが
できるような記事又は写真」に過ぎず、その少年または元少年が、
いつ、どこで、何を、どのように、なぜ行ったかを記載することは、
含まれていません。
 しかも、現行法第61条には、よくご覧になればお分かりの通り、
罰則はありません。これは「言論出版の自由(憲法21条)を尊重し、
報道機関の自主性に待つ趣旨である」(注1)のです。しかし、
現行法第61条に「反する報道が名誉毀損罪に該当し、不法行為として
損害賠償等を命じられることはもちろんある。その意味で、
本条は刑法230条の2の例外規定である」(注2)と理解されていることに
注意していただきたいものです。

Ⅲ 長くなりました。これで旧法第74条についてのご説明を終わらせて
いただきます。あわせて、旧少年法のあらましについてのご説明も
終わらせていただきます。私の説明が下手なため、かえってわかりづらく
なってしまったかもしれません。その場合には、心からお詫びします。

 (注1)田宮裕=廣瀬健二編『注釈少年法(第3版)』(2009年、有斐閣)489頁。
 (注2)平場安治『少年法(新版)』(有斐閣法律学全集44-Ⅱ、1987年)78頁。
一昨日のブログでお約束した通り、
今日は旧法第10条についてご説明します。

Ⅰ 旧法第10条は以下のような規定でした。
「第十條 少年ニシテ懲役又ハ禁錮ノ言渡」(いいわたし)「ヲ受ケタル者ハ
   左」(さ)「ノ期間ヲ経過シタル後假出獄」(かりしゅつごく)「許ス
   コトヲ得
  一 無期刑ニ付」(つい)「テハ七年
  二 第七條第一項ノ規定ニ依リ言渡シタル刑ニ付テハ三年
  三 第八条第一項及」(および)「第二項ノ規定ニ依リ言渡シタル刑ニ付テハ
     其ノ刑ノ短期ノ三分ノ一」

Ⅱ 「假出獄」、現代的表記では「仮出獄」とは、「懲役または禁固刑に
処せられた者が、刑執行中に改悛したと認められる場合、行政処分により、
刑期の終了前に一定の条件をつけて釈放すること」です。

Ⅲ 旧法第10条第2号、つまり「ニ 第七條」から「三年」までの部分の
「第七條第一項ノ規定ニ依リ言渡シタル刑」とは、
犯罪行為時16歳未満であった者に、死刑または無期刑をもって処断すべき
場合に、これらの刑に替えて言い渡すべき十年以上十五年以下の刑のことです。
ですから、例えば死刑をもって処断すべきであったのに、犯罪行為時
16歳未満であったことを理由に15年の懲役刑に処された者であっても、
3年経過すれば仮出獄が許可される可能性があったのです。

Ⅳ 旧法第10条第3号、つまり「三 第八条第一項」から
「三分ノ一」までの部分の、「第八条第一項及第二項ノ規定ニ依リ
言渡シタル刑」とは、相対的不定期刑のことです。
 この相対的不定期刑で最も重いものは「5年以上10年以下の懲役」でした。
ですから、この刑に処された者は、旧法第10条第3号によって、
短期の5年の1/3、つまり1年8か月経過すれば仮出獄が許可される可能性が
あったのです。

Ⅴ 旧少年法が制定された1922年時点で既に、成人受刑者にも
仮出獄は認められていました。この「仮出獄」という用語は、
1995年に刑法が現代用語化された時に「仮釈放」に改められましたが、
要件は変わっていません。その要件とは、受刑者に改悛の状があり、
有期刑については刑期の3分の1、無期刑については10年を経過している
ことです(刑法第28条)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=140AC0000000045
 ですから、旧少年法においては、特に無期刑に処された者に対する
仮出獄の要件を、成人と比べて大幅に緩和していました。

Ⅵ 現行少年法にも、仮釈放に関する特別な規定はあります。
それは以下のようなものです。
「(仮釈放)
第五十八条 少年のとき懲役又は禁錮の言渡しを受けた者については、
次の期間を経過した後、仮釈放をすることができる。
一 無期刑については七年
二 第五十一条第二項の規定により言い渡した有期の刑については、
その刑期の三分の一
三 第五十二条第一項又は同条第一項及び第二項の規定により言い渡した刑に
ついては、その刑の短期の三分の一
2 第五十一条第一項の規定により無期刑の言渡しを受けた者については、
前項第一号の規定は適用しない。」
1.無期刑については7年経過すれば仮釈放が可能になる点は、旧法と同じです。
2.現行法第58条第1項第2号、つまり「二」の部分の「第五十一条第二項の
規定により言い渡した有期の刑」とは、無期刑で処断すべき場合に
犯罪行為時18歳未満であったことを理由に言い渡される10年以上20年以下の
刑のことです。ですから、最長でも20年の1/3つまり6年8か月経過すれば
仮釈放が可能になります。
3. 「第五十二条第一項又は同条第一項及び第二項の規定により言い渡した刑」
とは相対的不定期刑のことです。現行少年法の下で最も重い相対的不定期刑は、
「10年以上15年以下の懲役」ですから、これに処された者は短期の10年の
1/3、つまり3年4か月経過すれば仮釈放が可能となります。
4.「第五十一条第一項の規定により無期刑の言渡しを受けた者」とは、
犯罪行為時18歳未満であったため、死刑をもって処断すべきなのに、
無期刑を言い渡された者という意味です。この場合には
少年法第58条第1項第1号の適用が排除され「刑法28年の原則通り10年が
仮釈放期間となる」のです。この点については次のような解説が
なされています。
 「この場合には51条1項により既に刑の緩和がなされており、仮釈放期間の
特則をも適用するといわば二重に刑の緩和を認めることとなるが、
死刑相当事案は極めて凶悪重大な犯罪であるから、このような緩和を
認めることは、被害感情、社会一般の正義感情等に照らして相当でない
ことから、平成12年改正により改められたものである。」(注)

Ⅶ 長くなりました。これで旧法第10条についてのご説明を終わらせて
いただきます。それと同時に、旧法の定める少年に対する刑事処分の
特則についてのご説明を終わらせていただきます。次は、旧少年法の
あらましについてのご説明の最終回として、第74条について
ご説明したいのですが、明日・明後日と忙しいので、15日に
ご説明させていただきます。

(注)甲斐行夫=入江猛=飯島泰=加藤俊治=岡健太郎=岡田伸太=本田能久=
 安永健次「少年法等の一部を改正する法律及び少年審判規則の一部を改正する
 規則の解説」『法曹会新法解説叢書17』(2002年)233頁。
昨日のブログでお約束した通り、
今日は旧法第9条についてご説明します。

Ⅰ 旧法第9条は以下のような規定でした。
「第九條 懲役又ハ禁錮ノ言渡シヲ受ケタル少年ニ對」(たい)「シテハ
   特ニ設ケタル監獄又ハ監獄内ノ特ニ分界」(ぶんかい)「ヲ設ケタル
   場所ニ於」(おい)「テ其ノ刑ヲ執行ス
  本人十八歳ニ達シタル後ト雖」(いえど)「満二十三歳ニ至ル迄ハ
   其ノ刑ヲ執行スルコトヲ得」

Ⅱ 旧法第9条に似た規定は、現行法第56条にも存在します。
これは以下のような規定です。
「(懲役又は禁錮の執行)
第五十六条 懲役又は禁錮の言渡しを受けた少年(第三項の規定により
少年院において刑の執行を受ける者を除く。)に対しては、特に設けた
刑事施設又は刑事施設若しくは留置施設内の特に分界を設けた場所において、
その刑を執行する。
2 本人が満二十歳に達した後でも、満二十六歳に達するまでは、
前項の規定による執行を継続することができる。
3 懲役又は禁錮の言渡しを受けた十六歳に満たない少年に対しては、
刑法第十二条第二項又は第十三条第二項の規定にかかわらず、
十六歳に達するまでの間、少年院において、その刑を執行することができる。
この場合において、その少年には、矯正教育を授ける。」

Ⅲ 旧法第9条第1項、つまり「懲役又ハ禁錮」から「執行ス」までの部分と、
現行法第56条第1項、つまり「懲役又は禁錮」から
「執行する」までの部分とでは、用語が現代化されている点と、
「監獄又ハ監獄内」が「刑事施設又は刑事施設若しくは留置施設内」
と改められている点を除いては、違いがありません。
 この「特ニ設ケタル監獄」または「特に設けた刑事施設」は
「少年刑務所」と呼ばれています(法務省設置法第8条)。ただ、
「少年刑務所には、少年受刑者のほか26歳未満の青年受刑者をも
収容しており、少年受刑者は少ないため、大多数は青年受刑者と
なっている」のです(注1)。
 なお、「分界」とは、「境目をつけて分けること。また、その境目。」
という意味です。
https://kotobank.jp/word/%E5%88%86%E7%95%8C-622972

Ⅳ 旧法第9条第2項、つまり「本人」から「執行スルコトヲ得」までの部分と、
現行法第56条第2項、つまり「本人」から「執行することができる」までの
部分とでも、現代用語化されている点と、「十八歳」が「満二十歳」と、
「二十三歳」が「二十六歳」とそれぞれ改められている点を除いては、
違いがありません。
 そして、少年刑務所で成人受刑者に対する刑の執行を認めている理由
としては、次のことが指摘されています。
 「少年刑務所は、20歳未満の少年を収容すべきことを原則としているが、
入所したときは少年でも収容中に20歳になる場合がある。この場合、少年が
20歳に達したからといって、直ちに普通の成人の刑務所に移すことは、
それまでなされた少年に対する特別の行刑の効果を損なう虞」(おそれ)
「があるので、本(現行法第56)条2項は、満26歳に達するまでは、本条
1項による執行を継続できるとしている。『26歳』は、」第三種少年院の
「収容の最高年齢が26歳とされている」(少年院法第4条第1項第3号)
「こととの対応を考えたものである」(注2)のです。

Ⅴ なお、現行法第56条第3項、つまり「3 懲役又は禁錮の言渡しを受けた
十六歳に満たない少年に対しては、
刑法第十二条第二項又は第十三条第二項の規定にかかわらず、
十六歳に達するまでの間、少年院において、その刑を執行することができる。
この場合において、その少年には、矯正教育を授ける。」という規定は、
旧法にはなかったもので、次のように解説されています。
 「本条3項は、平成12年改正により、16歳未満(14・15歳)の少年に
ついても、検送が可能になり、懲役刑・禁錮刑が科され得るようになったが、
その年齢や心身の発達の度合いを考慮し、刑の執行にあたって教育的側面を
重視すべき場合が多いと考えられ、特に、義務教育年齢の者については
教科教育を重視しなければならないことから、このような年少少年
(刑の執行開始時に16歳未満であることを要する)に対する刑の執行の特例
として少年院における矯正教育を受けさせることを認めたものである。」(注3)

Ⅵ 長くなりました。これで旧法第9条についてのご説明を終わらせて
いただきます。次は旧法第10条についてのご説明をしたいのですが、
明日は忙しいので、明後日つまり12日にさせていただきます。

(注1)田宮裕=廣瀬健二編『注釈少年法(第3版)』(2009年、有斐閣)479頁。
(注2)田宮=廣瀬編・前掲(注1)。
(注3)甲斐行夫=入江猛=飯島泰=加藤俊治=岡健太郎=岡田伸太=本田能久=
 安永健次「少年法等の一部を改正する法律及び少年審判規則の一部を改正する
 規則の解説」『法曹会新法解説叢書17』(2002年)233頁。
昨日のブログでお約束した通り、
今日は旧法第8条についてご説明します。

Ⅰ 第1に、旧法第8条は以下のような規定でした。
「第八條 少年ニ對」(たい)「シ長期三年以上ノ有期ノ懲役又ハ禁錮ヲ
   以」(もっ)「テ處斷」(しょだん)「スヘキトキハ其ノ刑ノ
   範圍」(はんい)「内ニ於」(おい)「テ短期ト長期トヲ定メテ
   之」(これ)「ヲ言渡スヘシ但シ短期五年ヲ超ユル刑ヲ以テ
   處斷スヘキトキハ短期ヲ五年ニ短縮ス
  前項ノ規定ニ依リ言渡スヘキ刑ノ短期ハ五年長期ハ十年ヲ
   超ユルコトヲ得ス
  刑ノ執行猶豫」(ゆうよ)「ノ言渡ヲ爲」(な)「スヘキトキハ
   前二項ノ規定ヲ適用セス」

Ⅱ 第2に、旧法第8条第1項本文、つまり「少年ニ」から
「言渡スヘシ」の部分についてご説明します。
 まず、「少年ニ對シ長期三年以上ノ有期ノ懲役又ハ禁錮ヲ以テ
處斷スヘキトキハ」とは、法定刑に対して再犯加重、法律上の減軽、
併合罪加重、酌量減軽をほどこした結果、一番重い刑が3年以上の
有期の懲役または禁錮になったという意味です。例えば、
傷害致死罪の法定刑は「3年以上の有期懲役」(刑法第205条)で、
累犯加重または併合罪加重のない場合には
最長で20年(刑法第12条第1項)ですから、傷害致死罪は
「少年ニ對シ長期三年以上ノ有期ノ懲役又ハ禁錮ヲ以テ
處斷スヘキトキ」に当たります。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=140AC0000000045
 次に、「其ノ刑ノ範圍内ニ於テ短期ト長期トヲ定メテ
之ヲ言渡スヘシ」とは、その罪に対して定められた刑の範囲内で
短期と長期を言い渡すべし、という意味で、
例えば「被告人をX年以上Y年以上の懲役に処す」という判決を
言い渡すべしということです。この制度は「相対的不定期刑」と呼ばれます。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%B8%E5%AF%BE%E7%9A%84%E4%B8%8D%E5%AE%9A%E6%9C%9F%E5%88%91

Ⅲ 第3に、旧法第8条第1項但し書き、つまり「但シ」から
「短縮ス」の部分は、法定刑に対して再犯加重、法律上の減軽、
併合罪加重、酌量減軽をほどこした結果、一番軽い刑が5年を超えた場合、
それを5年に短縮しなければならないという意味です。例えば、
強盗致傷罪の法定刑は「無期又は6年以上の懲役」(刑法第240条)ですから、
自首による減軽または酌量減軽がない場合、「短期五年ヲ超ユル刑ヲ以テ
處斷スヘキトキ」に当たります。ですから、例えばある少年が強盗致傷罪で
有罪を認定された場合、「被告人を5年以上10年以下の懲役に処する」
という判決を言い渡される可能性がありました。

Ⅳ 第4に、旧法第8条第2項、つまり「前項ノ規定」から
「得ス」の部分は、「少年に対して言い渡すことができる不定期刑で
最も重いのは、『被告人を5年以上10年以下の懲役に処す』という判決である」
という意味です。

Ⅴ 第5に、旧法第8条第三項、つまり「刑ノ執行猶豫」から
「適用セス」の部分は、「刑の執行猶予をすべきときは、
不定期刑の規定は適用してはならない」、つまり刑の執行猶予をすべきときは、
例えば「被告人を懲役3年に処す。なお、本判決確定の日から
5年間その刑の執行を猶予する」というように定期刑で言い渡さなければ
ならない、という意味です。

Ⅵ 第6に、現行法もその第52条に不定期刑の規定を置いています。
それは以下のように複雑なものです。
「(不定期刑)
第五十二条 少年に対して有期の懲役又は禁錮をもつて処断すべきときは、
処断すべき刑の範囲内において、長期を定めるとともに、長期の二分の一
(長期が十年を下回るときは、長期から五年を減じた期間。次項において
同じ。)を下回らない範囲内において短期を定めて、これを言い渡す。
この場合において、長期は十五年、短期は十年を超えることはできない。
2 前項の短期については、同項の規定にかかわらず、
少年の改善更生の可能性その他の事情を考慮し特に必要があるときは、
処断すべき刑の短期の二分の一を下回らず、かつ、長期の二分の一を
下回らない範囲内において、これを定めることができる。
この場合においては、刑法第十四条第二項の規定を準用する。
3 刑の執行猶予の言渡をする場合には、前二項の規定は、
これを適用しない。」
 このため、現行法において少年に対して言い渡すことのできる
最も重い不定期刑は「被告人を10年以上15年以下の懲役に処する」
というものです。
 また、現行法第52条第3項、つまり「3 刑の執行猶予」から
「適用しない。」までの部分をご覧になればお分かりの通り、
現行法の下でも執行猶予を言い渡す場合には不定期刑は適用できず、
定期刑で言い渡さなけばなりません。しかし、このような制度については、
以下のような意見もあります。
 「本条(第52条のことです)3項は、不定期刑は行刑上の効果に狙いがある
ところから、執行猶予の場合に不定期刑を言渡すことは意味がないと
考えたものと思われる、しかし、執行猶予が取消された場合には、
定期刑が執行されることになり、不定期刑の利点を受ける余地がない。
立法論としては、執行猶予が取消された場合には、この程度の
不定期刑を受けると警告を与える意味から、不定期刑を言い渡して
執行猶予に付するという方法もあり得るであろう。」(注)

Ⅶ 長くなりました。これで旧法第8条についてのご説明を終わらせて
いただきます。明日は、旧法第9条についてのご説明をします。

 (注)田宮裕=廣瀬健二編『注釈少年法(第3版)』(2009年、有斐閣)469頁。
昨日のブログでお約束した通り、
今日からは旧少年法の定める少年に対する刑事処分の特則のあらましについて
こ解説します。
今日は、旧法第7条についてご解説します。

Ⅰ 第1に、旧法第7条は以下のような規定でした。
「第七條 罪ヲ犯ス時十六歳ニ満タサル者ニハ死刑及無期刑ヲ科セス
  死刑又ハ無期刑ヲ以」(もっ)「テ處斷」(しょだん)「スヘキトキハ
   十年以上十五年以下ニ於」(おい)「テ懲役又ハ禁錮ヲ科ス
  刑法第七十三條、第七十五條又ハ第二百條ノ罪ヲ犯シタル者ニハ
   前項ノ規定ヲ適用セス」

Ⅱ 第2に、旧法第7条第1項、つまり「罪ヲ犯ス時」から「科セス」の部分は、
犯罪行為時16歳未満の者に対する死刑と無期刑を禁止したものです。
 これに対して現行法の第51条は、以下の通り第1項において
犯罪行為時18歳未満の者に対する死刑を禁止しているものの、
無期刑は認めていますし、無期刑で処断すべき者に対して
10年以上20年以下の有期の懲役または禁錮を科すことを認めていますが、
これは裏を返すと、無期刑を科すことも認めています。
「第五十一条 罪を犯すとき十八歳に満たない者に対しては、
死刑をもつて処断すべきときは、無期刑を科する。
2 罪を犯すとき十八歳に満たない者に対しては、
無期刑をもつて処断すべきときであつても、
有期の懲役又は禁錮を科することができる。この場合において、その刑は、
十年以上二十年以下において言い渡す。」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
(なお、「処断刑」とは、刑罰法規に定められている刑である法定刑
-例えば殺人罪なら死刑または無期もしくは5年以上の懲役-に対して
再犯加重、法律上の減軽、併合罪加重、酌量減軽をほどこした結果
得られたものです。)
https://info.yoneyamatalk.biz/%e5%88%91%e6%b3%95/%e6%b3%95%e5%ae%9a%e5%88%91%e3%83%bb%e5%87%a6%e6%96%ad%e5%88%91%e3%83%bb%e5%ae%a3%e5%91%8a%e5%88%91%e3%81%a8%e3%81%af%ef%bc%9f%e3%82%8f%e3%81%8b%e3%82%8a%e3%82%84%e3%81%99%e3%81%8f%e8%a7%a3%e8%aa%ac/
話がそれましたが、旧法では犯罪行為時16歳以上なら
死刑判決が言い渡せたのに対して、現行法では18歳以上でないと
死刑判決が言い渡せないのです。
 これだけを見ると、「旧法の方が正しい」と思われる方も
少なくないでしょう。
 しかし、日本国も批准つまり国内法化している
国連「児童の権利に関する条約」第37条では、
以下のように規定されています。
「第37条
 締約国は、次のことを確保する。
(a) いかなる児童も、拷問又は他の残虐な、非人道的な若しくは品位を
傷つける取扱い若しくは刑罰を受けないこと。死刑又は釈放の可能性がない
終身刑は、十八歳未満の者が行った犯罪について科さないこと。」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jido/zenbun.html
 ですから、日本が再び犯罪行為時18歳未満の者に対して死刑を科したい
のであれば、「児童の権利に関する条約」の批准を撤回しなければ
なりません。しかし、そんなことをすれば、特にEU加盟国から
強い非難を浴びて、ひょっとしたら日本製品を輸入してくれなくなるかも
しれません。それでいいのでしょうか。
 それに、16歳以上18歳未満の者による凶悪犯罪は、
現行少年法第51条にもかかわらず、本当にまれです。
ですから、死刑適用年齢を18歳未満に引き下げる必要もありません。

Ⅲ 第3に、話を旧法第7条第2項に戻しますと、これは以下のような規定です。
「死刑又ハ無期刑ヲ以」(もっ)「テ處斷」(しょだん)「スヘキトキハ
   十年以上十五年以下ニ於」(おい)「テ懲役又ハ禁錮ヲ科ス」
 ここでの「處斷」とは「処断」のことです。ですから、
旧法第7条第2項は、[法定刑に再犯加重、法律上の減軽、併合罪加重、
酌量減軽をほどこしても死刑または無期刑になる場合には、
10年以上15年以下において懲役または禁錮を必ず科さなければならない」
という意味の規定です。
 ですから、Ⅰで述べたように、現行法では犯罪行為時18歳未満の
者に対する無期刑を認めているのですから、この点において
現行法の方が旧法よりも厳しいのです。

Ⅳ 第4に、話題を旧法第7条第3項に移しますと、
これは以下のような規定でした。
「刑法第七十三條、第七十五條又ハ第二百條ノ罪ヲ犯シタル者ニハ
前項ノ規定ヲ適用セス」
 「第七十三條、第七十五條又ハ第二百條」という刑法の規定が
出てきましたので、それぞれご解説します。
 1.刑法第73条は「天皇、太皇太后、皇太后、皇后、皇太子又ハ皇太孫ニ対シ
危害ヲ加ヘ又ハ加ヘントシタル者ハ死刑ニ処ス」という規定でした。この
規定は「大逆罪」(たいぎゃくざい)と呼ばれています。
https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%88%91%E6%B3%95%E7%AC%AC73%E6%9D%A1
 ただ、「大逆罪」が適用されたのはわずか4件でしてその中に
少年事件は含まれていません。
 そして、「大逆罪」は国民主権の理念に反するとして、
1947年に削除されています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E9%80%86%E7%BD%AA

 2. 刑法第75条は「皇族ニ對シ危害ヲ加ヘタル者ハ死刑ニ處シ
危害ヲ加ヘントシタル者ハ無期懲役ニ處ス」という規定でした。
この規定は「皇族危害罪」と呼ばれていますが、「大逆罪」と同様、
1947年に削除されています。
https://ja.wikibooks.org/wiki/%E5%88%91%E6%B3%95%E7%AC%AC75%E6%9D%A1

 3.刑法第200条は「自己又ハ配偶者ノ直系尊属ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ
無期懲役ニニ處ス」という規定でした。この規定は「尊属殺」と
呼ばれていますが、1973年4月4日に最高裁大法廷は、
憲法14条(法の下の平等)に反し無効としました。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8A%E5%B1%9E%E6%AE%BA%E9%87%8D%E7%BD%B0%E8%A6%8F%E5%AE%9A%E9%81%95%E6%86%B2%E5%88%A4%E6%B1%BA
その後刑法第200条は事実上死文化していたのですが、1995年に
刑法が口語化・現代用語化された際に削除されました。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8A%E5%B1%9E%E6%AE%BA

 4.このように1~3を見ると、旧少年法第7条は、「大逆罪」、
「皇族危害罪」、及び「尊属殺」を犯した者には死刑又は無期懲役の判決が
下される道を開いていました。これは、戦前の日本においては、
天皇が神聖不可侵の存在とされていたことと、親孝行が重要な道徳と
されていことのためでしょう。
 しかし、現在の日本は国民主権を建前としていますから、
天皇または皇族に危害を加えたり加えようとする行為を特別扱いすることは
許されないでしょう。また、法の下の平等の理念に照らして、
尊属殺を重く処罰することも許されません。ですから、
旧少年法第7条のような規定を現行法に設けることも、
許されないと考えます。

Ⅴ 長くなりました。以上で旧法第7条についてのご解説を終わらせて
いただきます。明日は旧法第8条についてご解説します。



昨日のブログでお約束した通り、
今日は旧法の第68条と第69条についてご解説します。
そして、第70条についてもご解説します。

Ⅰ 第1に、旧法の第68条は以下のような規定でした。
「第六十八條 少年ノ被告人ハ他ノ被告人ト分離シ其」(そ)「ノ
    接觸」(せっしょく)「ヲ避ケシムルヘシ」
 これと似た規定は、現行法第49条第1項にあります。それによりますと、
「少年の被疑者又は被告人は、他の被疑者又は被告人と分離して、なるべく、
その接触を避けなければならない。」と規定されています。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
 旧法と違い、現行法は被疑者も含んでいますが、
「なるべく」という文言もあります。

Ⅱ 第2に、旧法の第69条は以下のような規定でした。
「第六十九條 少年ニ對」(たい)「スル被告事件ハ他ノ被告事件ト
牽連」(けんれん)「スル場合ト雖」(いえども)「審理ニ妨」(さまたげ)「ナキ
限リ其ノ手續」(てつづき)「ヲ分離スヘシ」
 ここでの「牽連」とは「つながりつづくこと。また、ある関係によって
つながること。」という意味です。
https://kotobank.jp/word/%E7%89%BD%E9%80%A3-493322
 そして、旧法第69条と似た規定として、現行法第49条第2項があります。
それによりますと、「少年に対する被告事件は、
他の被告事件と関連する場合にも、審理に妨げない限り、
その手続を分離しなければならない。」と規定されています。

Ⅲ 第3に、旧法第70条は以下のような規定です。
「第七十條 裁判所ハ事情ニ依リ公判中一時少年ノ被告人ヲ退廷セシムル
   コトヲ得」
 しかし、旧法第70条に対応する規定は現行法には存在しません。

Ⅳ 以上で、旧法の定める少年に対する刑事手続の特則のあらましに
ついてのご説明を終わらせていただきます。そして、旧法には、
少年に対する刑事処分の特則もいくつかあるのですが、
これらについてのご解説は、明日から始めさせていただきます。


昨日のブログでお約束した通り、
今日は旧法第67条についてご説明します。
(なお、昨日は「そしてできれば、
第68条や第69条についてもご説明したいです。」とも書きましたが、
説明をできるだけ分かりやすくするために、
これらの条文についてのご説明は明日にさせていただきます。)

Ⅰ 旧法第67条は以下のような規定でした。
「第六十七条 勾留状ハ已」(や)「ムコトヲ得サル場合ニ
   非」(あら)「サレバ少年ニ對」(たい)シテ之ヲ發」(はっ)「スル
   コトヲ得ス
  拘置監ニ於」(おい)「テハ特別ノ事由アル場合ヲ除クノ外少年ヲ
   獨居」(どっきょ)「セシムヘシ」

Ⅱ 旧法第67条第1項、つまり「勾留状」から「得ス」までの部分の
「勾留状」とは、逮捕されて刑事裁判所に起訴されるまでの被疑者と
起訴された後の被告人の身柄を拘束する「勾留」という手続を取ることを
許可する裁判所の令状のことです。
https://keiji.vbest.jp/columns/g_other/5796/
 そして、旧法第67条第1項とそっくりな規定は、現行法第48条第1項にも
存在します。それによりますと、「第四十八条 勾留状は、
やむを得ない場合でなければ、少年に対して、
これを発することはできない。」と規定されています。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000050

Ⅱ 旧法第67条第2項、つまり「拘置監」から「セシムヘシ」までの部分の
「拘置監」とは、「旧監獄法で規定されていた監獄の種類の一つで、
刑事被告人や死刑の言い渡しを受けた者を拘禁する場所」です。
現在では「拘置所」と呼ばれています。
https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E6%8B%98%E7%BD%AE%E7%9B%A3/
 また「獨居」とは、囚人を一人だけ入れておく部屋に入れることです。
https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E7%8B%AC%E5%B1%85%E6%88%BF/#jn-159291
 つまり、旧法第67条第2項は、「拘置監においては特別の事由ある
場合を除いては少年を独居させなければならない」という意味です。
 現行法には、旧法第67条第2項にぴったり対応する規定はありません。
ただ、第49条第3項に「刑事施設、留置施設及び
海上保安留置施設においては、少年(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に
関する法律(平成十七年法律第五十号)第二条第四号の受刑者(同条第八号の
未決拘禁者としての地位を有するものを除く。)を除く。)を成人と分離して
収容しなければならない。」と規定されていますので、
拘置所に収容されている少年も成人と分離して収容しなければなりません。

Ⅲ なお、現行法第48条の第2項と第3項には以下のような規定があります。
「2 少年を勾留する場合には、少年鑑別所にこれを拘禁することができる。
3 本人が満二十歳に達した後でも、引き続き前項の規定によることが
できる。」
 つまり、現行法によると、少年を勾留する場合でも、少年鑑別所にこれを
拘禁することができますし、本人が満20歳に達した後でも、
引き続き少年鑑別所に拘禁することができます。これは良い規定だと
思います。なぜなら、少年鑑別所の方が、拘置所よりも、
少年の扱いに慣れているからです。
 そして、現行法第48条の第2項と第3項に対応する規定は、旧法には
存在しませんでした。というのは、旧法には少年鑑別所に対応する施設が
なかったからです。

Ⅳ 以上で、旧法第67条についてのご説明を終わらせていただきます。
明日は、今日のブログの冒頭でお約束した通り、
旧法の第68条や第69条についてご説明します。


昨日書いたブログでお約束した通り、
今日からは旧法が定める少年に対する刑事手続の特則、
つまり特別な定めについてご説明します。
 今日は旧法第64条についてご説明します。

Ⅰ 旧法第64条は以下のような規定でした。
「第六十四條 少年ニ對」(たい)「スル刑事事件ニ付」(つい)「テハ
 第三十一條ノ調査ヲ爲スヘシ
  少年ノ身上ニ關」(かん)「スル事項ノ調査ハ少年保護司ニ嘱託シテ
   之ヲ爲サシムルコトヲ得」
1.第一に、第1項、つまり「少年ニ」から「爲ヘシ」の部分における
「第三十一條ノ調査」とは、12月23日に書いたブログでご説明したように、
「事件ノ關係」(かんけい)「及本人ノ性行、境遇、經歴、」(けいれき)
「心身ノ状況、教育ノ程度等」についての調査のことです。

2.第二に、第2項、つまり「少年ノ身上」から「コトヲ得」の部分は、
少年の「性行、境遇、經歴、心身ノ状況、教育ノ程度等」に関する事項の
調査は、少年保護司に嘱託してこれを行わせることができる、
という意味の規定です。

3. ですから、1.2.を総合すると、旧法では、刑事裁判所に起訴された
少年に対しても、事件の関係、及本人の性行、境遇、経歴、
心身の状況、教育の程度等についての調査を行わなければならず、
このうち少年の身上に関する事項の調査は、少年保護司に嘱託して
行わせることができたのです。

Ⅱ 現行少年法には、旧法第64条にぴったり対応する規定はありません。
わずかに第50条が、以下のように定めているだけです。
「(審理の方針)
第五十条 少年に対する刑事事件の審理は、第九条の趣旨に従つて、
これを行わなければならない。」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
 ここで、「第九条」とは次のような規定です。
「(調査の方針)
第九条 前条の調査は、なるべく、少年、保護者又は関係人の行状、経歴、
素質、環境等について、医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的智識
特に少年鑑別所の鑑別の結果を活用して、これを行うように努めなければ
ならない。」
 ですから、現行法第50条が意味するのは、
「少年に対する刑事事件の審理は、なるべく、
少年、保護者又は関係人の行状、経歴、素質、環境等について、医学、
心理学、教育学、社会学その他の専門的智識特に少年鑑別所の鑑別の結果を
活用して、行わなければならない」という意味です。
 そして、現行法第50条は、実務家つまり裁判官によって、
次のように解釈されています。
 「家庭裁判所でなされた科学調査の結果がまとめられた社会記録を
取寄せて判断資料とすることが最も有効である。(中略) 他方、
社会記録には少年や保護者の個人情報で公開に馴染まないものが多く
非公開・秘密保持の要請が強いのに、刑事裁判は公開の法廷で
行われる。そこで、この秘密保持の要請のため、取調の方式や
閲覧・謄写(刑訴40条)に配慮・工夫することが重要である(中略)。
証拠書類の取調方式は朗読であるが(刑訴305条)、
実務上ほとんどの場合、朗読に代えて要旨の告知(刑訴規203条の2)によって
行われているので、社会記録の取調の場合、少年や保護者の名誉や情操を
害さないように配慮して工夫することが可能であり、
実務上励行されている。」(注)

Ⅲ 長くなりました。以上で旧法第64条についてのご説明を終わりと
します。明日は、旧法第67条についてご説明します。そしてできれば、
第68条や第69条についてもご説明したいです。


 (注)田宮裕=廣瀬健二編『注釈少年法(第3版)』(2009年、有斐閣)462頁
12月27日に書いたブログでお約束した通り、
今日から旧少年法(以下、「旧法」と略します)のあらましについての
ご説明を再開します。
今日は旧法第47条についてご説明します。

Ⅰ 第1に、旧法第47条第1項は、現代風で表記すると、
「刑事訴追(そつい)の必要ありと認めたるときは事件を管轄裁判所の検事に
送致すべし」という規定でした。
 ここで「訴追」とは、「検察官が刑事事件について公訴を提起し、
追行すること」という意味でして、「起訴」と同じ意味です。
https://kotobank.jp/word/%E8%A8%B4%E8%BF%BD-554570
 また、「管轄裁判所の検事」というのは、戦前の日本では
検事局が裁判所に付置、つまり付属して置かれていたことから
このように呼ばれています。
https://www.kensatsu.go.jp/kensatsu_seido/wagakuni_enkaku.htm
 旧法第47条第1項に対応する現行少年法(以下「現行法」と略します)の
規定は、第20条です。現行法第20条は以下の通りです。
「(検察官への送致)
第二十条 家庭裁判所は、死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、
調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは、
決定をもつて、これを管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に
送致しなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、家庭裁判所は、故意の犯罪行為により
被害者を死亡させた罪の事件であつて、その罪を犯すとき十六歳以上の少年に
係るものについては、同項の決定をしなければならない。ただし、
調査の結果、犯行の動機及び態様、犯行後の情況、少年の性格、年齢、
行状及び環境その他の事情を考慮し、
刑事処分以外の措置を相当と認めるときは、この限りでない。」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000168
 ただし、現行法第20条をご覧になればお分かりの通り、
旧法には「刑事訴追の必要ありと認めたるとき」と規定しているだけで、
現行法のような「調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と
認めるとき」という要件はありませんでしたし、犯罪行為時16歳以上の
少年による故意の犯罪行為により被害者を志望させた罪の事件についての
特別扱いはありませんでした。

Ⅱ 第2に、旧法第47条は、「裁判所又は検事より送致を受けたる事件に
付」(つき)「新」(あらた)「なる事実の発見により刑事訴追の必要ありと
認めたるときは管轄裁判所の検事の意見を聴き前項の手続を為すべし」
という規定でした。
 この規定の前提として、旧法第62条と第71条第1項について
ご説明しなければなりません。

1.旧法第62条は「検事少年に対する刑事事件に付
第四条の処分を為すを相当と思料」(しりょう)「したるときは事件を
少年審判所に送致すべし」と定めていました。
 ここで、「第四条の処分」とは、旧法の定めていた保護処分、
つまり、「一 訓戒ヲ加フルコト、二 学校長ノ訓戒ニ委(まか)スルコト、
三 書面ヲ以(も)テ改心(かいしん)ノ誓約ヲ爲(ナ)サシムルコト、
四 條件(じょうけん)ヲ附(ふ)シテ保護者ニ引渡スコト、
五 寺院、教會、保護團體(ほごだんたい)又ハ適富(てきとう)ナル者ニ
委託スルコト、六 少年保護司ノ観察ニ付スルコト、七 感化院(かんかいん)
ニ送致スルコト、八 矯正院ニ送致スルコト、九 病院ニ送致又ハ
委託スルコト」です。
 ですから、旧法第62条によると、検事は少年に対する刑事事件に
ついて旧法第4条の保護処分を行うのを相当と思った場合には
事件を少年審判所に送致しなければならなかったのですが、
そうでない場合には送致する義務を負わず、不起訴したり、
直接刑事裁判所に起訴することもできたのです。

2.旧法第71条第1項は、「第一審裁判所又は控訴裁判所審理の
結果に因り被告人に対し第四条の処分を為すを相当と認めたるときは
少年裁判所に送致する旨(むね)の決定を為すべし」という規定でした。
ここでの「第四条の処分」は旧法の定めていた保護処分です。
ですから、旧法第71条第1項は、第一審または控訴裁判所に対し、
審理の結果被告人に対し保護処分を為すを相当と認めたときは、
少年審判所に送致するという内容の決定をしなければならないという
意味です。

3.話を旧法第47条第2項に戻しますと、この規定は、裁判所又は検事より
「保護処分を為すのが相当である」と送致された事件について、
「新たなる事実」を発見したため刑事訴追の必要があると認めた場合には、
管轄裁判所の検事の意見を聴いた上でその検事に送致しなければならない、
という意味の規定です。

Ⅲ 旧法第47条第3項は「前二項の規定による処分を為したるときは
其の旨を本人及び保護者に通知すべし」という規定です。
 つまりこの規定は、1)刑事訴追を必要と認めたため事件を
管轄裁判所の検事に送致する処分、または2)裁判所又は検事より
「保護処分を為すのが相当である」と送致された事件について、
「新たなる事実」を発見したため刑事訴追の必要があると認めたため、
管轄裁判所の検事の意見を聴いた上でその検事に送致する
処分をしたときは、その旨を本人と保護者に通知しなければならない、
という手見の規定です。

Ⅳ 旧法第47条第4項は、「検事は第一項又は第二項の規定により
送致を受けたる事件に付為したる処分を少年審判所に通知すべし」
という規定です。
つまりこの規定は、検事に対して、1)刑事訴追を必要と認めたため事件を
管轄裁判所の検事に送致された事件、または、2)裁判所又は検事より
「保護処分を為すのが相当である」と送致された事件について、
「新たなる事実」を発見したため刑事訴追の必要があると認めたため、
管轄裁判所の検事の意見を聴いた上でその検事に送致された事件について、
為した処分を少年審判所に通知することを義務づける規定です。

Ⅴ 長くなりました。旧法第47条についてのご説明はここまでとします。
明日からは、旧法が定める少年に対する刑事手続の特則、
つまり特別な定めについてご説明します。


コロナが一日も早く収束して、
今年が皆様にとって良き一年になることを、
心からお祈りします。
今年もなにとぞよろしくお願いします。

早いもので、

2021年12月31日 日常
これを書いている時点で、あと約6時間で、
今年も終わろうとしています。
今年もコロナに振り回された1年になってしまいました。
にもかかわらず、今年も多くの方にご覧いただき、
まことにありがとうございます。
来年こそ、オミクロン株の感染が拡大せず、
よい年となることを心から祈念します。

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